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闇から落ちしもの 1

ブラックイット3からの続きとなります。

よろしくお願いします。



 闇から落ちしもの 1



 フラフラと歩いて来た朱姫の姿をしたものは、青姫を見てニッコリと笑う。しかし、目は焦点が合わず開いた口からは(よだれ)が垂れていた。とても、(りん)とした空気を漂わせていた朱姫とは思えなかった。


「朱姫…… 」


 青姫は目の前の朱姫の姿をしたものに悲しげな目を向ける。こんな姿になった朱姫を見たくはなかった。

 クロも同じくかつて戦った好敵手の変わり果てた姿に目を向けたくないのか、それともタダユキを守る為なのか、倒れているタダユキの(かたわ)らから動こうとしなかった。


 * * *



「どうかな、卯月(うづき) 先代たちは着物で戦っていたけれど、私たちは今風に洋服にしてみない? 」


「確かにね 着物だと(みお)の得意な踵落(かかとお)としが出来ないものね 」


「動きを考えると、洋服の方が間違いなく戦いやすいでしょう? 」


「それで、(みお) どんな服にしたいの? 」


「それは…… もう決まっている、絶対にセーラー服よ 」


「ちょっと、(みお) 私たちの年、考えて言ってるの 」


「年は関係ないと思うよ、卯月(うづき) 戦うときはセーラー服 これが私にとっては定番のスタイルだからね 」


「まったく…… 私はいいとして、(しおり)柊佳(とうか)さんが賛成するか分からないよ 」


「大丈夫 私が説得する 」



 * * *



 青姫は、朱姫の姿をしたものを見据えながら冷静さを保とうと必死に努力していた。少しでも気を抜くと感情に流されてしまいそうになる。そうなってしまったら……。


・・・ごめんね、(みお) もう眠らせてあげる ・・・


 青姫は大きく息を吸うと、朱姫の姿をしたものに向かって飛び出した。そして、左足を軸に体を回転させると回し蹴りを叩き込む。強烈な一撃だったが、朱姫の姿をしたものは左腕一本で軽くブロックした。


・・・え……?? ・・・


 蹴りをブロックされた青姫は後ろに飛び退いて距離を取りながら違和感を感じる。


・・・おかしい さっきの魍魎(もうりょう)と違う ・・・


 つい先刻倒した魍魎(もうりょう)は膨らんだ紙袋を殴るような軽く中身がない感触だったが、今蹴りを入れた朱姫の姿をしたものの感触にはしっかりとした手応えがあった。


・・・本物の(みお)の肉体? ・・・


 青姫は迷った。殺されて肉体のみを操られているのか、それともまだ生きていて精神支配されているのか、後者なら助ける事が出来る。いずれにしろ本当の(みお)の肉体ならば、あまりダメージを与える訳にはいかない。


・・・どうする ・・・


 考えながら青姫が戦っていると、青姫の一瞬のスキをついて朱姫の姿をしたものが視界から消える。そして、気が付くと頭上から高速で朱姫の姿をしたものの右足の(かかと)が落ちてきた。


・・・踵落(かかとお)とし しまった ・・・


 朱姫と同じ技を使うとは思っていなかった青姫は、かろうじて技をかわす。しかし、朱姫の姿をしたものは、そのまま体を前方に回転させ今度は左足の(かかと)が落ちてくる。


・・・二連脚 ・・・


 いや、元の朱姫と同じ力があるならば三連脚がくる筈。青姫は二発目もかわしたが、この態勢では三発目をかわすのは不可能だった。そして、青姫の予想通り三発目の踵落(かかとお)としが青姫の頭上を襲う。


・・・受けきれるか ・・・


 イチかバチか、青姫は頭上で両腕を交差させて朱姫の姿をしたものの踵落(かかとお)としを受ける。


「ぐぅっ……!! 」


 なんとか受けきる事ができたが両腕は痺れ片膝を地面に着くほどの凄まじい衝撃だった。青姫は腕の痺れが消えるまで距離をとろうと横に転がり、朱姫の姿をしたものの攻撃から逃れた。両腕は痺れてしばらく使えそうもない。骨が折れなかったのが幸いだった。


・・・でも、このまま受けにまわっていたら不味い ・・・


 青姫は連続で朱姫の姿をしたものに蹴りを叩き込む。しかし、腕が使えずフェイントが入れられない為、(ことごと)くブロックされてしまった。そして、攻撃でダメージを受ける青姫に比べ、いくら攻撃を受けてもまるでダメージを感じていない朱姫の姿をしたものとでは、その動きに段々と差が出てくる。

 そして、青姫が段々と受けにまわる場面が多くなってきた。それでも、青姫は自分のダメージよりも(みお)の肉体の損傷を最小限に留めるよう注意しながら戦っていた。



 * * *



「どうです、皆さん? これなら動きやすいでしょう 」


「ところで、(みお) みんなお揃いじゃなくて、あなたが赤で私が黒なのはどうしてなの? 」


「それは、柊佳(とうか)さん 私は”朱姫”だから赤なんですよ 」


「ああ だから私は青なんだ 」


「ふんふん 私は無難な白で良かったです 」



 * * *



・・・(みお)、お願い もう倒れて ・・・


 青姫は自分がフラフラになりながらも戦い続ける。しかし、その体力にも限界がきていた。攻撃を受けよろめいたところを、さらに連続で蹴りが飛んでくる。そして、また踵落(かかとお)としが青姫を襲った。頭上に打ち込まれるのは避けた青姫だったが、完全には避けきれず右肩に受けてしまう。


「ぐぅっ…… 」


 青姫は呻き声を上げ(ひざまず)く。激痛で右腕は動かなくなっていた。折れたかもしれない……。そこへ、青姫の止めを刺そうと必殺の踵落(かかとお)としが今度こそ青姫の頭を狙う。


・・・だめっ 避けられないっ ・・・


 青姫は左腕を上げ片手だけで受けようとするが、それが朱姫の必殺の踵落(かかとお)としには意味のない事だと自分でも分かっていた。このまま頭蓋を粉砕され倒れる自分が容易に想像できた。


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