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ヤンデレ魔法少女を回避せよ!  作者: 広瀬小鉄
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第二百六話 オキナワそのじゅう


 夜になりアオイと弥勒が持って来たゲーム機をテレビに接続する。そしてヨシヲカートを起動させる。


 この場にいるのは桐葉を除いたメンバーだ。彼女はバーベキューでお酒を飲んで、酔っ払ったため部屋で寝ている。


「ついにこの時が来たんだよッ!」


 アオイがカッと目を見開きながら宣言する。それに事情を知らないメンバーがきょとんとしている。そしてテレビ画面に映るヨシヲカートの映像を見て何人かが察する。


「ヨシヲカートですね!」「ヨシヲカート大好きっす!」「……ヨシヲカート久しぶりに見ました」


 主に反応したのは中学生組の三人だ。彼女たちはヨシヲカートを知っているらしい。しかし高校生組でヨシヲカートが分かったのは月音くらいだった。


「……フ、私はプロよ」


 彼女は髪をかき上げながらカッコつける。ヨシヲカートには自信があるのだろう。すると何も分かっていないエリスが疑問の声を上げる。


「みんなでゲームをするんでしょうか?」


「そう! ヨシヲカート対決! 一対一で戦って最強のヨシヲカート使いを決めるの!」


「おぉー! やるっす!」


 エリスの質問にアオイは食い気味で答える。ヨシヲカートが大好きな凛子が真っ先に参戦を表明する。


「へー、あんまゲームした事無いけど面白そうじゃん?」


「たまには良いかもね」


 普段、ゲームをやらないみーこと麗奈も頷く。こうして第一回ヨシヲカート対決が始まるのだった。


 まずアオイはゲームを知らないメンバーに操作の説明をする。エリス、みーこ、麗奈は実際にゲームを動かしながら操作方法を覚えていく。そして一通りの説明が終わった所でゲームがスタートする。なおトーナメントの組み合わせはアオイの独断と偏見により作られた。


 まず第一回戦は愛花vs弥勒となった。どちらも経験者の対決だ。愛花は野良犬のヨッシャー、弥勒は配信者のジュゲルを選んでゲームがスタートする。


「よしっ、ここでアイテム……!」


 まず飛び出したのは愛花だった。しかし手に入れたアイテムが微妙なものだったため、いまいちスピードに乗り切れない。


「ほいっと」


「ああ、前が見えない……!」


 後方にいた弥勒は相手の視界を邪魔するアイテムを使って愛花に攻撃を仕掛ける。それにより減速した愛花は弥勒に抜かれる。


 そこからはずっと弥勒がリードする展開が続き、逆転する事なく彼の勝利で終わる。


「がっくし……」


「勝った」


「第一試合は弥勒くんの勝ち! 後輩相手に大人気ないけど良い勝負だったよ!」


「一言余計だわ!」


 弥勒はアオイの言葉にツッコミを入れる。一応、真剣勝負という事で手は抜かなかったのだ。


 続いて第二回戦目はみーこと麗奈の対決となった。こちらは二人とも初心者同士の組み合わせにした様だ。結果としてみーこの勝利に終わった。


 そして第三回戦は小舟と月音が戦う事になった。月音はやる気満々である。そしてスタートと同時に月音が飛び出る。ちなみに月音が使っているキャラは相撲部屋から逃げ出した元力士のドンザル、小舟は自称プロデューサーのタツヲである。


「スタートダッシュが決まったわね。このままぶっちぎりよ」


 月音は自信ありげにそう言ってドンザルを器用に操作していく。彼女らしい無駄の無いコースどりである。


 しかししばらく走って違和感を覚える。後ろにいるはずの小舟が攻撃を仕掛けてこないのだ。その事に気付いてチラッと隣の画面を見る。すると彼女のカートは月音のカートの後ろにピッタリとくっついていた。


「……ま、まさか貴女……⁉︎」


「…………隙を見せましたね」


 月音が動揺して操作を乱した瞬間、小舟のタツヲが一気にアイテムを使って加速する。そして月音を抜き去る。そのままゴールへと駆け抜ける。小舟の勝ちだった。


「まさか……この私が負けるなんて……」


 月音は珍しく敗北した事にショックを受ける。ヨシヲカートには自信があったのだろう。しかし小舟の方が一枚上手だった。


 そして最後の第四回戦は凛子とエリスとなる。人数が九人のため主催者のアオイはシード扱いである。


「こんな感じで、えいっ……えいっ!」


「当たらないっす!」


 エリスが先行している凛子に攻撃を当てようとするものの、彼女はそれを器用にかわす。そのままあと少しでゴールという所まで来る。


「ふっふっふっ、これでアタシの勝ちっす!」


 凛子がドヤ顔で勝利宣言をした瞬間だった。エリスが放ったアイテムを避けた凛子のキャラがジャンプに失敗して水に落ちる。


「……あ」


「わーい、勝ちましたー!」


 第四回戦は凛子の一瞬の油断によりエリスの勝利に終わった。ドヤ顔でよそ見さえしなければ勝てただろう。


 そして準決勝が始まる。最初は弥勒とみーこの対決だ。こちらは至って見所の無い普通のレース展開で順当に弥勒が勝利する。


「あーあ、負けちった」


 そこからエリスと自称シードのアオイとの対決になる。こちらも先ほどの様なミラクルが起こる事もなくアオイの勝利で終わる。


「負けちゃいました……でも楽しかったです!」


 そして弥勒と小舟の勝負が始まる。スタート直後は拮抗した状態が続く。小舟は月音との試合の時とは違い、後ろにマークする戦法は使っていない。


「よしっ、アイテムゲット!」


 弥勒がゲットしたアイテムは敵の攻撃を防げるシールドであった。これにより戦いを有利に運べるだろうと彼は期待する。


 そして最後のコーナーに差し掛かった瞬間だった。小舟のキャラがアイテムを使って急加速する。そしてコース外を勢いよく走ってそのままゴールへと到達する。


「うお、負けた〜!」


「……最後のコーナーまで油断したらダメですよ」


「おぉー、さっすが小舟ちゃん! 強い!」


「アタシたちの秘密兵器っすからね!」


 小舟はゲームになってから若干態度がいつもよりも強気になっている。そして勝利した彼女に愛花と凛子が喜ぶ。


 そして決勝戦であるアオイと小舟の対決が始まる。アオイは陰キャのホーヘイを、小舟がSNS依存症のレイチーを選ぶ。小舟の方は今まで使ってきたキャラから変えた形となる。


「負けないんだよ!」


「(アオイが優勝したらただ自分用にシーサーの置物買っただけって事になるよな……)」


 力強く宣言するアオイにそんな事を思う弥勒。彼女がその事に気付いているかは疑問である。しかし弥勒もそれには触れず、レースがスタートする。


「とりゃあ、先に行くんだよー!」


「…………」


 アオイがスタートダッシュを決めて一番に飛び出す。それを小舟が追う形となる。しばらくその状態のまま進んでいく事になる。


「順調、順調……」


 あっという間に二周目が終わり、最後の周回へと突入する。相変わらずトップはアオイである。彼女はトップスピードのまま進んでいく。そして最後のアイテムが湧いている場所で加速装置をゲットする。


「よしっ、これで勝ちが……ってええ⁉︎」


 アオイがアイテムを使って加速しようとした瞬間、地面に置いてあったバナナを踏んでしまう。それにより彼女のカートはクラッシュする。バナナが置いてあったのは直前まで視界に入りづらい場所だった。


 クラッシュしたアオイを小舟が抜き去っていく。そしてそのままゴールへと辿り着く。優勝者は小舟となった。


「ま、負けた〜!」


「……コース取りは最初の二周で確認できたのでトラップを仕掛けておきました」


「そ、そんな罠が……⁉︎」


 小舟からトラップの解説をされて、自分とのレベルの違いに驚くアオイ。


「「「いえーい!」」」


 そして勝った小舟は愛花と凛子とハイタッチしている。まるで中学生組が勝利したかの様な雰囲気だ。


「小舟ちゃん、優勝おめでとう! チャンピオンにはこちらを贈呈します!」


 アオイは小舟を勝利を讃えて、トロフィーを渡すかの様な雰囲気で小さいシーサーの置物を渡す。それを小舟は受け取ってくすりと笑う。


「……可愛いです。今度、これをモデリングしてみようかな。ありがとうございます……!」


 小舟は渡されたシーサーの置物が気に入った様だった。こうして旅行二日目の夜、ヨシヲカート対決が終わったのだった。

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