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ヤンデレ魔法少女を回避せよ!  作者: 広瀬小鉄
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第二百七十五話 映えスポット


 朝、弥勒はいつも通りアオイと別れて教室に入る。そして席に座ろうとする。するとクラスメイトたちの配置がいつもと違う事に気付く。


「(そうだ、席替えしたんだったな……)」


 危うくいつもの席に座りそうになった弥勒。彼は新しい自分の席へと座る。隣に座っている相坂への挨拶も忘れない。


「おはよう」


「おう! 最初、うっかりいつもの席に座りそうになったぜ」


「俺もだ」


「だよな! 前の席は最悪だったからな。黒板見え辛いし」


 どうやら相坂も以前の席に座りそうになったらしい。それに弥勒も共感する。相坂が前に座っていた席は窓際の一番前である。その場所は角度的に黒板の右端側が見えにくいのだ。目立つ一番前なのにも関わらず、黒板が見え辛いという嫌な席である。


 弥勒は左隣の席に視線を向けるもまだ鹿島の方は登校していない様だった。すると前の方から麗奈がこちらにやって来る。


「おはよう、弥勒」


「ああ、おはよう」


 挨拶をしてから弥勒の机に腰掛ける。いつもは弥勒から挨拶するのだが、今日は違った。麗奈の方からわざわざ彼のところまでやって来て挨拶をして来た。席替えをして弥勒から離れた席になってしまったからだろう。


「今日も暑いわね」


「9月いっぱいまでは暑いんじゃないか?」


「それは……憂鬱ね」


 夏の暑さに終わりに見えない事に麗奈はげんなりとする。弥勒はそんな彼女の様子を見て違和感を覚える。彼女はわざわざ自分の席から話し掛けに来たのに話題は天気についてである。ここから本題が始まるのだろう。何となく弥勒はそう感じた。


「ところで、弥勒。一つ話があるんだけど」


「何だ?」


 やはり来た、と思いつつも弥勒は聞き返す。すると麗奈は少し顎を引いてから話し始める。


「ワタシ、もう少し読モのバイトに力を入れようと思ってるのよね」


「そうなのか」


「そのためにSNSをもう少し真剣にやろうと思うの。ほら有名なモデルとかってSNSもしっかりやってて、フォロワーも多いでしょ?」


「確かになぁ。モデル系の人たちってみんなSNSやってるイメージあるわ」


 弥勒は自分の知っているモデルなどを思い浮かべる。テレビで見た程度のレベルで数人しか思い浮かばないが、確かにSNSをやっているイメージがあった。


「でしょ? だからワタシもしっかりやってみようと思って。という訳で手伝ってくれる?」


「何が『という訳で』なのか分からないが……手伝うって何をするんだ?」


「………………えーと、色々よ!」


 ようやく本題であるSNSを弥勒に手伝わせるという話に入った麗奈。昨夜、愛花と行った作戦会議通りの展開である。実際に話を切り出すまで麗奈も緊張していた。柄にもなく天気を話題から入るくらいに。


 そして弥勒から何を手伝ったら良いかと聞かれて彼女は固まる。よくよく考えればその辺りの具体的な事は何も考えていなかった。昨夜はこれで突破口が出来たと愛花と一緒に喜んでいただけだ。


「色々って……」


 麗奈の答えに弥勒も首を傾げる。具体的なプランは何も決まっていないが、それに付き合ってくれと言われても彼としては頷き辛い。ダラダラと時間を消費して終わってしまう可能性もある。


「撮影用の機材とかは重いし、衣装とか小道具も必要だから。その辺りは弥勒が居てくれれば助かるんだけど……」


 とりあえずそれっぽい事を言ってみる麗奈。撮影用の機材といっても本格的なカメラ道具は何も持っていない。実際に使うのはスマホと、自撮り棒程度だろう。


「まー、暇だったら手伝っても良いけど……」


「ほんと⁉︎ なら決まりね!」


 弥勒がオッケーを出した事で麗奈は喜ぶ。ただまだ中身は何も決まっていないので、これから考えなければならない。弥勒としては多少の案を出すくらいはするつもりだが、基本的には麗奈に決めて貰いたかった。


「ただし何をするかは麗奈の方で考えてくれよ?」


「そうね。まずは無難に映えスポット巡りが良いと思うのよね」


「映えスポットか……」


 早速、麗奈は提案を口に出す。ただこの映えスポット巡りは昨夜、愛花が言っていた事をそのまま言っているだけだ。麗奈自身はどこに映えスポットがあるのか全く分かっていない。


 弥勒の方も映えスポットと言われて考え込む。彼としてもSNSは基本的に見ることにしか使っていない。そして使用頻度もそれほど高くない。そのため映えスポットと言われても何も思い浮かばなかった。


「全然、思い浮かばないな……」


「ワタシもよ……とりあえずSNSでどこか良い場所が無いか探した方が良いわね」


 映えスポットを巡るのは決定したが、場所については全く思い付かなかった二人。後でSNSを巡回して良い場所を探そうと決める。すると隣の席から「うおっほん」というわざとらしい咳払いが聞こえた。二人は視線をそちらへと向ける。


「悪いが話は聞かせて貰ったぜ、お二人さん。映えスポットには一つ心当たりがあるんだ」


 相坂がそう言ってドヤ顔をする。隣の席のため二人の会話が自然と聞こえてしまったのだろう。弥勒たちとしても聞かれて困る様な内容では無かったので、声のボリュームは気にせずに喋っていたというのもある。


「それはありがたいわね。どんな場所なのかしら?」


「川を少し越えた所に庭園風のカフェがあるんだよ。そこだと店内も綺麗な植物とか飾ってあって写真映え間違い無しだぜ」


「完璧じゃない、採用よ! ありがとう、相坂くん」


 庭園風のカフェというお洒落なワードに麗奈が飛び付く。話を聞いた限りでは店内の装飾にも拘っている感じのため、確かに映えスポットと言えるだろう。


 相坂は麗奈にお礼を言われて少し照れている。麗奈は一応、クラスでは高嶺の花的な存在なのである。弥勒と一緒にいる時はそんな感じはほとんど無いのだが。


「にしても、お前がそんな場所知ってるなんて意外だな」


「いや、それがさ。野球部のマネージャーがやけにそのお店の話を俺にしてきてさ。行ってみたい、行ってみたいって言ってるんだよ。そんなに気になるならさっさと行けば良いのにな!」


「…………相坂くん、減点ね」


「何で⁉︎」


 部活で野球ばっかりやっている相坂が映えスポットについて知っているのを疑問に思った弥勒。尋ねてみると野球部のマネージャーが原因の様だった。その話を聞いて麗奈は若干、冷たい視線を相坂へと向ける。


 弥勒としてもその野球部のマネージャーに同情する。何とかして相坂と一緒にカフェに行きたいのだろう。だから何度も行きたいアピールをしているのだ。当の本人はそのアプローチに全く気付いていない様だったが。


「にしても川向こうはあまり行った事無かったわね」


「確かに。大体、放課後遊ぶ時は駅前だしなぁ」


 弥勒たちが放課後に遊ぶ場所は基本に駅前の商店街や、商業施設の大型ビルである。そのため川を越えて、その先へ行く事はまず無いと言って良いだろう。そのため二人はカフェについて全く知らなかった。


「今日の放課後に早速、そこに行ってみるのはどうかしら?」


「そうだな。せっかく教えて貰ったんだし、行ってみるか」


「なら約束よ!」


 麗奈は嬉しそうに自分の席へと戻って行く。上手く弥勒と約束を取り付けられた事が嬉しかったのだろう。またカフェならば次の映えスポットについて探したり、話し合ったりする事もできる。一石二鳥である。


「やっぱり姫乃木さんとお前って仲良いんだな」


 そして麗奈が席へ戻って行った事で再び相坂が弥勒に話しかけて来る。


「そうだな。前まで隣の席だったしな」


「本当にそれだけか〜? というか夜島って陸上部の子とも仲良いみだし、あと隣のクラスのギャルっぽい子も!」


 ここぞとばかりに相坂は気になっていたであろう事を聞いて来る。弥勒としてはそれに何と答えたら良いか悩んでしまう。


「あと女神様に、神楽先輩とも仲良いみたいだし。誰が本命なんだ?」


「えーと……」


「ちょっと、そこまでにしときなよー。夜島くんが困ってるじゃない」


 するとそのタイミングが鹿島が教室へと入って来た。弥勒にぐいぐいと質問している相坂を彼女が嗜める。


「おっと、すまんすまん! 踏み込みすぎたわ。助かったぜ、鹿島」


「デリカシー無いとモテないよー? とりあえず二人ともおはよう」


「「おはよう」」


 鹿島のお陰で、相坂の追及から逃れられた弥勒。相坂も悪気は無かった様で、弥勒としても気にするほどの事では無かった。それから授業が始まるまでは三人で喋るのだった。

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[一言] 相坂、どうかと思います
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