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ヤンデレ魔法少女を回避せよ!  作者: 広瀬小鉄
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第二百四十九話 初陣


 麗奈が実家のソファで寛いでいると腰にぶら下げていた天使コンパスが鳴り始める。その表示を見てみると、そこには「無」と表示されていた。


「愛花、天使が来たわ! 二人にも連絡して準備しなさい!」


 麗奈は二階の自室で宿題をしている愛花へと大声で呼びかける。両親は仕事でいないため、コソコソする必要は無い。


「わ、分かった……!」


 するとドタドタと音がして愛花が階段から降りてくる。手には強化パーツたちを持っている。そしてどこか緊張した面持ちとなっている。


「二人には連絡したよ! それで場所は⁉︎」


「あっちの方ね。まずはワタシたちが行かないと二人も来れないわ」


 麗奈はそう言ってから愛花を連れて家を出る。天使コンパスは魔法少女と弥勒の分しか存在していない。そのため麗奈と一緒に生活している愛花はともかく小舟と凛子は天使の出現を知る術が無いのだ。


 麗奈は物陰で魔法少女へと変身する。愛花も強化パーツを身につける。そして麗奈は愛花をお姫様抱っこする。月音からアクセスキーが来ないと強化パーツは使えない。そのため現在、愛花は魔装少女になる事ができないのだ。


「いくわよ!」


「うん!」


 麗奈としては妹をお姫様抱っこするというのは若干、恥ずかしいものがあった。逆もまた然りである。しかしそれを気にしている余裕は無いので、素早く飛び上がって屋根へと着地する。


 そこからは天使コンパスに従って進んでいく。すると前方からドローンがやって来る。それを見て月音が出したものだとすぐに分かる。


『アクセスキーを使いなさい』


 目の前までやって来たドローンから月音の声が聞こえる。麗奈は一旦、愛花を降ろす。愛花はドローンからチップを受け取るとゴーグルの後ろについているスロットへと差し込む。


『Hello (・∀・)』


 スマートウォッチに起動時のメッセージが流れる。愛花はそれを確認してから魔法を使う。


「ブースト!」


 するとスマートウォッチの画面に『boost』と表示される。シューズの宝石から魔力が出て来て、内蔵スピーカーの指示に従って身体強化の魔法を発動する。愛花は自身に力が溢れて来るのを感じる。


「これで行ける!」


『残りの二人にもドローンを飛ばしてるわ』


 そう言ってドローンが消滅する。魔力を無駄にしないためだろう。天使の居場所は天使コンパスを使えば探す事ができる。二人の所にもドローンを飛ばしていると考えると魔力を節約したいと思うのも当然だろう。


 そこから麗奈と愛花は再び動き始める。麗奈はもう屋根の上を移動するのは慣れているので、スムーズに進んで行く。一方で愛花は辿々しいながらも、何とか麗奈に喰らい付いている。


「見つけたわ。あれね……」


 すると麗奈の視界の先に何やら天使らしき姿が見えた。彼女は屋根から飛び降りて天使に接近する。愛花もそれに続く。


 彼女たちの目の前にいるのは本の形をした天使であった。それが四体出現している。


「ピーチ、まずは周りの人たちの避難よ」


「分かった!」


 麗奈は周りを見渡す。幸い大通りでは無かったが、人の通りが全く無い訳では無い。また天使の動きによっては他の路地にも被害がいく可能性がある。そのため愛花たちの役割は周りにいる人たちの避難である。そうする事で麗奈たちも全力で戦える。


 すると閉じた形をしていた本の天使が中を開く。開かれたページは光り輝いており、そこから無数の光球が発射される。


「っ……⁉︎ ピーチ!」


 麗奈は飛び退いて、光球をかわす。そして愛花の名前を呼ぶ。彼女の方は咄嗟に回避行動に移れなかった様で、代わりに右手を前に出している。


「シールド!」


 彼女がそう言うと、目の前に魔力によって作られたシールドが展開される。盾は天使からの光球を防いでいく。それを見て麗奈も安心する。


「……ふぅ」


 愛花は全ての攻撃を防ぎ切った事でシールドを解除する。しかしその後ろには別の本の天使が迫っていた。先ほどの攻撃の間に背後へと回り込んだ様だった。


「させないわ!」


 麗奈はネバールートを伸ばして本の天使を絡め取る。ページを開く前だったため、天使は何も出来ずに捕まる。


「そりゃ!」


 麗奈はそのまま天使を地面へと叩きつける。アスファルトが割れて土煙が舞う。


「ピーチ、油断大敵よ」


「あ、ありがと……」


 愛花は改めて魔法少女の戦闘を見て驚く。そして助けてもらった事に礼を言う。するとそのタイミングで残り二人の魔装少女がやって来る。


「遅れたっす!」


「あわ……お、遅れ、ましたぁ……!」


「ナイスタイミングね。二人もまずは周りの人たちの避難に集中してちょうだい。天使はワタシが倒すから」


「はいっす!」「は、はい……!」


 麗奈の指示に二人は素直に頷く。そして愛花とアイコンタクトをしてから三人バラバラの方へと散らばる。周辺の人たちを避難させるのに三人で固まって動いたら効率が悪いからだ。


「さてと、これでワタシは天使の相手に集中できるわね」


 三人が動き出したのを見て、麗奈は意識を目の前にいる天使たちに集中させる。










 まず近くにいる人たちに愛花は声を掛けていく。中には建物の窓からこちらを覗いている人たちもいる。


「皆さん! ここは危険なので、なるべく避難をお願いします!」


 愛花の声を聞いて素直に避難していく人は多い。しかし中には野次馬的な人間もおり、そういった人たちはスマホを片手に愛花や天使を撮影していた。


「あれって、最近噂の化物じゃね?」「うわ、本物初めて見た」「あっちで戦ってるのって魔法少女ってやつ?」「こっちの子とはまた服が違うじゃん」


「とにかく避難してくださーい!」


 愛花としては力づくで動かしたい所だったが、そうもいかない。声を掛け続けるが、効果は薄い。


「うわっ⁉︎」「きゃあ⁉︎」


 すると突然、愛花の背後にあった地面が破裂する。どうやら天使の攻撃が一部、こちらへ飛んできた様だった。愛花がそちらを見ると、麗奈がニヤリとしているのが目に入った。


「(うわ、お姉ちゃん……わざと攻撃を抜かせたんだ……)」


 麗奈は防げる攻撃をわざと避けて、愛花たちの近くに着弾させたのだ。きちんと一般人には攻撃が当たらないのを分かっての行動だ。そのお陰でスマホ片手に見物していた人たちも慌てて避難を始める。愛花は姉の思い切った行動を見て、驚きと感心の表情を浮かべる。


「ほら、みんな急いで避難してー!」


 愛花はそう声を掛け続けながら、周辺を巡回していく。途中で同じ様に動いている小舟と凛子とも遭遇する。


「そっちは?」


「もう回ったよ。あとはあっちだけかな」


「ならあたしはもう一度、同じ所を回って来る! 二人は新しい所を頼む!」


「おっけー!」「うん!」


 会話はなるべく最小限に留める。お互い巡回して来た場所の報告をして、次に行くべき場所を決める。そして避難誘導は一度で終わりでは無い。同じ道にも新しい人がやって来る可能性はあるので、そちらにも人を付ける。


 そうして慣れない避難誘導を行っているうちに天使の殲滅は終わった様だった。愛花たちは戦闘を中心を行っていた場所へと戻って来る。そこには暇そうにしている麗奈の姿があった。


「おつかれ、お姉ちゃん」


「おつかれ。それより避難誘導は大丈夫だったかしら?」


「なかなか大変だったっす! 中には素直に逃げてくれない人もいたっす」


「う、うん……何かコスプレしてるだけって思われるパターンもあったし……」


 凛子と小舟はお互い初めての避難誘導を行った感想を述べていく。愛花と共通しているのは、素直に避難誘導に従ってくれないという事だ。


「なるほどね。そうすると……あ、ヒコと一緒にいればどうにかなるかも……?」


 そこで麗奈はある事を思い出す。それはヒコに人払いの能力があった事だ。とは言っても一般人に天使の存在が知られつつある今となってはその効果は薄くなって来ている。しかし愛花たちと一緒に避難誘導に回れば、多少の役に立つのではと考えたのだった。


「何か気付いたの、お姉ちゃん?」


「ヒコの件で少しね。まぁ後で話すわ。とりあえず今日はお疲れ様。三人とも早く帰ってゆっくり休みなさい」


「「「はい!」」」


 こうして三人の初陣は無事に終わったのだった。


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