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ヤンデレ魔法少女を回避せよ!  作者: 広瀬小鉄
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第四十二話 連携


 弥勒は冷静に観察していた。それは敵である鳥型の大天使ではなく、味方の魔法少女たちの事をだ。


「(ここが今の魔法少女たちの限界か……?)」


 先ほどまでの戦いぶりからすると、かなり善戦していると言えるだろう。みーこに至っては魔法少女になってからまだほとんど戦闘をこなしていない。


「(だからこそここを超えていって欲しい……)」


 弥勒から見たら彼女たちの限界は今この時点だ。でも、だからこそ、この限界を超えていって欲しいとも思う。


 敵の強さは原作より上がっており、このまま弥勒におんぶに抱っこの状態が続けばいずれは足手纏いになっていってしまう可能性もある。


 魔法少女としてこれからも戦っていくなら彼女たちも原作より強くなっていく必要があるのだ。


 弥勒自身、その願いは彼女たちにとって酷なものだと分かっているが、やりきってもらうしかないのだ。


「こうなったら植物には植物よ! ガーネットドレイン!」


 弥勒が思案しているとメリーガーネットが攻勢に出る。ガーネットペタルはメリーガーネットの魔力で覆われているため彼女だけは花弁の内側から外に向けて攻撃が出せるのだ。


 他の二人は花弁内ではメリーガーネットの魔力に包まれているためその外に技を展開することが出来ないのだ。ある意味これもガーネットペタルのデメリットと言える。


 メリーガーネットが作り出した魔力の蔓が、植物たちに巻き付く。今までは仲間の魔力を吸収する事にのみ使っていたため、敵には初めて使用する。


 絡み付いた蔓が敵からエネルギーを吸い取りメリーガーネットへと送ってくる。


「うーん、何だか思ったより効率が悪いわね」


 送られてきたエネルギーが想定よりも少ないためメリーガーネットは不満顔だ。


「あの植物が魔力で作られた訳じゃないから、エネルギーの吸収効率が良くないんじゃないか?」


「どゆこと?」


 何故かメリースプルースが弥勒の言葉に反応するが、構わずに弥勒は話を続ける。


「見た所、あの植物を発生させる時に魔力を使ってる様子はない。つまり魔力以外の力で植物を操っているから吸収したエネルギーを魔力に変換する分、効率が悪くなってるんだろ」


「魔力以外のエネルギーって何よ?」


「それは知らん」


「なによそれ!」


 弥勒の指摘は半分当たっていて半分外れている。大天使は植物を発生させるのに魔力を使っていないと言う指摘は正しい。しかし他のエネルギーというのは存在していない。


 大天使の使っている力は権能であり、そこにいるだけで自然に発生するものだ。それに少し方向性を与えているに過ぎない。


 それは植えた朝顔が伸びるのに支柱を添えてあげるのと同じだ。朝顔が成長するのに魔力は必要ない。支柱を添えるのにも魔力は必要ない。


 鳥型の大天使の『樹海創世』はその存在により自然が活性化するというだけで、そこに魔力は介入していないのだ。強いて言うならば地球そのものの力を使って成長しているとも言える。


 つまり大天使の生み出した植物に特別な魔力は存在していない。そのためメリーガーネットの蔓が吸収しているのは植物が元から持つ魔力だけのため吸い取れる量が少ないのだ。


 この辺りは原作を知っているだけでは辿り着けない細かい設定のため弥勒が分かっていないのも無理はないだろう。


「とりあえず一休みは出来たからアタシたちも戦うし」


「うん! メリーガーネットありがとう!」


 メリースプルースとメリーインディゴも一息つけたため多少戦意は回復した様だ。


「わかったわ……」


 メリーガーネットは花弁を解除する。すると周りに生い茂っている植物が一斉に弥勒たち目掛けて襲いかかってくる。


「インディゴトルネード!」


「スプルースミニミニスター!」


 メリーインディゴが再び手に持っていた羽団扇を構えながらその場で回転する。その場に大量の風が生まれる。そこにメリースプルースが通常よりも更に小さくした星型の刃を流していく。


「うおっ⁉︎」


 風に紛れて飛んでくる大量の刃に弥勒は慌ててシールドを展開して防御する。そばいたメリーガーネットもきちんと守る。


 小型の刃たちにより襲いかかってきた植物が切り裂かれていく。


「急に危ないわ!」


「てへ、セイバーなら言わなくても余裕で防げると思って」


 弥勒の抗議をメリースプルースは軽く受け流す。てへぺろをしている様だが仮面のせいで弥勒たちには見えていない。


 すると今まで黙っていたメリーガーネットが一歩前に出る。手を前に出し、まるでメリースプルースの音符を操るポーズのようになる。


「ガーネットフラッタリング!」


 彼女の前に小さな赤い花びらが生まれる。それがどんどんと増えていく。


「いきなさい!」


 メリーガーネットの指示に合わせて花びらの集合体が植物たちを切り刻んでいく。この技は先ほどメリースプルースが自分の技を小さく展開したのを見て思いついたのだろう。


 メリースプルースほどの細かな動きは出来ていないが、攻撃にも防御にも使えるため便利な技を手に入れたと言える。


「あたしだって負けてられない! インディゴブースト!」


 奮闘するメリーガーネットに触発されたメリーインディゴも力を全開にする。魔力を足元に集中させ爆発的な加速を生み出す。


 メリーインディゴは一気に木々に接近して勢いをそのままに蹴りを繰り出す。


「インディゴキーック!」


 加速した力と魔力を纏った足の力で爆発したとも思えるような威力の蹴りを放つ。それは複数の木を一気に蹴散らす強力な一撃だった。


 蹴りにより周りに散った植物の破片をメリーガーネットの花びらたちが処理していく。さすがのコンビネーションだ。


「まだまだ〜!」


 次にメリースプルースがロケット弾を飛ばして前方へと道を作る。すると今まで成長した植物たちによって隠されていた大天使の姿が現れる。


「チャンスよ!」


 三人は魔力を極限まで高める。ここで一撃を決めなければまた植物の攻略からやり直しとなってしまうため出し惜しみはしない。


「スプルース大ノート!」


 メリースプルースが巨大な音符マークを二つ出現させて大天使の周りに配置する。これは敵に上空などに逃げられない様にするためだ。


「メランコリータイガー!」


 大天使の懐に飛び込んだメリーインディゴが拳に宿した藍色の虎により襲撃を掛ける。極限まで圧縮された魔力が解放され暴れ回る。


「kuu……」


 しかし大天使は落ち着いた様子で口を開く。するとそこから光の衝撃波が生まれる。


「くぅっ……!」


 メリーインディゴと鳥型の大天使の技がぶつかり合う。凄まじい衝撃が発生するがメリーインディゴは歯を食い縛り何とか耐える。


 そしてお互いの技が相殺されるという形で終わりを迎える。メリーインディゴは吹き飛ばされるように後ろへと下がる。


「メランコリーロザリオ!」


 大天使は攻撃を相殺されて動けない。その隙を狙ってメリーガーネットが必殺技を繰り出す。上空に生み出された魔力のロザリオから魔力砲が発射される。


 鳥型の大天使は強力な魔力砲に飲み込まれる。メリーガーネットはそれに油断せず魔力を放出し続ける。


「Kuuuuu!!」


 しかし魔力砲に飲み込まれた大天使は光で出来た結界で身を守っていた。そして翼を大きく広げてロザリオに対抗する様に光の魔力砲を放ってくる。


「……っ! まだよ!」


 メリーガーネットの表情が苦痛に歪む。しかしその瞳はまだ負けてはいなかった。限界まで使っていた魔力を更に振り絞る。


「ノート!」


「キック!」


 メリースプルースは結界を壊そうと待機させていた音符マークをぶつける。メリーインディゴもそれに続き結界に蹴りを入れる。


 二人の奮闘に背中を押されたメリーガーネットが気合いを絞り出す。


「はぁぁぁっ!」


 そしてぶつかり合う二つの魔力砲はメリーガーネットに軍配が上がる。大天使の出した魔力砲を飲み込み進んでいく。


 大天使は再びメリーガーネットの魔力砲が直撃する。結界が割れる音がする。


「か、勝った……?」


「やった……!」


「疲れたぁ……」


 三人がそれを見て喜びの声を上げる。そして息を吐こうとしまその時だった。


「Kuuu‼︎」


 煙の中から傷ついた大天使が現れる。メリーガーネットの魔力砲は直撃したものの大天使の魔力砲や結界により威力が大分減退していたため致命傷とはならなかったのだろう。


「そんな……」


 流石の彼女たちもショックを隠せないようだ。それを見て弥勒は彼女たちの前に歩み出る。


「あとは俺に任せろ」


 魔法少女たちは弥勒の期待に応えて限界を超えてくれた。これから世界を救うであろう力の可能性を見せてくれた。


 ならばここからの後処理は弥勒がするべきだろう。彼は魔法少女たちを助ける主人公なのだから。


「カラーシフト」


 そして彼は新しいフォームへと姿を変えた。

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