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ヤンデレ魔法少女を回避せよ!  作者: 広瀬小鉄
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第百九十九話 オキナワそのさん


 ビーチには着替えを終えた少女たちが次々と集まっていた。そして最後のエリス、月音、みーこがやって来る。


「すいません、お待たせしました〜」


「……暑いわね」


「真打ち登場って感じ!」


 エリスはフリフリのついたオフショルダービキニを着ている。紫と白のカラーリングで可愛らしい。そして溢れんばかりのバストに弥勒は釘付けになりそうになるものの、慌てて目を逸らす。


 月音は薄いイエローの競泳タイプの水着を着ていた。弥勒としては競泳水着なのに色がイエローというのに違和感を覚えたが、可愛らしい事には間違いなかった。


 そして最後のみーこは以前、弥勒と一緒に買いに行って購入した水着を着ている。ツイストフロントタイプのビキニで、カーキをベースに一部ベージュが混じったカラーとなっている。彼女もエリス程では無いが、豊満なバストを活かすスタイルであった。


「エリス先輩は大人可愛いって感じですね」


「ありがとうございます! 一生懸命選んだんですよ?」


 弥勒はまずエリスに水着の感想を言う。それに彼女も嬉しそうな表情をする。次に月音の方を向く。


「ツキちゃん先輩も可愛いですね。意外性のあるチョイスも先輩らしいです」


「あら、ありがとう。私は常識に捉われないタイプなのよ」


 月音も表では散々、海は面倒とか言っていたがしっかりと水着の準備していたようだった。それを弥勒に褒められて満更でもなさそうな表情をしている。


「みーこも綺麗だな。シンプルなデザインが似合うのはやっぱり元が良いからか」


「さんくす! やっぱみろくっちに褒められると嬉しいぜぃ!」


 みーこは照れ隠しなのか語尾を変えてピースサインをしてくる。一緒に水着を選んだとはいえ実際の水着姿を見てもらうのはまた別問題なので、彼女も緊張していたのだろう。それがようやく解れた様だった。


「モテすぎるっていうのも大変そうね……」


 近くでチェアに座りながら飲み物を飲んでいた桐葉が呟く。娘たちから旅行に一人だけ男性がいると聞いて色々と心配していたのだ。女性の集団に男性が一人混じるのは果たしてどういう理由なのか。娘たちが悪い男に騙されているのではないか。


 そういった思いもあったため彼女は今回の引率を引き受けた。また弥勒という名前は娘たちとの会話で時折出て来ていた名前だったので、実際に会ってみたいとも思っていた。


 会った感想としては真面目な少年といった感じだった。ただ年齢にそぐわない落ち着きを感じさせるとも思った。桐葉は二人の娘を育てながらも精力的に仕事をこなしてきたキャリアウーマンだ。そのため人を見る目というのには自信があった。


 そんな彼女から見た弥勒の印象としては悪い人間では無いというものだった。少なくとも娘を騙している様なタイプでは無いと感じていた。そのため最初は気を張っていた今回の引率だが、今は少し気持ちが楽になっていた。


「よーし、泳ぐぞー!」


「アオイ先輩、アタシも行くっす!」


「おー、付いてきたまえ、後輩!」


 そんな桐葉の思惑は露知らず、海を一番楽しみにしていたアオイが水の方へと走り出す。それに凛子がついて行く。部活は違えど同じ体育会系のノリに生きてる二人は瞬く間に仲良くなる。


「とりゃあー!」


「やぁー!」


 バシャバシャという音がして二人が海へと入って行く。


「あー、凛子ちゃん……準備運動してないし」


 それを見ていた愛花がマイペースに準備運動を始める。簡単な屈伸などで身体を解していく。愛花も同じ体育会系の部活に所属しているが、彼女はどちらかと言うと落ち着いていた。


 弥勒も愛花を見て準備運動を始める。彼の肉体スペック的には準備運動など必要無いのだが、その場の雰囲気というやつである。


「よし、入るか」


 弥勒はそう言ってパーカーを脱いでチェアに引っ掛けておく。ついでにサングラスを外す。すると周りのメンバーの視線が自分に集中している事に気付く。


「な、なんだよ……」


「匂いを嗅いでも良いかしら?」


「ダメに決まってんだろ!」


 その視線にたじろぐ弥勒であったが、月音の言葉には鋭いツッコミを返す。提案を却下された月音は残念そうにしている。


「あのぉ……ハグでしたら大丈夫でしょうか?」


「いやそれもダメです」


「……しゅん」


 ゆっくりと申告して来たエリスのお願いも却下する。急に言ってこようが、ゆっくり言ってこようがダメなものはダメなのである。


「私とエリス先輩への対応が違うわね。差別かしら?」


「日頃の行いです」


「……くっ」


 月音はキツい断られ方をした自分と、柔らかく断られたエリスとの差を指摘する。しかし弥勒にズバッと言い返されてしまう。


「せんぱーい、それより早く海へ行きましょうよー!」


「そうそう、せっかくだし海を楽しまなきゃ損よね」


 愛花と麗奈に左右の腕をそれぞれホールドされる。まさに両手に花というやつだろう。世の男性たちが見たら血涙を流しながら悔しがるレベルである。


 この二人は母親が近くにいるというのに、全く気にせずにアピールしてくる。それに弥勒は驚いてしまう。そして二人に引っ張られてそのまま波打ち際まで連れて来られる。


「冷たーい! 気持ちいい!」


「やっぱり最初は冷たく感じるわね」


 早速、愛花は水の中へと入っていき、それに麗奈も続く。気温が高いため最初は冷たそうにしていたものの、すぐに気持ち良さそうな表情になる。


「せんぱい、喰らえっ!」


「うおっ、冷たっ!」


 それをボーッと眺めていた弥勒は愛花に水を掛けられる。いきなりだったため驚いて声が漏れてしまう。それから弥勒もようやく海へと入る。


「気持ち良いな!」


 場所がオキナワというだけあって外の気温はかなりの暑さとなっている。そのため海に入ると身体が冷やされるのを感じる。


「ていうかアオイはどこまで行ってんのよ」


「凛子ちゃんと二人で泳ぎまくってるね〜」


 先に入ったアオイと凛子はすでに泳いで遠くまで行っていた。弥勒はそんな二人に聞こえるか分からないが一応、注意をする。


「おーい、あんまり沖に行きすぎるなよー!」


 するとアオイらしき方の人影が泳ぎながら片手を上に上げる。恐らく了解という意味なのだろう。それを見て弥勒も一安心する。


「はい、どーん!」


 すると急に後ろから誰かに乗り掛かられる。背中に大きな胸が当たっている感触があった。そのため弥勒はそれが誰かすぐに分かった。


「みーこ⁉︎」


「ふふん、抜け駆けなんて許さないし〜! ほれほれ!」


「あはは! おま、危なっ……!」


 弥勒に乗り掛かったまま、みーこは彼の脇腹をくすぐる。それに弥勒は笑い声を上げながらもなんとかバランスを保つ。


「フー……」


「うひゃあ!」


 バランスを崩した二人はドボーンと海に倒れ込む。くすぐりだけだと思っていた弥勒は耳に吹きかけられた息に驚いてしまったのだ。


 そして二人は水の中から出て来る。先ほどまでは腰までしか濡れていなかった弥勒とみーこは全身濡れている。


「ぷはぁっ! いきなりあぶねーだろ」


「ふふふ、そんな事言ってアタシのおっぱい楽しんでたくせに」


「……まさか」


 みーこの指摘に弥勒は視線を逸らす。それは既に答えを言っているようなものだが、彼女は追及しない。その代わりしてやったりという顔をしている。


「むー! 先輩がデレデレしてる! やっぱ胸か、ちくしょー!」


「落ち着きなさい。ワタシたちには他にない姉妹属性があるから慌てる必要ないわ」


 そんな二人のイチャコラを見せつけられた愛花が文句を言う。そしてみーこの豊満な胸を恨めしそうに見つめている。そんな彼女を麗奈が諭す。ただ彼女の方もこめかみがピクついている。内心、穏やかでは無いのだろう。


「や、やっぱり夜島先輩は凄い人気だね……」


「何かほんとに漫画の主人公って感じだよねー」


 いつのまにか近くにやって来ていた小舟がそんな感想を漏らす。それに愛花が頷く。彼女から見たら弥勒はまるで漫画や小説の主人公のようだった。多くの美少女に囲まれ、悪い敵を倒す正義のヒーロー。


「よーし、私も負けないぞー!」


 そう言って愛花は他の少女たちに負けじと再び弥勒へと突撃していくのだった。

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