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ヤンデレ魔法少女を回避せよ!  作者: 広瀬小鉄
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第二百四十二話 リモート女子会後編


『夏休みの宿題はみんなどんな感じ?』


『あたしは明日からやるぞ!』


『私は一応、終わってるかな……』


「俺はもうすぐ終わるな」


 弥勒たちは愛花からの質問に三者三様に答える。そして愛花は凛子の答えが一番気になった様だった。


『いやいや凛子ちゃん……明日からって……』


『それ、絶対にやらないやつだよぉ……』


『うっ⁉︎ や、やるぞ! あたしはやる女だぞ!』


 二人に呆れられた凛子は顔を少し赤くする。そして宿題を行う宣言をする。右の拳を強く握ってアピールしている。


「そういう愛花ちゃんはどんな感じなんだ?」


『半分くらいですねー。ただ分からない所を残していってるので……ここからが大変なんですよ』


 愛花は大量の宿題を解いていく時には簡単なものからやっていくタイプだった。そのため後半には苦手なものばかり残り、スピードが落ちてしまう。


 ちなみに弥勒は毎日コツコツやっていくタイプである。小舟の方は何日か宿題をやる日を事前に決めておいて、そこで一気に進めていくタイプだ。


「みんな意外と宿題のやり方違うんだな。アオイとかは凛子ちゃんと同じタイプだな」


『うちのお姉ちゃんは弥勒先輩と同じタイプですね!』


「魔法少女は結構コツコツタイプが多い気がするな。みーことかエリス先輩とか」


 弥勒、麗奈、みーこ、エリスは毎日コツコツタイプである。アオイは先ほど弥勒が言った様に後回しタイプ。月音は小舟と同じタイプだ。ただ月音は頭が良すぎて宿題レベルなら小舟ほど日数は掛からない。


『しゅ、宿題の話は終わりだぞ! 頭が痛くなるから。そんな話よりもお肉とか美味しそうな話をするぞ!』


 勉強の話に耐えられなくなった凛子が話を強制的に終わらせる。それには三人とも苦笑いになるものの、彼女の希望通り話題を変える。


『そういえば弥勒先輩ってバイト始めたんですよね?』


「ああ。麗奈から聞いたのか?」


『そうです!』


 話題は弥勒のバイトについてとなる。すでに魔法少女たちも全員バイトについて知っている。そのため愛花たちにも隠す必要は無い。


『どんなバイトをしてるんですか……? や、やっぱりパワー系の……?』


「いや喫茶店だよ。俺も引越し業者とか考えてたんだけど、母親の知り合いのお店が人手足りてなくてさ」


 小舟は知らなかった様で何のバイトをしてるのか質問してくる。彼女の中では弥勒はパワー系のバイトをするイメージなのだろう。


『喫茶店! ハンバーガーのある喫茶店っすか?』


「いや……さすがにハンバーガーは無いかな……」


 凛子は自分の好物のハンバーガーが置いてあるかどうか気になったらしい。しかしサイアミーズのメニューにハンバーガーは存在していない。もしかしたらかき氷の様に期間限定で展開していた可能性はあるかもしれないが。


『そうっすか……残念っす』


 凛子はハンバーガーが無いと聞いて残念そうな表情をする。彼女はそういった喜怒哀楽が分かりやすいタイプだ。


『なんて所なんですか?』


「サイアミーズって所だよ。旧百合ヶ丘にある喫茶店」


『あ……もしかしてかき氷が有名なお店ですか……?』


 弥勒が喫茶店の名前を答えると、小舟がそれに反応する。どうやら彼女はサイアミーズを知っている様だった。


「そうそう。知ってるの?」


『前にテレビの特集で見ました。近くだったので印象に残ってて……』


 恐らく彼女が見たテレビというのはサイアミーズが混雑するきっかけになったものだろう。


『かき氷良いですね! 食べたいです。どんな味があるんですか?』


「一番新しいのだとピーチ&ホイップクリーム。一番人気がブラッドオレンジ&マスカルポーネ。あとはダブルベリー&ミルク、抹茶小豆、コーヒー&キャラメル、キウイ&ヨーグルトだな」


『名前だけで分かる、お洒落なやつだ!』


『普通のイチゴは無いっすか?』


『コーヒー&キャラメル美味しそう……』


 愛花は味のラインナップを聞いてお洒落なかき氷だと推測する。一方で凛子の方は屋台で売っているような普通のかき氷が好きそうだった。


「残念ながらシンプルなイチゴ味は無いな。コーヒー&キャラメルは甘すぎないから飽きずに食べられる味だよ」


『おー、本当に店員さんみたいですね!』


「まだバイト始めてからそんな経ってないけどね」


 愛花に褒められて満更でも無い弥勒。ふと画面を見ると凛子が画面から消えていた。部屋は映し出されているので、電波は繋がってはいる様だが。


「あれ、凛子ちゃんは?」


 弥勒がそう言うとドタドタドタという音がして凛子が部屋へと戻って来る。彼女は手に何か持っていた。そしてPCカメラにそれを見せる。


『じゃじゃーん! 家にイチゴのかき氷があったの思い出したんだ!』


 凛子が見せて来たのはスーパーとかでよく売っているかき氷系のカップアイスだった。かき氷の話をしていたから食べたくなってきたのだろう。凛子はフタを開けてスプーンでそれを食べ始める。


『うまい!』


『わ、私もなんかアイス食べたくなってきちゃったよ……』


『それなら私たちもお互いアイス取りに行って何食べるか見せ合おうよ!』


「面白そうだな」


 愛花からの発案でそれぞれアイスを取りに行くことなった。弥勒も一旦、自分の部屋から出てリビングへと行く。そして冷凍庫を開けて何かアイスが入ってないか探す。


「お、これにするか」


 弥勒が手に取ったのはスイカ棒というアイスだった。切ったスイカを模した形となっており、どちらかと言うとかき氷系のアイスである。弥勒はそれを持って部屋へと戻る。


 そしてスマホの前に座って他の二人が戻ってくるのを待つ。するとすぐに愛花と小舟も戻って来る。


「それじゃあまずは俺から見せようかな」


 弥勒は持って来たスイカ棒をカメラに写る様に前に出す。


「俺が選んだのはスイカ棒だな。夏はよくこれ買いがちだな」


『スイカ棒! あたしもよく食べるっす!』


『私は知ってるけど……食べた事ないです……』


『美味しいですよね! 私はたまーに買うかな〜』


 凛子はスイカ棒が好きな様だった。彼女はかき氷系のアイスが好きなのかもしれない。


 そして次に愛花が持って来たアイスを見せる。それはカップ系のアイスだった。


『じゃじゃーん! ビッグカップのバニラ味〜!』


 愛花が持って来たのはバニラ味のカップアイスだった。有名なメーカーのものでどこのスーパーやコンビニでもほぼ置いてあるものだ。


「意外に大きいやつ食べるんだな」


 ビッグ、と名に付いている通り、通常のカップアイスよりもサイズは大きめである。それを愛花が食べるという事に弥勒が驚く。


『小さいやつだとお姉ちゃんに食べられちゃうんですよね〜。大きいのだとお姉ちゃんはカロリーを気にして手を出さないので……』


『姉妹あるあるだね……』


「思っていたよりも深い理由で選んでるんだな……」


 弥勒の中では麗奈がカロリーを気にしながらアイスと睨めっこするイメージが浮かぶ。


『最後は小舟ちゃんだぞー?』


『う、うん。私はこれかな……』


 最後となった小舟が自分の持って来たアイスをカメラへと写す。そこにはフルーツの絵が描かれたパッケージが写っている。


『フルーツの実です……サイズとか量も食べやすい感じなので……』


『おぉ! それもよく食べるぞ! ただ量が足りないけど』


 フルーツの実はシャーベット系のアイスである。ビー玉より少し大きいくらいのサイズで、様々なフルーツの味がするシャーベットが入っている。女子人気の高い商品でもある。しかし凛子には物足りない量の様だった。


『みんな全然違うアイスだったねー! うーん、美味しい〜』


 ビッグカップを食べながら感想を言う愛花。誰も持って来るアイスが被らなかったのが意外だったのだろう。


「でも割とみんな定番系のアイスを選んでたな」


『たしかに……』


 弥勒たちが持って来たアイスはどれも有名なものである。新しいものや、変わった味などは無かった。弥勒としては被らなかった事よりも、そちらの方が意外だった。特に女子は新しい味が好きなイメージがあったからだ。


 そしてそこからは食べ物についての話題で盛り上がり、リモート女子会は平和に終わるのだった。

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