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ヤンデレ魔法少女を回避せよ!  作者: 広瀬小鉄
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第百六十二話 チャットと電話


 とうとう7月に入り、来週から期末考査となる。そのため弥勒はテストに向けての勉強を自宅で行なっていた。するとエリスからチャットが入る。


『みろーくん、お勉強会をしましょう!』


「みんなでですか?」


 弥勒はそう返信する。エリスと二人で勉強するのか、魔法少女たち全員と勉強するのかで効率は変わってくる。もし全員で勉強会を開いたのなら絶対に勉強しないで終わるだろうという予感があった。


『みんなでです!』


 弥勒、麗奈、アオイ、みーこは一年生だ。月音が二年生。そしてエリスが三年生。学年がバラバラなため一緒に勉強するメリットは薄い。


 ましてや主催するエリスとしては同学年の人間がいないのでメリットは余計に薄いだろう。むしろ下級生に勉強を教えることになれば、自分の勉強時間が減ってしまう。


「今週の土曜なら良いですよ、と」


 弥勒はそう返信する。するとまたすぐにエリスからメッセージが届く。


『ありがとうございます! みろーくんが来るなら全員来てくれます!』


「最初に俺を誘ったのか……」


 弥勒が勉強会に参加するとなれば、魔法少女たちは必ず食いついてくる。エリスはそう考えて真っ先に彼へと連絡を行ったのだろう。


『ちなみにランチは中華とイタリアンのどちらがよろしいですか?』


 その質問に弥勒は悩む。今日食べたいものが、勉強会の時に食べたいものであるとは限らない。


「中華でお願いします」


 エリスの家で出てくる中華料理なので、ラーメンやチャーハンといったいつも食べている中華では無いだろうと弥勒は考えた。普段あまり食べられないような本格中華が出てくると予想したのだ。そのためイタリアンよりも珍しいものが食べられると期待して中華を選択した。


 そこから弥勒は勉強を再開する。土曜日が勉強会という名のお遊びになるという事は期末考査に向けた勉強時間が減るという事だ。そのため時間がある内に勉強しておかなければならない。


 暗記科目系が異世界にいた影響で知識が抜け落ちている。英単語や歴史などは大分、忘れてしまっていた。しかし入学してから空き時間で復習に力を入れていたので、授業には追いついて来ている。


 数学に関しては特に問題なく、古文・漢文などはむしろ異世界という多文化に触れる事で興味が出て来て勉強意欲が上がっていた。


 そのため中間考査の成績よりも期末はもう少し点数を上げる事ができるだろうと考えていた。身体能力も異世界にいた時ほどでは無いが、中学時代よりもかなり上がっている。そのおかげで体育なども高評価が期待できる。


 黙々と勉強をして、気付くと22時を過ぎていた。晩御飯を食べて以降もひたすら集中して勉強していた。


「なんかさりげなく集中力上がってるかも?」


 人間の集中力が続くのは大人で約50分と言われている。そして実際に継続できる集中時間は15分ほどが限界とされている。


 弥勒は身体能力が天使を倒すことで強化されていっている。その副効果には集中力の上昇なども含まれている。そのことに本人は今さらながら気付いた様だった。


「ま、便利だから良いか……」


 自らがどんどん人間離れしていっている事はスルーする弥勒。向上した身体能力はきちんとコントロール出来ているので、あまり心配していない様だった。


 これがもし力を入れすぎてコップを握りつぶしてしまうなどの弊害が起きていたなら彼のリアクションもまた違ったものとなっていただろう。


「風呂入るか」


 弥勒は勉強を切り上げて風呂へと入る事にした。明日も学校があるのでこの辺りが終わり時だと考えたのだ。


 シャワーを浴びて、一日の疲れを流す。最近は暑くなって来たので弥勒はもうシャワーしか浴びていない。湯船には浸かっていない。


 そのため30分もしないうちにお風呂から出る。そしてジャージに着替える。これが弥勒の寝る時の服だ。エリスから貰ったお泊まりパーティー用のパジャマは大切に保管してある。大切すぎてもう二度と日の目を見ない可能性も大きい。


 自分の部屋へと戻ってアイテムボックスからクラールジュースを取り出す。そして風呂上がりにリビングから持って来たグラスにジュースを注ぐ。それを一気飲みする。


「ぷはぁー! 美味い!」


 風呂上がりにジュースを一気飲みするという銭湯のおじさんのような行動をする弥勒。クラールジュースは蜜柑に近い味なのでさっぱりとした味わいなのが特徴だ。まさに風呂上がりにはピッタリである。


 それから明日の授業の準備をしていく。必要なものを鞄へと入れていく。そうしているとスマホに着信が入る。


「誰からだ?」


 ベッドの上に置きっぱなしだったスマホを弥勒は手に取る。そして誰からの電話か確認する。すると相手は愛花からだった。てっきり魔法少女の誰かだと思った弥勒は拍子抜けする。


「もしもし、愛花ちゃん?」


『はい、夜分遅くにすいません!』


「大丈夫だよ。どうしたの?」


『一応、ここ数日の報告をしておこうかと思いまして』


 ヒコを先日から愛女へと派遣している。そのため愛花はその経過について報告をしようと連絡してきたのだった。


「それはありがたい。愛花ちゃんは気が利くね」


『あはは、先輩にそう言ってもらえると嬉しいです。それでヒコちゃんにここ数日学校を見てもらってるんですが……特に何も無い見たいですね』


「そうなのか……というか愛花ちゃんたちってヒコの姿は見えるけど声は聞こえないんだよな? どうやってコミュニケーション取ってるんだ?」


 ヒコが取り出したダサいサングラスにより愛花たちはヒコの姿が見える様にはなった。しかしそれは姿が見えるだけで声は聞こえないものだった。そのため愛花とヒコがどうやってコミュニケーションを撮ってるのか弥勒は疑問を覚えた様だった。


『えーと……ヒコちゃんが何処からともなくプラカードを出して、そこに文字が浮かんでくる感じです……』


「ああ、お得意の謎空間から取り出すやつね。というかあいつも器用だな」


 ヒコが空中からいきなりプラカードを出現させる姿が弥勒にはイメージできた。愛花たちからしたら新鮮なのかもしれないが、弥勒や魔法少女たちからしたら見慣れた光景だ。


『ただ校内に天使の残滓はあるって言ってました』


「やっぱり校内に天使の痕跡はあるのか。ただ姿は見えないって事か……ヒコはそこにいるのか?」


『ヒコちゃんは真面目に学校で寝泊まりしてますよ。今日は校長室でパーティーでやんす、って言ってましたけど……』


 ヒコはどうやら天使を見つけ出すために真面目に学校で調査をしている様だった。校長室でお菓子を出して騒ぐくらいは大目に見てあげようと思う弥勒。


「他に何か変わった事は無いか?」


『うーん、もうすぐ期末考査なのでみんな少しピリついてるくらいですかね』


 彼女たちも学生なので試験からは逃れられない。校内はすでに試験モードになっている様だった。愛女は私立のため勉強に関しては厳しいのだろう。


「他にも幽霊と遭遇したとかは起きてないんだよな?」


『はい、今のところは。というよりも幽霊騒動の話題事態が下火になってきている印象ですね』


「そっか。それなら問題は無いのかな。ただ天使の痕跡があるのは少し気になるが……」


 ヒコが天使を見つけられない以上、どうする事もできない。もしかしたら大天使が拠点を変えたという可能性もある。そうなるとヒコが学校を見張っている間に他の場所を捜索する必要がある。


「とりあえず報告ありがとう。また何かあったら連絡してくれ」


『はい! また明日、電話します!』


 微妙に弥勒と食い違っている愛花。弥勒は何かあったら報告して欲しいと言ったのだが、愛花は毎日報告すると言っている。


「お、おう……おやすみ」


『おやすみなさい!』


 電話が切られたのを確認して弥勒は苦笑いする。少し動揺してしまったが、魔法少女たちのリアクションに比べたら可愛いものである。


「人の話を聞かないところは麗奈に似てるな。さすが姉妹」


 そんな感想を呟きながら弥勒は明日の支度を再開する。そして全ての準備を終えて眠りにつくのだった。



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― 新着の感想 ―
[一言] 感想割と失礼じゃないかと思ったけどそんなことなかったわ
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