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ヤンデレ魔法少女を回避せよ!  作者: 広瀬小鉄
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第百六十八話 幽霊の居場所


 土曜日になり弥勒は大町田駅にあるファミレスへと来ていた。一緒のテーブルに座っているのは麗奈と愛花、みーこ、ヒコである。


 愛女での期末考査も終わったという事で一旦、報告のために集まる事にしたのだ。現地調査員として愛女に張り付いていたヒコも含めて。


「とりあえずテストお疲れ様」


「ありがとうございます! 今回はバッチリいけた気がします!」


「あんたは毎回そう言ってるけどね」


 愛花はテストに手応えがあった様だ。しかしそれを麗奈が鼻で笑う。愛花は姉と違って成績優秀という訳では無いらしい。


「今回こそいけてるから大丈夫!」


「愛女も火曜日から金曜日がテストだったのか?」


「いえ、うちは水曜日が中日で休みになってて月火木金でテストです」


「そんなパターンもあるのか……」


 弥勒は自分の学校とは全く違った方式に関心する。一夜漬けタイプの生徒なんかは中日があるか無いかで点数も大きく変わってくるだろう。


「中日は戦争ですよ! 後半戦に向けての最後のチャンスですからね!」


「一夜漬けはよろしくないぞ〜」


 そしてどうやら愛花は一夜漬けタイプらしく中日にはやる事が山盛りの様だった。みーこはそれを聞いて愛花をやんわりと注意する。


「それでヒコの方はどうだったんだ?」


「全教室でブレイクダンスを踊ったでやんす!」


「いやそういう報告じゃなくて……」


「深夜の学校で妖精がブレイクダンスとか想像したらちょっとウケるし」


 弥勒は本題に入るためにヒコへと話し掛ける。しかし当のヒコはとんちんかんな返事をしてくる。それには彼も困り顔となってしまう。みーこの方は楽しそうに笑っているが。


「天使は見つけたかって聞いてんのよ!」


「ああ、そっちでやんすか。全然見つけてないでやんす。むしろ夜の学校は静かなもんだったでやんすよ」


 麗奈の指摘にヒコはようやく何を聞かれているか理解する。そして見張りの結果がどうだったかを報告する。しかしそこにも芳しい成果といったものは見受けられなかった。


「夜の校舎は静か? 昼の方は違ったのか?」


 ヒコの言い方に疑問を覚えた弥勒が尋ねる。するとヒコは少し悩んだ様子を見せてから答える。


「うーん、生徒の中には天使と接触した残滓みたいなのが確認できる人たちもいたでやんす。ただ残滓があっただけで何かされてるって感じじゃ無かったでやんす……」


「幽霊騒動の被害者が思ったよりもいるって事か? 天使の残滓が確認できる生徒の数は増えていってる感じなのか?」


「いや増えてはいないでやんすね。むしろ日にちが経って減ってるでやんす」


 ヒコの言葉に頭をひねる弥勒。つまり幽霊騒動にあった生徒はそれなりにいるが、現在はそれが減少傾向にあるという事だろう。


「新しく天使と遭遇したっていう生徒はいない感じ?」


「それは無いと思います。今週はテスト期間だったので尚更です」


「うーん、そっか」


 みーこの疑問に愛花が答える。テスト期間中は通常授業が無いのは当然として部活動も禁止されている。そのため生徒たちが夜遅くまで学校に残る事はない。その分、教師も通常時より帰宅が早くなる。


 また幽霊騒動の噂自体は校内でかなりの人間が口にしていた。つまりはそれだけ興味を持っている人間がいると言う事だ。そんな状況で新しい事件が起きれば、その噂は愛花たちの元にも入ってくるだろう。


「なら愛女での幽霊騒動は落ち着いたって考えて良いのか……? なんか俺らが来た途端に沈静化した感じだな」


 前回の調査から引き続き何も結果が得られなかった事に弥勒は疲れを見せる。するとオレンジジュースを飲んでいたみーこがパッと顔を上げた。


「みろくっち、今なんて言った?」


「ん? 愛女での幽霊騒動は落ち着いたって……」


「違う! そのあと!」


 みーこの真剣な表情に弥勒は驚きながらも自分で言った台詞を思い出す。


「俺らが来た途端に沈静化した感じって」


「それだ!」


 みーこは何か分かった様だ。全員が彼女に注目する。ヒコも真面目な表情をして彼女を見つめている。


「それってどう言う意味だ?」


「アタシ達は愛花ちゃん達から幽霊騒動の話を聞いて愛女に天使がいると思って調査を始めた。これは良いよね?」


「ええ。その通りよ」


 みーこがまず前提の確認する。事の発端は愛花達が話していた幽霊騒動である。


「もしそれが大天使の狙いだったら? アタシ達はまんまと大天使に誘導されて何も無い愛女をずっと捜索してたって事になるじゃん?」


「何のためにですか?」


「それはもちろん、アタシ達が愛女に注目してる間に他の場所で勢力を伸ばすためでしょ。つまり最初の幽霊騒動自体がアタシ達を呼び込むための布石だったって訳」


「なっ⁉︎ そこまで考えられてたっていうの⁉︎」


 みーこの仮説に麗奈が驚きの声を上げる。彼女の説明通りなら幽霊騒動は弥勒たちを愛女へ誘き寄せるために仕組まれた罠だったという事になる。


「ならもう大天使は全く別の場所にいるって事か?」


「多分ね。でもさ、一つ疑問があるんだけど……」


「疑問?」


「うん。霊型の大天使は夢の世界にいるんでしょ? だったらどうやってこっちの世界に干渉してる訳?」


 弥勒はその言葉に考え込む。彼の予想としては愛女を中心に霊型の大天使の領域があり、そこから学校の生徒たちに干渉していると考えていた。


 原作では夢の世界にいて動き回っているイメージは無かった。そのためどこか固定の場所を根城にしていると考えていたのだ。


「自分の領域を作ってそこに近付く人たちに干渉してるんじゃないのか?」


「アタシも最初はそう思ってたんだけどサ。場所じゃなくて人に憑いてるって事は無いの?」


「は……?」


 みーこの予想外の指摘に弥勒は固まってしまう。そして彼女が言った事をゆっくりと考え始める。


「(場所ではなく人に憑いている……? だとしたらそう簡単に見つからないのも納得できるのか……?)」


 弥勒は原作知識や今までの経験により霊型の大天使はどこかに堂々と存在していると思っていた。しかしみーこはそうでは無いと言う。


「つまりみーこは大天使に憑かれた人間がいるかもって考えてる訳?」


「そう! その方がここまでの作戦を練っている理由にもなりやすい気がするし。人に憑いてた方がアタシ達の動向も掴みやすいっしょ」


 人型の大天使が残した術式により、それ以降の大天使たちは知能を得た。しかしそれだけでここまで複雑な作戦を練れるとは考え難い。そうなると知能を持っている大天使が人に取り憑いたが故に、更なる知識を手に入れたと考える方がしっくりくると彼女は言っているのだ。


「なるほど。てっきりどこかに隠れていると思ったんだが、人に憑いてる可能性も十分にあり得そうだな……」


「むむむ……話が難しくて付いていけないでやんす……」


 弥勒はみーこの推論に納得する。そして自らが見落としていた事も含めて状況を考え直す。


「あの……」


 するとここで黙っていた愛花が小さく手を上げる。


「実はバレー部の大島日菜乃ちゃんなんだけど、学校に来てないんですよね……」


「学校に来てない……?」


「はい。ずっと体調不良で休んでるみたいなんですよ。テスト期間なので大丈夫かなと思ってたんですけど……」


 予想外の報告に弥勒たちも驚く。愛花は申し訳無さそうな表情をしている。そこに弥勒が質問をする。


「それは昏睡状態とかになってるって訳じゃないのか?」


「いえ、昨日もクラスメイトが電話で喋ったみたいですし、チャットとかも返事が来るそうなので昏睡状態とかでは無いみたいです。それを聞いて私も普通の体調不良かと思って報告しなかったのですが……」


 弥勒は幽霊騒動の被害者が昏睡状態になる事を危惧していた。そのため休んではいるが、連絡の取れる大島日菜乃については問題ないと彼女は判断していたのだろう。


「なるほどな……」


「ごめんなさい……」


「いや気にしないでくれ。俺たちもみーこが気づくまで色々見落としてたんだし仕方ないだろう」


 愛花は謝罪をしてくるが、弥勒はそれを気にしないように伝える。


「あ、店員さーん! このパフェくださーい!」


 そして弥勒の隣に座っているみーこはそれをもっと気にしていない様だった。普通に店員にパフェを注文しているのだった。



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