3ターン目
三ターン目
相変わらず魔王様の攻撃は痛くも痒くもない。
魔王の繰り出す魔法は派手な上に威力が高いものの、残念ながら私の身に付けている防具には通用しないのだ。それもそのはずで、そもそも魔王を倒すつもりでここに来たのだから、こちらはある程度の対策をしている。
「どうだ、んん? そろそろ、我に戦いを挑んだ事を後悔している頃であろう?」
自信たっぷりに胸を張った魔王は鼻先を高く上げ、八重歯を見せながら微笑む。
確かにその通りだ。こんなに魔王様が可愛いと知っていたら、私は戦わずに世界が滅ぼされた後にでもひっそりと現れて、世界中の魔物を全て退治してから、この魔王様と二人っきりの新世界を満喫していたものを。
そうだ。魔王様を私のものにできた時に備えて、魔法で色々と情報を集めておこう。
私は敵の情報を探る魔法を詠唱する。
「ほう、我に魔法で対抗しようというのか?」
どれどれ、魔王様の体力と魔力は共に限界値を突破していて、あらゆる特技や魔法を熟知している、と。そんな事はどうでも良い。もっと、有益な情報はないのかしら。
「どうした、何も起きておらぬぞ? もしや運任せの魔法を唱えているのではあるまいな?」
私は同じ魔法を続けて使用する。
ふむふむ、魔王様の好きな食べ物は果物系全般、趣味はお気に入りのぬいぐるみ――名前はベア――と遊ぶ事、って何それ、女の子っぽくってものすごく可愛い。なになに、好みの相手は自分よりも強い奴、最近人間の勇者の事が気になっている、ってこれ、もしかして私の事では? 案外脈ありだったりするのかしら。
魔王は苛立つように歯をぎりぎりと鳴らして、自分の胸の前で拳を握りしめた。
「ああ、もどかしいぞ、貴様! 我は貴様の魔法を受けて立つというに、そんな何も起こせぬ低級な詠唱をするとは、我を舐めておるのか? それにその目付き、気に食わぬ、まるで我を品定めしているようで非常に腹立たしいぞ!」
どうやら、私は魔王を怒らせてしまったようだ。
怒ったその顔には全ての魔物を統べる魔王に相応しい凄みがある。さすがの私でも正直ちょっと恐怖を感じたが、そんな魔王様も悪くないなとも思った。
「貴様がそのつもりならば、我はもう手加減せぬ!」
魔王が全身に力を込めてこちらに迫ってくる。
四ターン目へ続く