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ヤンデレ魔法少女を回避せよ!  作者: 広瀬小鉄
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第百八十九話 海へのお誘い前編


「わざわざご足労いただきありがとうございます」


 ソファに腰掛けながらエリスは弥勒に向かってそう言った。それからカップに入っている紅茶を一口飲む。この時期だというのに暖かい紅茶を飲んでいる。部屋や屋敷が涼しさを保っているからだろうか。


「いえいえ。それにしても急にどうしたんですか?」


 弥勒はエリスの家まで呼び出されていた。前の日の夜に時間を取れないかと連絡があったのだ。彼としても特別予定は無かったため快諾して今に至る。


 さすがに何度も来ているので、弥勒としても彼女の住む豪邸に入るのは緊張しなくなった。お手伝いさんたちにも顔を覚えられているので、不審者扱いされる事もない。


「実は夏休み中に皆さんでどこか遊びに行きたいと思ってまして。そちらのご相談です」


「ああ、なるほど。それは皆喜びますよ! せっかくの夏休みですし」


「ですよね! 良かったです……みろーくんに反対されたらどうしようかと思いました」


 エリスの話は夏休み中に弥勒や魔法少女たちで遊びに行こうと言う提案だった。弥勒がそれに賛同したので彼女のテンションは上がる。最も夏休み前からそわそわしていたので、いずれ何かしらのイベントに誘って来るだろうと全員分かっていたが。


「何かやりたい事とかあるんですか?」


「わたくしは国会議事堂とか都内巡りが良いかと思ったんですが……皆さんの反応が……」


「ああ……夏ですし、外を色々観て回るのは暑いですからね」


 国会議事堂という言葉を聞いて弥勒も思わずギョッとしてしまうが、何とか表情には出さずに話を続ける。都内巡りだと真夏の炎天下の中、外を歩き回る可能性があるので弥勒としてもあまり乗り気にはならなかった。


「確かにそう言われるとそうですね……ならやっぱり海が一番でしょうか?」


「まぁ定番ではあると思います」


 一発目の提案がトリッキーだったものの、次の提案は海という王道なものだった。それに弥勒も頷く。


「なら海にしましょう! 実はオキナワに別荘があるんです。そちらで良ければ皆さん、招待しますよ」


「それは何というか……豪華すぎるような……」


 オキナワにある別荘という言葉に弥勒は呑まれる。彼女はなんて事ないように招待すると言っているが、かなりの大事である。


「それとも国外の方が良かったでしょうか……?」


「いやいや! オキナワでも十分過ぎです!」


 弥勒は海外の話まで持ち出してくるエリスを慌てて止める。オキナワに行くだけでも大変なのに、国外へ行く話が進んでしまえば彼ではどうなるか予想もつかない。


「そうですか。それでしたら飛行機などのチケットの手配はこちらでしておきますね」


「ええと……本当にそんな別荘なんかに俺らを呼んじゃって良いんですか?」


「ふふふ、もちろんです。むしろ皆さんに使ってもらわないと、最近は家族もオキナワの別荘には行ってないので」


 家というのは無人の状態だと劣化していきやすい。もちろんそういった管理はエリスの家の人間が行っているが、やはり実際に使う機会が多いに越した事は無い。そのためエリスとしては定期的なメンテナンスも合わせて出来るからラッキーといった感覚である。


「他のメンバーの日程が合えば俺としては是非参加したいです」


「良かったです! せっかくなら愛花ちゃんたちも呼びましょうか」


 弥勒の参加が決まったためエリスは顔を綻ばせる。それから魔法少女たちだけではなく、愛花たちも誘おうと提案してくる。


「彼女たちはまだ中学生ですからね。その辺りはご両親の許可をきちんと取れたらって感じですかね」


 自分もまだ高校生である事を棚に上げて、真っ当な意見を言う弥勒。それにエリスも頷く。彼女としても無理強いをするつもりは無かった。


「もちろんです。ただせっかくの機会ですから、皆さんで楽しめたら嬉しいです」


「そうですね」


 弥勒も自分に出されていた紅茶を一口飲む。こちらも温かいものだが、しばらく冷房の効いた部屋にいたからか熱さは気にならなかった。


「今回は日帰りは難しいので、お泊まりになります。なのであのパジャマを持ってきていただけると……」


「もちろんです。もし愛花ちゃんたちが参加する場合にはどうするんですか?」


「彼女たちの分も作ります! むしろ今からそれが楽しみです! 続パジャマパーティーですね!」


 皆で同じパジャマを着てお喋りしている所を想像したのか、彼女は楽しそうにそう言う。魔法少女五人に中学生組が三人、おまけに弥勒まで同じパジャマを着ているとなるとなかなかの光景だろう。


「愛花ちゃんたちには麗奈を通して確認してもらいましょう。俺の方は比較的どこの日にちでも融通きくと思います」


「分かりました。候補日をいくか考えたら連絡しますね。高校最後の夏に素敵な思い出が作れそうです!」


 エリスには学内でも友人が多かった。しかし他の魔法少女たちや弥勒のように対等な付き合いというのは少なかった。そのため気兼ねなく一緒にいられる友人というのが嬉しいのだろう。


「ちなみに……み、みろーくんは……み、水着を自分で履くならどんなデザインが良いとかありますか?」


 話が一区切り付いたと思ったらエリスが弥勒に水着について質問してくる。その事に彼は冷や汗をかく。


「つい最近、新しい水着を買ったんですよね。丁度良いタイミングだったので良かったです」


「あ、そうなんですね……」


「(あぶねー、今回ばかりはみーこに感謝だな……)」


 弥勒が水着を既に持っていると言うとエリスは少し落ち込んだ表情をする。彼の答えによってはふんどしやブーメランパンツを作るつもりだったのかもしれない。


 一方で弥勒の方は事前に情報をくれたみーこに心の中で感謝する。つい先日、彼女と一緒に新しい水着を買いに行ったばかりだ。もし数日ズレていたらエリスからの提案を断れず、際どい水着を着る事になっていたかもしれない。


「でしたら今回は皆さん共通のビーチサンダルを買うというのはどうでしょう?」


 弥勒の水着を作れそうに無いと悟ったエリスは別の提案をしてくる。彼女としてはせっかくの機会なので皆でお揃いのものを身につけて仲間感を出したいのだろう。


「良いですね。ビーチサンダルならカラーバリエーションも多そうですし」


 ビーチサンダルなら余程のブランド物を買わない限りはそれほど高く無い。弥勒としてもあまり懐が痛まないため、彼女の意見に賛同する。


「ビーチサンダルは俺の方で探しておきますよ」


「まぁ、ありがとうございます!」


 エリスに探させると強制的に値段が跳ね上がりそうだったため、ビーチサンダルについては弥勒が受け持つ。


「海のお話はこれで大体まとまりましたね。でもわたくしたちが旅行に行っている間、天使が出たらどうしましょう……?」


 そこでエリスがふと思い出した様に言う。弥勒たちがこの街からいなくなってしまえば、天使たちが出現した際に対抗できる人間がいなくなってしまう。


「あー、そうですね……多分、天使は俺らがいる所に来るから大町田市は問題無いと思います」


 弥勒はやや言葉を選びながら発言する。原作では海に行った主人公たちの所に天使が出現していた。弥勒の推測としては大町田市だから天使が出現するのではなく、天使の天敵となりえる魔法少女たちがいる場所に出現している。そう考えていた。


 ただあくまでこれは弥勒の推測である上、原作知識が出所のため彼女たちに詳しい理由は説明できない。そのため曖昧な言い方になってしまっているのだ。


「そうなんですか……? でもそれなら安心して海へ行けますね!」


 エリスは弥勒の発言にツッコむ事は無く、海へ行ける事を純粋に喜んでいる。その事に彼もホッとする。もしこれが麗奈や月音だったらそう簡単にはいかなかっただろう。


「何だか安心したらお腹が空いてきました。そろそろお昼にしましょうか」


「おぉ! 今回のランチは何ですか?」


 話が落ち着いたところで食事へと切り替わる。エリスの家のご飯は何でも美味しいので弥勒としては期待大だった。


「今回は和食です!」


 エリスは自慢げにそう宣言するのだった。

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