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ヤンデレ魔法少女を回避せよ!  作者: 広瀬小鉄
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第二百八十七話 防御チームの戦い


 時は僅かに遡る。弥勒たちが巨大ロボットの右腕を切り落とす前。ヘイトを上手く稼いで防御チームとしての役割を果たしていた麗奈は一息吐く。


 地面が崩落した時には焦ったが、エリスのファインプレーにより全員無事に脱出できた。そして彼女たちは無事な地面へと場所を移していた。また念のために月音が三人分のジェットパックを展開した。


「ふぅ……何とか今回の攻撃も防げたわね……」


 巨大ロボットの攻撃はどれも強力である。毎回、全力で防がなければあっという間に全滅してしまうだろう。また彼女たちが巨大ロボットの相手をしているお陰で周囲への被害は最小限に留められている。


「徐々にカラクリが見えて来たわね」


 すると隣にいる月音がそんな事を言った。また何か分かったのだろう。麗奈とエリスはそちらへと視線を向ける。


「大天使が権能をオフにした時に放出されたエネルギーをロボットの攻撃と防御に使ってるのよ。だとしたら次のエネルギー放出が来るまでにそれを使い切らせる、あるいはたくさん消費させればダメージは通りそうね」


 月音は先ほど述べていた見解を若干、修正する。大天使の権能オフ時に天使たちの防御力、攻撃力が高くなるのは間違いない。ただロボット自体がスイッチの様に無敵状態と非無敵状態が交互になる訳では無かった。定期的に大天使から供給されるエネルギーを上手く消耗させれば、攻撃は通ると考えた。


 しかしそれは逆に言えば相手を消耗させなければダメージを与える事は出来ないという事である。最初の仮説ではタイミング次第で攻撃が通ると想定していた。しかし実際はタイミングは関係なく、次のエネルギー放出が来るまでにロボットのエネルギーを削り切らないといけないのだ。どちらかと言えば難易度は上がっているかもしれない。


「ならこっちも防御の合間にチマチマと攻撃していくのがベストかしら?」


「そうね。多少はエネルギーを削れると思うわ」


「そうと決まればダークレッドくまさんたちの出番です!」


 二人の結論を聞いていたエリスがテディベアたちを召喚する。召喚獣たちなら麗奈たちが防御に意識を割いていても、攻撃を行ってくれる。


「デビクマッ!」


 エリスは最初からカラー強化と悪魔化を組み合わせたテディベアを召喚した。それを見て麗奈もハッとして自らの姿をクラウディフォームへと変える。


「忘れてたわね?」


「そ、そんな事無いわよ……?」


 月音からの指摘に慌てる麗奈。眼を逸らして全然違う方向を見ている。確実に忘れていた時の反応である。


「デビクマー!」


「ネバールート!」


 テディベアと麗奈の鞭が動き出す。テディベアは無謀にも巨大ロボットへと突撃していく。テディベアのサイズは巨大ロボットの足の指よりも小さい。それで果たして何が出来るのか。


「デビクマデビクマー!」


 すると巨大ロボットの左足の小指部分に向かって全力で拳を叩きつけた。地味な嫌がらせである。すると巨大ロボットの視線が下へと向く。


『検索。タンスノ角ニ小指ブツケタ。ヒット。ジュウヨン件』


 すると痛みの原因について検索をする巨大ロボット。その検索がネットに繋がっているものなのか不明だが、どうやら14件はヒットしたらしい。


 その間に麗奈のネバールートが左足に巻き付いていく。巨大ロボットは検索にヒットした情報を読み上げているだけで反撃はしてこない。


『———親ト喧嘩シテブツケタ。以上。ジュウヨン件』


 そして14件の情報が読み終わった様だった。すると視線が麗奈たちへ向く。そして左腕を構える。


「来るわよ! ガーネットペタル!」


「凍りなさい!」


「戻って来て下さい、カメさ〜ん!」


 三人は今まで通りの防御態勢に入る。ロボットの左腕から派手な光線が放たれる。それを真正面から受け止める魔法少女たち。


「デビクマー! デビ〜ッ⁉︎」


 光線を出したついでに、左足にプチッと踏み潰されるテディベア。余程、チクチク攻撃が不愉快だったのだろう。それを見ていたエリスが小さく悲鳴を上げる。しかし麗奈と月音はそれを気にしている余裕は無かった。


「わ、わたくしも必殺技を出しましょうか……?」


「貴女の巨大化はとっておきよ。既に一回使ってるのだし、残りはいざという時に取っておくべきよ」


 エリスの疑問に氷を作りながら月音は答える。彼女の意見に麗奈も頷く。かなりのサイズ差があると言っても、エリスの必殺技だけが唯一質量で対抗できる手段だ。出来る事なら温存しておきかった。


「……っ。毎回、しんどいわね……」


 何とか今回の光線も防ぎきった麗奈は大きく息を吐く。するとエリスが何かに気付いた様で声を上げる。


「あ、見て下さい!」


「インディゴってば何やってるのよ……」


 エリスの視線の先にはアオイがいた。彼女たちが攻めていた左足とは反対側の右足をアオイが駆け登っていた。垂直に走っているという出鱈目具合だ。


 しかしそこから上手く攻撃チームの技がハマる。それにより右腕が切り落とされる。それを見ていた防御チームも喜びの声を上げる。


「やったわ!」「やりました!」「成功ね」


 防御チームはずっと敵の攻撃を真正面から受け止めていたため消耗が激しかった。しかし右腕の切り落とし成功により、若干気力が戻る。


「ちょっと待って! 何か変よ!」


 切り落とされた右腕が震えたのを見て麗奈は警戒する。彼女の声に二人も表情を戻す。すると右腕が一斉にバラバラになり、数百体の天使へと姿を変えた。


「て、天使です……」


「嘘でしょ……⁉︎」


「迂闊だったわ……その可能性も十分考えられたはずなのに……」


 天使の大群へと化けた右腕に三者三様のリアクションをする麗奈たち。共通するのは三人共厳しい表情をしているという事だ。


「アタシがいるぞぉぉぉーーー!!!」


 その時だった。上空からそんな声が聞こえて来た。三人が顔を上げるとそこには落下途中のみーこがいた。


「いぇーい! いっくよー! メランコリーパーリー!」


 みーこは空中で必殺技を展開する。それを見ていた麗奈は反射的に前に出て自らも必殺技を展開する。


「メランコリーロザリオ!」


 空中に現れる大量のミラーボール。それと同時に天使の多くが黒く展開していく領域に呑み込まれる。そして一斉に爆発が起きる。


 またそれに少し遅れて麗奈の背後に真っ赤な巨大なロザリオが出現する。そこから膨大なエネルギーが放たれる。巨大ロボット程では無いが、普通の天使が喰らえばひとたまりも無いレベルである。


 必殺技の二連続により大量の天使を凡そ倒す事に成功する。お互いの必殺技のタイミングがもう少しズレていたら、かなりの撃ち漏らしが発生しただろう。


「メランコリーユニゾン!」


 麗奈の背後からエリスが必殺技を発動するのが聞こえた。彼女はカメを巨大化させる。するとそのタイミングで巨大ロボットの左足から強烈な蹴りが叩き込まれる。麗奈たちが大量の天使の対処に気を取られている隙を狙った攻撃だ。


「か、かめぇ………」


 真正面から蹴りを喰らったカメは情けない声を漏らす。どう見ても状況はかなり劣勢である。麗奈は必殺技を使った直後のため、タイミング的にガーネットペタルを再び出すのは難しかった。


 その状況を見ていた月音が一度目を瞑って息を整えた。そして大きく眼を見開く。すると拳に装着していた凍る君が黒く染まっていく。


 それに合わせて月音の姿も変わる。服の裾とスカートが短くなり、ヘソが露出する。そして衣装に黒い部分が増える。大きな黄色いリボンが背中に付いて、その裾が足元まで伸びる。最後に前髪の一部が黒く染まった。クラウディフォームへの変身である。


「行きなさい」


 月音の指示によりドローンが五体ほど出現して一斉にレーザービームをロボットの左足へと放つ。それにより蹴りが少し押し戻される。


「凍りなさい」


 続けた彼女のその言葉と同時にドローンから出ていたレーザービームが氷り始める。それにより更に足を押し戻す事に成功する。


「何とかなったわね」


 そう言って彼女は大きく息を吐く。クラウディフォームをさらっと披露した月音はなんて事無い様に振る舞っている。こうして防御チームは何とかピンチを凌いだのだった。

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