体育祭 と 告白
高校1年生の体育祭。
隼人は、ずっと好きだった葵へ告白をする。
「 告白と体育祭 」の、その後の物語。
季節外れの暑さが続く中、高校1年の体育祭が終わった。
俺は今から、好きな子に告白する。
櫻井 葵は、女子にしては背が高い方だし、凛としていて声だって明るくて大きいため、教室の中でよく目についた。
俺は勉強ばかりしていたし、友達と楽しそうに笑う彼女を見ているうちに、いつからか俺もつられて学校生活を楽しむ気になっていったんだ。
「 待たせてごめん。 帰ろっか……」
応援団の反省会が長引いて、思っていたより長く教室で彼女を待たせる事になった。
彼女は時間をつぶすため、机に向かって何か書いているようだった。
「 うん……、お疲れさま 」
彼女の少し日に焼けた顔が、恥ずかしそうにこちらを見た。
体育祭でもそうだった。
思いがけないところで、いつもは凛とした彼女の違った一面を目にて、俺は胸をギュッと掴まれるんだ。
「 ずっと、好きだな……って思ってた…… 」
我慢できずに、声がこぼれた。
彼女は、ペンをしまっている手を止めてこちらを見た。低い位置から俺を見上げるその顔は、俺の苦手なその顔だった。
胸がギュッとする感覚。
俺は苦手でたまらない。
冷静ではいられなくなる、大きな声で叫びだしてしまいそうになる、そんな感覚。
「 う、うん……私も……。体育祭終わったら、隼人にずっと言おうと思ってて……」
そう言うと彼女は、荷物を片付け俺の横に立った。手には薄いブルーの封筒が握られていた。
「 これ、渡そうと思ってて……。今待ってる間、変なとこ直したかったんだけど、もうよく分かんなくなっちゃった 」
「 もらっていい? 」
「 恥ずかしいから、帰って読んでね 」
恥ずかしがる彼女に、
「 どーしよっかなぁ〜 」
俺は、もらった手紙をめいいっぱい高い位置で揺らしてみせた。彼女は背伸びして、手紙に手を伸ばす。
俺と彼女は、たいして身長が変わらない。
手の長さだって、足の長さだって。
まして、顔の高さだって……。
向かい合った俺らの距離は、いつでもゼロにできる距離で、やっぱり苦手な顔がそこにあった。
「 あ…危ない! 我慢できなくなるから……」
そう言って俺は、慌てて彼女の両肩に手を触れると、そっと距離をとった。
恥ずかしさで、まともに彼女の顔を見る事ができない俺は、すぐに右手で自分の顔を隠した。
「 その顔、その顔 苦手だから隠して! 」
「 ……? 」
「 じゃ、なくて……。だから……可愛すぎるから! ちゃんと隠して! 」
高校1年の体育祭。
俺にとってこの日は、胸をギュッと掴まれる特別な日になった。
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