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ヤンデレ魔法少女を回避せよ!  作者: 広瀬小鉄
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第二百三十二話 記者会見


「皆さん、まずはお疲れ様でした」


 大町田駅前からエリスの部屋に移動した弥勒たち。そこでエリスから労いの言葉を掛けられる。


「お疲れ様でした。大天使が倒せたのは嬉しいですけど、街の事を考えると複雑ですね」


 麗奈がそう返事をする。やはり他のメンバーも街への被害について考えてるのだろう。全員、暗い表情をしている。


「今回の敵はそれだけ強かった。正直、周りへの被害を気にしていられるほどの余裕は無かっただろ」


「街への被害状況についてはいずれテレビなんかで大々的に報道してくれるはずよ。それを待つしか無いわね」


 弥勒がフォローを入れる。敵の権能について事前に分かった上で戦ったのに、これだけの被害が出てしまったのだ。それだけ相手が強かったという事である。


 そんな中、月音は「街への被害状況」という表現をする。「死傷者数」とは言わなかった。それは彼女なりの配慮なのだろう。それを口にしてしまえば、魔法少女の何人かは確実に精神的なダメージを受けてしまうだろうから。


 最もSNSやテレビなどの報道ですぐに知る事になってしまうだろう。これ程の大事件の情報を全く目にせずに過ごすのは難しいはずだ。


「俺たちもしばらくは集まり辛くなるかもな」


「え? どうして?」


「大町田駅の機能が止まったら電車動かないだろ」


 大町田駅から繋がる路線は地下鉄ではない。地上を走っているものだ。そのため今回の戦いで甚大な被害を受けている。その間は確実に電車は動かなくなるだろう。そうなれば弥勒たちも集まり辛くなる。


「確かに。ていうか外出禁止令とか出てもおかしく無いレベルっしょ」


「安全が確保できるまで近隣住民はどこかに避難させられる可能性とかもあるわね。私たちは大町田駅の近辺に住んでいる訳じゃないから関係ないけど」


 みーこの言葉に月音も反応する。規制が掛かるのは間違いないだろうが、どういったものになるかは報道を待つしか無いだろう。


「今日は皆さん、こちらに泊まりませんか? 電車が動いてない以上、帰るのは大変だと思いますし」


「確かに……今頃、外は混乱してるよね」


 エリスが今日は家に泊まるよう提案してくる。彼女の言う様に帰るにしても電車は確実に運休中だろう。そうなるとタクシーやバスなどがその影響で混み合うのは間違いない。また大町田駅周辺を迂回しての動きとなるので、尚更時間も掛かるだろう。


 そのため彼女の提案に全員が頷く。そして各々が家に連絡して外泊の許可を取る。親たちはそれぞれ子供たちの安否を心配していた。大町田駅周辺の事件に巻き込まれていないかと。それが無事だと分かり、ホッとした様子だった。そして帰れない事情を説明すると納得してくれるのだった。


「これで全員許可は取れたわね。それなら後はお風呂とご飯ね」


「ちょっち待った! 一時間半後に総理が官邸で会見するっぽいし」


 この後のスケジュールを決めた麗奈に、みーこが新しい情報を伝える。スマホのニュースサイトに載っていたものである。


「それを考えると先にご飯かしら。お風呂だと順番に入ったら一時間半以上掛かるだろうし」


「確かにご飯を先にした方が良さそうですね。急な事だったので、大したものは用意できませんが少し待ってて下さいね」


 そこからエリスはお手伝いさんたちを呼んでご飯の準備をお願いする。彼女たちも大町田駅周辺での事件については当然、知っているので弥勒たちが家に帰れない事も分かっていた。宿泊の件も含めて快く引き受けてくれた。


 それから弥勒たちは用意されたご飯を食べる。確かに普段、エリスの家で食べる料理と比べると今日の料理はシンプルなものだった。しかし普通の家庭料理のレベルは遥かに超えていた。


 ご飯を食べ終わった弥勒たちはテレビのある部屋へと移動する。エリスの部屋にはテレビが存在していないのだ。そしてソファに座り、記者会見が始まるのを待つ。


 指定の時刻になると、空だった会見場に役人らしき人たちが入ってくる。そしてしばらくしてから最後に総理大臣がやって来る。


『えー、それではこれから大町田駅周辺で起きた事件について会見を致します』


 司会の男性がそう言うと政府側の人間たち全員が頭を下げる。それに倣い記者側も頭を下げる。そして壇上に立っている総理大臣が口を開く。


『本日、15時過ぎに都内の大町田市にある大町田駅周辺にてテロ事件が発生致しました』


 その台詞に記者たちが一斉に声を上げる。そしてテレビを見ていた弥勒たちもまた驚きの表情を浮かべる。


『現場はどうなってるのでしょうか⁉︎』『テロと断定した要因は⁉︎』『被害者等の把握は⁉︎』『政府はこの事実をいつから掴んでいたんでしょうか⁉︎』


『落ち着いて下さい。テロと断定した理由についてですが、防衛省にテロリストからの犯行声明と思わしきものが届きました。現在、詳細については調査中となります。しかし既に一部の実行犯については拘束しております』


「テロリストの犯行声明ってどういう事⁉︎」


「何だかよく分からない事になってるし……」


 総理からの説明に疑問符を頭に浮かべる魔法少女たち。弥勒も静かに画面を見つめる。


『被害状況につきましては、現在調査中になります。少なくとも大町田駅周辺につきましては壊滅状態。死傷者、行方不明者を合わせれば数千人規模となるでしょう』


「「っ……⁉︎」」


 死傷者、行方不明者の数を聞いて顔面が蒼白になる魔法少女たち。激しい戦闘だったためある程度の覚悟はしていたものの、それを実際に聞くと動揺してしまう。場の空気がかなり重くなる。


『すでに現地には自衛隊を派遣しております。復旧については角谷大臣の指揮の元、迅速に行って参ります。そのため該当区域にはしばらくの間、立入禁止という形となります』


 そう言って総理は後ろにあったスクリーンに地図を映し出す。そして大町田駅の被害を受けている部分と、立入禁止区画を示す。角谷大臣というのは現在の国土交通大臣の名前である。


『テロ組織への対策につきましては防衛省、警視庁などの組織を中心に対策を講じます』


 そこからも総理の話と記者たちからの質問は続く。そして全てが見終わる頃には2時間が経過していた。


「死傷者に行方不明者の数が……あたしたちのせいだよね……」


「けれどどうしようも無かったわ。そもそも駅周辺にいる全ての人たちを避難させるなんて無理な話よ」


「でもっ……!」


「アオイちゃん、落ち着きましょう。ここにいるみんな、気持ちは同じですから」


 泣きそうなアオイの手をエリスが優しく包む。それによりアオイは少し落ち着きを取り戻す。


「でもテロリストってどーゆー事? しかも犯行声明とか言ってたし」


 みーこが話題を変える。これ以上、死傷者・行方不明について思い詰めた所で何かが変わる訳ではないからだ。すると彼女の質問に月音が答える。


「可能性は二つあるわね。一つは事件に便乗したテロリストがいた可能性。もう一つは政府が事実を隠蔽しているという可能性よ」


「政府が事実を隠蔽ってなんで?」


「天使なんて化物が存在してると公にしたらパニックになる可能性があるわ」


「確かにな。天使なんて得体の知れない化物よりも、テロリストの犯行にしておいた方が分かりやすいだろうな」


 今まででも天使との戦いがガス爆発や竜巻などに置き換えられていた。それの拡大版という事である。


「むむむ〜……ま、悩んだ所でアタシたちじゃどうしようも出来ないし、仕方ないかっ」


 みーこは少し頭を悩ませてから、答えを出すのを諦める。すると今度は弥勒が口を開く。


「他に気になる事は無かったか?」


「無いわね。どっちかと言うとネットの反応の方が気になるわ」


 麗奈はネットの反応を気にしている様だった。それは救世主チャンネルの動向にも影響するからだろう。


「確かに。アタシも後でそっちを調べてみるかなー」


「どちらにしても今日はもうお風呂に入って寝ましょう。みなさんも大天使との戦いで疲れているでしょう?」


「あぅ、そう言われると急に疲れが……」


 エリスの言葉に全員が今までの疲労を思い出した様でぐったりした表情をする。それから順番にお風呂に入って、その日はすぐに就寝するのだった。



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