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ヤンデレ魔法少女を回避せよ!  作者: 広瀬小鉄
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第百七十一話 駅前


 待ち合わせの大町田駅へと向かう途中、急に弥勒の持っていた天使コンパスが鳴り出した。


「天使か……⁉︎」


 慌てて天使コンパスを確認すると、そこには『霊』と記されていた。それを見て弥勒は大天使が動き出したのを感じ取った。


「まさか……」


 するとそれからすぐに弥勒のスマホに麗奈たちからもチャットが立て続けにやって来る。


『霊型の天使よ! 場所は大町田駅方面!』


『大変だよ、天使出現!』


『アタシは急いで大町田駅に向かう!』


 弥勒はそれを読んで自分も早く大町田駅へと向かわなければと思う。ただ現在は電車の中のため下手に身動きは取れない。


 また天使コンパスが鳴り響いたため周りからの注目を集めてしまった。そのため弥勒は車両を移動する。


 幸い、弥勒の最寄駅から大町田駅までは十分程度なのですぐに到着する。周りに迷惑にならない程度のスピードで急いで改札を出る。


「(駅に入って来る人間が多いな……)」


 日曜日で人出が多いとはいえ、改札からホームへと駆け込んでくる客の数が明らかに多かった。それに弥勒は嫌な予感がした。


「弥勒くん!」


 すると改札から出たところにアオイが立っていた。弥勒はすぐさま状況の確認をする。


「どうなってる?」


「それが街中にいる人たちが急に倒れ始めて……それに気付いた人たちが我先にと逃げ出してるの!」


「昏睡……やっぱり大天使なのか……⁉︎」


 嫌な予感が的中した弥勒は苦虫を噛み潰した様な表情をする。駅へ駆け込んでくる人たちの数は徐々に増えている様にも見えた。つまりそれだけ騒ぎが拡大しているという事だろう。


「他のメンバーは⁉︎」


「麗奈ちゃんは愛花ちゃんたちを探しに行った! あとのメンバーは大天使を探してる!」


「なら俺たちも大天使を探すぞ!」


「うん!」


 弥勒たちは急いで駅ビルから出る。そして外の状況を確認する。すると駅前の通りには倒れている人間が何人もいた。弥勒はすぐに倒れている人に近寄って脈を確認する。


「恐らく眠ってるだけだろう……」


 呼吸も脈拍を安定している。少なくとも弥勒にはそう感じられた。彼も医療の知識がある訳では無いので、あくまでも素人目での判断ではあるが。


「大天使の仕業だよね……」


「ああ。完全に先手を打たれた……!」


 弥勒たちが前提の間違いに気付いたのが、昨日だった。幽霊騒動を弥勒たちが発見したのではなく、大天使によって発見させられたという事に。そこで今度はこちらから仕掛けようと準備していたが、結局大天使に先を越されてしまった。全て後手の対応となってしまっている。


「出来れば倒れてる人たちを安全な場所に運びたいが……それは難しそうだな」


 弥勒たちが今いる通りは車がほぼ通らない歩行者天国の様な場所だが、全てがそうなっている訳では無い。出来れば危険そうな場所で倒れている人たちを避難させたかった。しかしそれをするには弥勒たちではあまりにも人数が少なすぎた。また戦力を全てそちらにさくわけにもいかない。


「とりあえず俺たちも変身しよう……」


「わかった……!」


 弥勒たちは物陰に隠れて素早く変身を済ませる。彼は灰色の騎士へと姿を変える。それから再び通りへと戻る。


 すると彼らの前に見覚えのあるドローンが飛んでくる。そこから月音の声が聞こえて来る。


『大天使の行方は分からないけど、霊型の天使たちが出現し始めてるわ』


「メリーアンバーたちはどこにいるんだ?」


『私とメリーパンジーは横濱線側の駅前にいるわ。メリースプルースには周辺の探索に出てもらってる』


「俺たちは大田急線側の大町田駅にいる。そっちを中心に天使を撃退しつつ、大天使の捜索をしていく!」


 大町田駅というのは二つ存在している。一つが弥勒が登校に使っている大田急線上に存在している大町田駅。そしてもう一つが横濱線上に存在している大町田駅である。二つの大町田駅は歩道橋で繋がっており、その通りには商業施設がいくつか存在していた。


 弥勒たちがいるのは大田急線側の駅を出た所にあるストリートである。こちらは様々なお店が並ぶ、商店街のような通りである。


『分かったわ。それとメリーガーネットは愛花たちを避難させているわ』


「えっ……⁉︎ 愛花ちゃんたちも倒れたの……⁉︎」


 月音の言葉にアオイがショックを受けた様な表情をする。自分と面識のある人物が倒れたと聞かされればそうなるのも仕方ないだろう。


『倒れている人間を確認したけど眠ってるだけよ。だから私たちが大天使を倒せば問題ないわ』


 月音の診断に弥勒も安心する。恐らく昏睡しているだけだと思いつつ確証は無かったため彼としても不安だったのだ。


『それじゃあ何かあったら声を掛けてちょうだい』


「ああ、分かった」


 そう言って月音からの声が途絶える。ドローンは弥勒たちのすぐそばに控えているので、声を掛ければ彼女にも届く様になっている。


「絶対に大天使を見つけ出さないと……!」


「とはいえ天使コンパスもこの状況じゃ役に立たないな」


 弥勒が天使コンパスを見てみると「霊」という文字は変わらないものの針がぐるぐると回っており、敵の正確な居場所は分かりそうに無かった。


 現在、大町田駅周辺には複数の霊型の天使たちが出現している。そのため天使コンパスが示す天使の居場所というのが安定しないのだろう。


「天使がいた!」


 アオイが近くの建物にいる霊型の天使を見つける。そこに居たのは一体だけで獲物を探すように周りを見渡している。


「行ってくる!」


 そう言ってアオイは飛び上がり、天使との距離を詰める。魔法少女の中でも彼女のスピードは飛び抜けている。あっという間に天使に接近して、魔力を込めた拳を振るう。


「muu……」


 しかし霊型の天使はストンと身体を下に落とすことでそれを回避する。物体を透過できる霊型の天使にしか出来ない手段である。


「……っ!」


 そして再び屋根の下から現れた天使をアオイが慌ててかわす。そして彼女は弥勒へと視線を向けてくる。


「この天使はあたしが倒すから! セイバーは先に行ってて!」


「分かった! もし大天使がいたら無茶はするなよ!」


 彼女の言葉に弥勒も先へ進むのを決める。アオイは大天使と一対一で殴り合えるレベルまで到達している。戦いづらい霊型の天使とは言え、今更通常の天使に遅れを取る事はないと彼は判断した。


「どっちだ……」


 弥勒は通りを先に進むものの駅前は栄えているため、どこに大天使がいるか予測が付かなかった。さらに大天使が大島日菜乃に憑依していた場合、彼女の顔を知らない弥勒は不利となる。


 そこで弥勒は真っ直ぐ進む事にした。今いる場所を右へ進むと横濱線の大町田駅へと繋がっている。そちらには月音たちがいる。そう考えると選択肢は真っ直ぐか、左側である。お店が並んでいるストリートはこのまま真っ直ぐなので、そちらの方が可能性が高いと踏んだのだ。


 弥勒の周りには走って逃げている人たちも多い。ただ騒動が起きて少し経っているからか逆走しても問題ないレベルには落ち着いている。


 そして少し進んでいくと、弥勒の視線の先に愛女の制服を来た少女の後ろ姿があった。愛女の制服は緑色のセーラー服のため分かりやすかった。そして弥勒に背を向けているという事は逃げ惑う人々から逆走しているという事だ。


「待て!」


 弥勒はその少女に声をかける。相手が大天使だと確証があれば声をかけずに斬り掛かる事もできたのだが、後ろ姿だけでは判別出来なかった。


 呼び止められた少女がこちらを振り向く。その瞬間、弥勒の背筋にゾクっとした悪寒がはしる。彼はとっさに左側へと避難する。


 するとつい先ほどまで弥勒がいた場所を何か魔力の塊の様なものが通り抜けていった。彼はそれを見て難しそうな顔をする。


『流石にこの程度は避けるか……』


 少女の姿をした霊型の大天使はそう呟く。そして視線を弥勒へと向ける。その瞳には感情というものが宿っていない様に彼には見えた。


「お前が霊型の大天使か?」


『その呼び方は適切ではない。何故なら我には名前が無いからだ。我が主は我らに名前を授けては下さらなかった』


 霊型の大天使はあくまでも無感情に、無表情にそう言った。

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