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ヤンデレ魔法少女を回避せよ!  作者: 広瀬小鉄
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第四十三話 灼熱


「あとは俺に任せろ」


 魔法少女たちは原作よりも強くなっている。特にメリーガーネットに至っては正面から大天使の攻撃に競り勝つほどだ。


 他の二人も原作では見たことのないようや技を使い戦いに貢献していた。それは弥勒の思い通りに限界を超えたという事だろう。


 ならば次は弥勒が示す番だ。『やみやみマジカル★ガールズ』の主人公として彼女たちを助けるのは弥勒の役目なのだから。


「カラーシフト」


 左眼に埋められた宝玉が輝きを放つ。


「Kuuuu‼︎」


 メリーガーネットの魔力砲により傷つけられた大天使は怒りの声を上げている。そして今までの規模を超える植物たちが一斉に弥勒たちへと襲い掛かってくる。


「はぁ……はぁ、間に合わない……!」


 それを見てメリーガーネットが慌ててガーネットペタルを展開しようとするもののガス欠により技を上手く出す事が出来ない。


 そして植物が彼女たちに届こうとした瞬間、灼熱が広がった。


「……え?」


 メリースプルースが呆けた様な声を出す。あれほど大量にあった植物たちが全て燃やし尽くされている。


真紅の破壊者(クリムゾンバスター)


 そこにいたのは緋色の鎧に身を包んだ弥勒だった。同じ様に緋色の外套を身に纏い、左手には身の丈ほどもある大剣を手にしている。


 まるで龍を思わせるデザインの大剣は炎に包まれており、剣を持つ左手のガントレットには宝玉が埋め込まれている。


「燃え散れ」


 弥勒は炎を纏った大剣を地面に突き刺す。すると周りの地面から勢いよく炎が吹き出し、遠くに残っている植物たちも焼き尽くしていく。


 地面の大剣を抜き、前へと走り出す。巨大な大剣を持っているというのにその速度は灰色の騎士の時と比べても劣ってはいない。


「Kuuu‼︎」


 大天使は翼を大きく振るって大きな竜巻を生み出す。それが弥勒に向かって直進してくる。更に口からブレスを吐き出し竜巻と融合させる。


「邪魔」


 弥勒は大剣を持ったまま、ぐるりと一回転し遠心力を加算して竜巻へと叩き付ける。光と炎がぶつかり合う。


 バシュゥゥ!


 という音がして光の竜巻が大剣により掻き消される。弥勒は勢いそのままに大天使の元まで一気に近づく。


「ふっ!」


 そして目の前の存在に大剣を振り下ろす。大天使はとっさに光の結界を張ったようだが、それは呆気なく砕け散る。


 縦一線に攻撃が入る。


「Kuuuuu⁉︎」


 鳥型の大天使は苦痛に叫ぶ。辛うじて身を逸らしたため両断される事は無かったが、翼の片側には大きな傷が出来ている。


 それは大天使にとって予想外の事だった。神に遣わされた存在として敵の攻撃に危機感を覚える事などあってはならないのだ。


 大天使は植物を発生させて自らの身体に巻き付ける。応急処置としては雑なものだが、自身を回復させるような力を持っていないためこれが最善手と言える。


 弥勒は振り抜いた大剣を戻そうとするが、大天使が発生させた植物に巻き付かれる。炎を纏っているのにも関わらず植物は燃えない。


 恐らく植物の種類が今まで出していたものとは違うのだろう。植物の中にはある程度の耐火性を持ってるものなども存在する。常緑広葉樹と呼ばれるような常に葉を付けていて中に水分を多量に含んでいる樹木などがそうだ。


 しかしそれも燃えないという訳ではない。弥勒が宝玉に込める魔力を強めると炎が増していく。


「Kuu!」


 弥勒が植物を焼いている隙を狙って大天使が攻撃を仕掛けてくる。羽ばたきと同時に光で出来た大量の羽が飛んでくる。


 大天使は上空へと逃げる。弥勒は至近距離から放たれた光の羽を大剣を盾のようにして防ぐ。同時に魔力を強く込めることで瞬間的に炎を増幅させ光の羽を焼いていく。


 大天使にとって上空に逃げるという行為は自らのプライドを傷付けるものであった。しかしそのプライドよりも主を嘆かせる人間という存在を滅ぼす事を優先したのだ。


「(やっぱ上に逃げたか……)」


 真紅の破壊者(クリムゾンバスター)の強みはその名の通り破壊力である。大天使と一対一の直接対決なら負けない自信はある。しかし上空にいるというのが厄介だった。


「(もう一つのフォームになるか……?)」


 弥勒は空中戦に対応出来そうなフォームを思い浮かべるが、この先の戦いの事を考えるとあまり手の内を晒すのは上策ではないと考え、思い止まる。


 敵の戦力が原作より上がっている以上、不用意に新しい力を見せれば対策される可能性がある。今この瞬間にも他の天使がこちら側の戦力を分析していてもおかしくは無いと弥勒は考えている。


 結局、新緑の狙撃手へと姿を変えて魔力弾を放つ。数発撃ち出された弾丸は大天使に避けられる。しかしその隙に飛び上がった弥勒は再び真紅の破壊者となって大剣を大天使に向かって振るう。


 空中戦はやはり大天使側に分があるため再び避けられるものの敵の体勢がふらつく。先ほどの大剣による一撃で翼が大きく傷つけられているため本来の機動力が出せないのだ。


 弥勒も大剣が避けられるのは分かっていた。それでも敢えて大剣で攻撃したのは、それをすれば敵が大きく避けざるを得ないからだ。


 大剣による一撃は大天使を打ち倒せる可能性が高い。そのため大天使としては絶対に喰らう訳にはいかないのだ。だから大きく回避するしかない。


 回避のせいで体勢を崩した大天使の翼に弥勒が新緑の狙撃手となって大きな弾丸を撃ち込む。大剣で傷を与えたのとは逆側だ。


「Kuuu⁉︎」


 今度こそ避けきれずに攻撃を喰らってしまう大天使。悲鳴を上げながら落下していく。両方の翼を大きく傷つけられれば飛び続ける事は不可能だ。


 弥勒も着地をして再び真紅の破壊者へと姿を変える。墜落した大天使へと近付いていく。最後の抵抗なのか植物たちが襲いかかってくるが、今さらそんなものでは止められない。


  植物たちを斬り燃やしながら、大天使の元まで辿り着く。弥勒は大剣を振りかぶる。


「俺の勝ちだ」


 そして魔力を込めて炎を撒き散らす大剣を振り下ろす。斬られた大天使は粒子となって消えていく。そして周りに僅かに残っていた植物たちも消えいく。


「お、終わった……?」


 メリーインディゴが恐る恐る確認してくる。弥勒は振り返り彼女たちに向かって頷く。


「やったー! てかセイバー強すぎ! あんなん出来るなら最初からやれし!」


 メリースプルースが両手を上げて喜ぶ。


「使うタイミングが重要なんだよ」


 大天使は魔法少女たちの攻撃により怒っていた。それにより冷静さを失っていたのだ。だからこそ最初の大剣による一撃が避けられる事が無かったと言える。


 もし大天使が冷静であったならば上空に逃げるなどの選択肢もあった。それを事前に防げたのはやはり彼女たちの奮闘があったからだろう。


「でもさすがに疲れたよな」


「もうヘトヘトだよ〜」


「やば、もうめっちゃ眠い!」


 メリーガーネットが会話に参加していない事に気付いた弥勒は彼女の方に視線を向ける。すると何故かわなわなと震えている。


「おい大丈夫か?」


「ふ………」


「ん?」


「フォオオオオー! 赤色きたー!」


 突如として叫び出すメリーガーネット。それに思わず三人は驚いてしまう。しかし彼女はそれを気にする事はなく弥勒へと歩み寄る。


「やっぱり赤色にも変身できるのね! しかも凄いパワーじゃない。一番強いフォームに間違いないわ! 一番強いって事は一番好きって事よね! す、好きって急に恥ずかしいじゃない……もう!」


 急に壊れたラジオのように喋り続けるメリーガーネット。その姿に弥勒の表情は引き攣る。仮面をしている為、表には出ていないが。


「またヲタモードになっちゃった……」


「セイバーも大変だねぇ」


 メリーインディゴが疲れた様に呟く。さすがのメリースプルースも大天使との戦闘で疲労しているため参加はしてこない。


「お、落ち着けって……」


「落ち着いてるわよ! とにかく今日はペアルック記念日なんだからお祝いしないと!」


 勝手に記念日を作っているメリーガーネット。


「しないわ! とにかく今日はもう解散だ!」


 このままでは永遠に話が終わらないと踏んだ弥勒は解散宣言をする。なんだか最近、解散宣言ばかりしている様な気がする弥勒。


 こうして初めの大天使との一戦は無事に弥勒たちの勝利に終わったのであった。

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