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ヤンデレ魔法少女を回避せよ!  作者: 広瀬小鉄
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第百七十五話 厄介な相手


 弥勒が夢の世界への侵入に成功した頃、麗奈は倒れた弥勒の身体を見守っていた。幸いにも周囲に霊型の天使の姿は無かった。


 すると近くのビルからアオイが飛び降りて、麗奈のそばへと駆け寄ってくる。


「何でセイバーが倒れてるの⁉︎ しかも見た事ないフォームだし!」


 事情を知らないアオイは弥勒が地面に倒れている姿を見て驚きの声を上げる。そんな彼女に麗奈は簡単に事情を説明する。


「セイバーはこの新フォームを使って夢の世界に行ったのよ。だからワタシはその間、この身体を見張ってるわけ」


「そ、そうなんだ。怪我とかじゃなくて良かったよ……」


 アオイは弥勒が倒れている理由が分かり一安心する。それから何かに気付いた様に麗奈の顔をジッと見つめる。


「……セイバーの身体に何か変な事してないよね?」


「………………してないわ」


「絶対嘘だぁ!」


 あまりにも返答までに間があった事でアオイは麗奈が何かした事を確信する。そしてそれを問い詰める。


「何をしたの⁉︎」


「いや別に、ちょっと見ただけよ……」


「メリーガーネットだけズルい! あたしも見たい!」


 アオイはそう言って倒れている弥勒の下半身の装備を僅かに持ち上げて中を覗く。そしてゴクリと唾を飲み込む。


「はわわ、とんでもない武器を隠し持ってたんだよ……」


 顔を真っ赤にしながらチェックを終えたアオイ。好きな相手が隠し持っていた特大の武器に彼女も覚悟を決めた様な顔をする。


「でも女は度胸!」


「ワタシも驚いたわ。これは新しいグッズを作らないとね……」


「あたしのも一つお願いします!」


 こうして二人はガッチリと握手をする。ちなみにこの会話は全てアンバードローンにより他の魔法少女たちにも共有されていた。


『そこも今度、検査が必要ね』


『麗奈、アタシのもよろしく!』


『その、可能であれば……わ、わたくしのも……』


 こうして弥勒が知らない間に余計な情報を交換する魔法少女たちであった。そんな会話をしている間も麗奈は一応、周囲の警戒は怠らない。


 すると倒れているはずの弥勒の指がピクリと動く。それを見て嫌な予感がした麗奈はアオイを抱く様にして飛び退く。


 ブォン、とついさっきまで麗奈たちが立っていた場所に大鎌が通り過ぎる。それに遅れながらアオイも反応する。


「えっ⁉︎ セイバー⁉︎」


 倒れていたはずの弥勒の身体がゆっくりと立ち上がる。仮面をしているからか、その表情は窺う事が出来ない。しかし明らかに普通では無かった。


「ガーネットペタル!」


 麗奈がそう叫んで花弁によるシールドを展開する。そして再び動き出した弥勒の身体により振るわれた大鎌とシールドがぶつかる。


「何が起きてるの……⁉︎」


「そういうこと……だったらきちんと言ってから行きなさいよ……!」


 状況が飲み込めていないアオイとは裏腹に、麗奈の方は状況を把握した様だった。そしてここに居ない弥勒に悪態をつく。


「あんた、霊型の大天使ね⁉︎」


『ほう、我の事が分かるか』


 麗奈が弥勒の身体を操っている存在を霊型の大天使だと断定する。それを相手も肯定する。どうやら霊型の大天使は自分の正体を隠すつもりは無い様だった。


「霊型の大天使がどうしてセイバーの身体に……⁉︎」


『招いた覚えは無いとは言え、我が領域に足を踏み入れたのだ。ならばこの身体を我が扱えても不思議ではあるまい』


 弥勒の精神は夢の世界へと行っている。その領域の主である霊型の大天使ならば、空になった弥勒の身体を操る事など造作も無い。


「そんな……!」


 霊型の大天使の話を聞いたアオイは青ざめる。しかし麗奈の方はいつも通りである。それは弥勒が夢の世界へ行く前に言っていた言葉が原因である。


 「俺が夢の世界に潜れば分かるだろう」と弥勒は言っていた。つまり彼は自らが夢の世界へと向かえば身体が乗っ取られる事が分かっていたのだろう。しかしそれを口に出せば反対される可能性があった。だから彼はあえて言葉を濁していたのだ。


「ガーネットローズ!」


 麗奈は大天使を捕まえようと蔓の鞭を放つ。相手が弥勒の身体を使っているからという配慮は無い。


『群青の襲撃者』


 大天使はそう呟いてフォームを変える。そして双剣で蔓を斬り裂くと一気にアオイへと接近する。そして凄まじいスピードで双剣を振るう。


「くっ……!」


 突然の出来事に頭が付いていって無かったアオイは咄嗟に回避行動をとる。しかし完全には避けきれずにダメージを負う。


「ガーネットフラッタリング!」


 その隙に麗奈が花びらの大群を差し向ける。花びらを双剣で斬り裂くのは難しい。そう考えてのことだった。


『灰色の騎士』


 そんな攻撃を見て大天使はまたしてもフォームを変える。灰色の騎士へと換装してシールドを展開する。それを花びらたちへと叩きつける。


 激しい音がして花びらたちが破壊される。シールドの面を活用した攻撃に花びらが耐えられなかったのだ。


「インディゴパンチ!」


 今度はアオイが魔力を纏った拳で殴りかかるものの、最小限のサイズでシールドを展開され受け流される。そしてそのまま懐に入られ、膝蹴りを腹部へと入れられる。


「がはっ……!」


 その衝撃にアオイは吹き飛ぶ。そして後ろの建物に衝突する。麗奈は思わずアオイの無事を確認する。


「メリーインディゴ……!」


「だ、だいじょぶ……」


 彼女の返事に麗奈は安心する。しかしそこが隙となり、大天使の接近を許してしまう。既に相手は剣を振りかぶっている。麗奈は急いでシールドを展開しようとするものの、今からでは間に合わない。


『アンバーレーザー』


 振り下ろされたロングソードの側面にレーザー攻撃が当てられる。それにより攻撃の軌道がズレる。麗奈は飛ぶ様にして転がる。そして何とか剣を回避する事に成功する。


 麗奈を助けたのはメリーアンバーが配置していたドローンから放たれたレーザーであった。そしていつの間にか麗奈たちのいる周辺には多くのドローンが配置されていた。


 大天使が麗奈を再び狙おうとした瞬間に、今度は背後からいくつもの星形の刃が飛んでくる。それを大天使は背中に目でもついているかの様にかわす。


「ちょっ、二人ともだいじょぶ⁉︎」


 やって来たのはみーこだった。霊型の天使たちがほとんど居なくなったため月音はドローンを先行させた。それに続く様にみーこもこちらへとやって来たのだ。


『…………』


 攻撃を二度も邪魔された大天使はドローンとみーこを睨んでいる。


「はぁぁ!」


 すると再びアオイが大天使へと殴りかかる。先ほどとは異なり、ある程度威力を落として咄嗟の回避などが出来る様に余裕を残している。


 さらにみーこの姿を大天使から隠すように戦っている。これによりみーこは敵から見え辛い状態で遠距離攻撃を放つ事ができる。ただし彼女の方も相手が見辛くなってしまっているのだが。


「スプルースロケット」


 そのため彼女は範囲攻撃を選ぶ。これなら相手の姿が見えなくても問題ないと判断したのだろう。


『藤紫の支配者』


 大天使はそう呟いて姿を変える。アオイの攻撃を避けながら手を空中へとかざす。


『支配』


 するとその掌から紫色の電気のような物が空中へと伸びていく。すると先ほどまで大天使に向かって飛んでいたロケットやドローンたちが支配される。


『返すぞ』


 そのままロケットはみーこの元へとUターンさせられる。彼女はそれを慌てて避ける。そしてドローンの方はお互いにレーザーをぶつけ合って消滅させられる。


「強い……」


 その姿を見て麗奈が冷や汗を流す。弥勒がセイバーとして強いのはもちろん知っていた。しかし敵に回すとこれほど厄介だと思っていなかったのだ。


「かなり厳しいみたいね」


 空中からジェットパックを使った状態で月音が現れる。隣にはエリスとヒコもいた。彼女たちは静かに地面に着地する。


「せ、セイバーさんが敵になるなんて……」


「敵に回すと厄介でやんすね〜」


 大天使に乗っ取られた弥勒を見てエリスとヒコもそれぞれ感想を述べる。状況についてはドローンを経由して把握していたが、聞くのと見るのとでは抱くイメージが大きく変わってくる。


「でもこれで魔法少女は全員揃ったわ。ここから反撃よ!」


 麗奈は他のメンバーにも聞こえる様に、そう力強く宣言するのだった。

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