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ヤンデレ魔法少女を回避せよ!  作者: 広瀬小鉄
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第三十九話 ニュース

 弥勒は魔法少女たちに置いていかれ寂しくその場に突っ立っていた。開いたスマホにはアオイからの複数のメッセージ。


「もしかしてみーこの存在が副作用を加速させてるのか……?」


 アオイとのチャットアプリを開いたまま副作用について改めて考える弥勒。


 アオイは先ほどのムクドリの天使との戦いでは魔力を吸われたのと、回転して風を起こしたくらいで他の二人よりは負担が少なかった。


 それなのに副作用は他の二人に負けず劣らずしっかりと出ている。個人差があるといっても今まで反応が少なかったアオイの副作用が急に増えるのはおかしい。


 そこで考えられるのはみーこの存在だ。今まで弥勒と仲良くしていた異性はアオイだけだったが、そこにみーこというライバルが急に現れた。


 そのせいで精神が今までより不安定な状態になってしまった。だから副作用が大きくなっている。そう考えるのが妥当だろう。


「そう考えると麗奈とみーこも……」


 先ほど二人も張り合う様に言い合っていた。これはお互いの存在が精神に不安な要素をもたらしているからだろう。


「ってことは魔法少女が増えるほど、病みが加速していく……?」


 原作をただプレイしているだけでは辿りつかなかった答えに気付いてしまった弥勒。天使を倒すには魔法少女たちの力が必要不可欠だ。それと同時に彼女たちのケアも必要になってくる。しかし一人をケアすれば他のメンバーの病みが加速する。負の無限ループである。


「やっぱりもう俺一人で天使倒した方が……」


 弥勒は真剣に一人で天使を倒すと言う作戦を検討する。少なくともこれから出てくるであろう鳥型の大天使は弥勒一人でも倒せるだろう。


 原作の知識から考えると比較的弥勒と相性が良いと言える敵だ。ただし鳥型の天使は他の天使に比べて空中での動きが素早いため攻撃をうまく当てられるかが肝になってくる。


「とりあえずアオイに返事するか」


 あまり気が乗らない弥勒だが既読スルーをした場合の方が後が怖くなるので仕方なく返信をする。


『すまん、気付くの遅れた! どこで待ち合わせする?』


 なるべく不自然にならない様に簡単な文章にして送信する。すると秒で既読がついて返信が来る。


『やったー! それなら鴇川駅がいいかな』


 二人の最寄り駅で集合となる。学校のある大町田駅と違ってそれ程大きくはないため飲食店などは限られてくる。


 弥勒は鴇川駅へと急いで行く。家に寄って服を着替える時間はないだろう。デートをするにはシンプルすぎる服装だが、体格が良いためそこそこ様にはなっている。


「アオイのケアはきちんとしないとな」


 先ほどの麗奈とみーことのケアは失敗したと言っても良いだろう。弥勒の対応に呆れて去って行ってしまった。あの場合はどういう風に答えるべきだったか未だに分からない弥勒。


「鴇川の駅はこっちだったよな」


 セイバーの姿になって屋根をぴょんぴょんと飛んできたからいまいち自分がどこにいるか分かっていない。慣れしたんだ街でも案外知らない場所というのは多いものだ。


 しばらく早歩きしていると見覚えのある景色になってくる。そのまま鴇川の駅まで急ぐ。


「よし着いた……」


 駅前に着いて周りを見渡す。すると改札近くにアオイの姿があった。


「あっ、弥勒くーん!」


 同時にアオイも弥勒の存在に気付き、嬉しそうにこちらへやって来る。そして少し申し訳なさそうな顔をする。


「ごめんね、無理やり呼び出しちゃって……」


「いや俺も暇してたから大丈夫」


 なるべく優しく対応する。先ほどと同じ過ちは繰り返さないように注意している。


「なら良かった! どこ入る?」


「昼飯まだだから腹減ってるわ」


「あたしも! ならそこのファミレスにしよう!」


 アオイはすぐ近くにあるファミレスを指差す。学生にとっては安い上に長く居座れるので重宝する場所だ。


 鴇川駅前のファミレスは洋食がメインのチェーン店だ。ハンバーグなどベタなのものが美味しい。


「そうだな」


 二人でファミレスへと入る。ショーウィンドウに並んでる食品サンプルを見ながら何を食べるか考える。


「いらっしゃいませ〜。二名様でしょうか?」


「はい」


 ウエイトレスに座席に案内される。場所はもちろん禁煙席だ。二人は向かい合って座り、メニューを開く。


「お腹空いた〜。何食べようかな」


 アオイは楽しそうにメニューを眺めている。


「俺はチーズインハンバーグかな」


「ふふっ、弥勒くんって意外と可愛いもの頼むんだね」


 弥勒のチョイスにアオイはくすりと笑う。ハンバーグにチーズは正義なので弥勒としては間違いないと思っている。


「いや絶対美味いから」


「だよね。あたしはカルボナーラにしようかな」


 店員を呼んで注文をする。チーズインハンバーグのセットとカルボナーラのセットを頼む。合わせてドリンクバーも。


「飲み物取りに行こう!」


 弥勒とアオイは席を立ってドリンクバーへと向かう。グラスを手に取り氷を入れる。


「あたしはオレンジジュースにしよ〜」


「俺はジンジャエール」


「混ぜないの?」


 ニヤニヤしながらアオイが聞いてくる。学生のドリンクバーの定番といえばジュースを混ぜることだ。炭酸やコーヒーなどを混ぜて激マズドリンクを作ると言うのは誰もが通る道だ。


「いや流石にまずいものを飲みたくないしな」


 異世界での生活を経てちょっぴり大人になった弥勒はドリンクバーで遊んだりしないのだ。もし男同士だったらやっていた可能性はあるが。


「弥勒くんが激マズドリンク飲んでるの見たかったのになぁ」


 そんな事を言いながら二人は先に戻る。頼んだメニューがやってくるまで雑談をする。


「そういえば何か騒がしくないか?」


 弥勒は駅に来るまでの間にヘリなどが空を飛んでいたのを確認していた。恐らくは天使との戦いによる影響だろう。


「そ、そうだね。なんかこの近くで大きな事件があったみたいだよ……?」


「そうだったのか」


 弥勒の正体をセイバーだと知らないアオイは少し焦りながらも何とか誤魔化す。


 弥勒は返事してからスマホを取り出す。先ほどはアオイへの返信をするのに精一杯でニュースを確認する時間が無かった。ニュースアプリを開く。


「これか……大町田で謎の光の柱が出現……?」


 ニュースアプリの地方欄に大町田での記事がアップされている。弥勒がスマホをテーブルに置く様にするとアオイもそれを覗き込んでくる。


「あ、そうみたいだね」


 記事を見ていくと今日のお昼前後に大町田市で大きな光の柱が出現したという。時間としては数十秒くらいだったが、多くの目撃者がいたとのことだ。光の柱が出現した理由は不明で、近くの道路などで破損などが発生しており、今後調査を進めていくと書いてある。


「ヘリが飛んでたのはテレビか」


「もしかしたら今ニュースで報道されてるかもね」


 現時点で記事には魔法少女や騎士、天使といったワードは存在していない。しかし今後の調査で目撃者などによりそういったワードが出てくる可能性は高い。


「さすがにファミレスにテレビは置いてないよな」


「そんなに気になるの?」


 真実を知っているアオイは弥勒に問いかける。


「流石に自分の住んでる街の事だしな。原因不明っていうのは少し怖いよな」


「……うん、そうだよね」


 アオイは神妙に頷く。前に弥勒と一緒にいて鷹の天使に襲われた時のことを思い出しているのだろう。


「お待たせしました、チーズインハンバーグです」


 少し雰囲気が暗くなったタイミングで弥勒の頼んだハンバーグセットがやってくる。続いてすぐにアオイのカルボナーラもやってきた。


「わぁ、美味しそう〜」


「食べるか!」


 二人でランチを食べ始める。思っていたよりもお米の量が少ないため大盛りにすれば良かったと思っている弥勒。


「やっぱここは美味しいよね」


「だよな。俺も昔からよくここで食べてたわ」


「あたしも! もしかしたらあたし達どっかですれ違ってたかもね」


「かもな」


 二人でくすくすと笑う。そしてアオイが切り出す。


「そういえば弥勒くんっていつの間に森下さんと仲良くなったの?」


 笑っていた弥勒の顔が引き攣る。アオイはニコニコとしているが、眼は笑っていない。


「えーと、小学生の頃のクラスメイトなんだよ。それで高校になって再会した感じ」


 とりあえず真実を教える弥勒。再会の仕方などに問題はあったものの概ね間違った事は言っていない。


「えー! そうだったんだ。だからあんなに仲良しだったのかぁ……あたしも負けない様にしないと」


 最後にボソリと呟いた一言を弥勒は聞こえなかった事にしてランチを食べ進める。こうして楽しい(?)休日のランチタイムは過ぎていくのであった。



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