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ヤンデレ魔法少女を回避せよ!  作者: 広瀬小鉄
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第百五十九話 みーこと月音の調査後編


 職員室前のお手洗いから音楽室へと移動してきた五人。


「こ、ここが音楽室です。ただ今は吹奏楽部が練習してるので中に入る事はできませんが……」


 吹奏楽部が現在、部活動中のため五人は中へと入る事ができない。


「わかったわ。ここで調べてみるわ」


 月音は本日何度目かになる成分探知機を取り出して音楽室前を調べていく。しかし成分探知機には何の反応も起こらない。


「ここも反応なしね」


「あっしの感覚でもさっきと同じくらいでやんすね」


 月音の報告に続いて、みーこの鞄の中に入ってるヒコも報告する。それにみーこはため息を吐く。


「はぁー、ここも何の反応も無しかぁ。思ってたより何も出てこないし」


「やっぱり天使か大天使を直接見つけるのが手っ取り早いわね」


「そうなると……まだこの学校で近寄ってない場所を探す必要がありますよね?」


 二人の言葉に愛花がこの後の確認する。天使の痕跡があるのは確実なので彼女としても中途半端に調査を終わらせる訳にはいかないと考えていた。


「そうね。ここまで通ったルートとは全然違う場所はあるかしら?」


「体育館、プール、食堂、図書室、三階あたりでしょうか……」


 現在愛花たちがいるのは地下一階の隅の方である。この周辺には美術室や家庭科室など副教科に関連した部屋が多いフロアだ。


 そして一階に一年生の教室。二階に二年生の教室。三階に三年生の教室がある。一階は窓の調査をする際、二階は愛花たちと合流した際に確認していた。


「高等部はどうっすか?」


 正門こそ別々に存在しているものの中等部と高等部は同じ敷地内にあり、行き来する事も多い。そのため凛子がそちらをどうするか確認する。


「高等部では幽霊騒動の噂は流れて無いのよね?」


「はい。先輩たちからそういった話は聞いた事無いです」


「あたしも無いっす!」


 愛花はバスケ部、凛子はサッカー部に所属している。その関係で高等部の生徒たちと練習する機会も多く、事前に幽霊騒動について確認していた。どうやら高等部では幽霊騒動の話などは出ていない様だった。


「なら今回は除外で良いかしらね。というよりも高等部までこのメンバーで見て回るのは難しそうだもの」


 高等部の校舎については愛花たちも詳しくない。そのためあまり案内役として最適とは言えない。さらに高等部に中等部の生徒がうろついていたら目立ってしまう。ましてや外部の人間と一緒なら尚更だ。


「実際は高等部に潜んでて、足がつかないように中等部の方で天使が悪さしてるって線は無い感じ?」


「う〜ん、現時点でその可能性もゼロとは言えないでやんす」


 みーこの問いにヒコが答える。天使たちの本拠地が中等部とは別の場所にあり、そこから出張するような形でこの校舎で悪さをしている。そんな可能性もあるのではと彼女は思ったのだ。


「もちろんその可能性もあるわね。ただまずは中等部に天使がいる可能性を探っていきましょう。その方が堅実だわ」


「たしかし。ならまずは三階と図書館!」


「は、はい……こちらです……」


 小舟の案内に従ってみーこたちはまず三階を目指す。図書室も三階にあるので一気に調べることができる。


 そして地下一階から階段で一階へと上がった所で前からスーツを着た人物がこちらへと歩いて来ている事に愛花は気付いた。


「あれ? 緑子ちゃん……?」


「へ……? ほ、穂波さん⁉︎」


 そこに居たのはジャーナリストの所沢穂波であった。彼女とはみーこの母親を通してつい先日知り合ったばかりであった。


「ど、どうしてここに……⁉︎」


「え〜、それはこっちの台詞なんだけどなぁ。何で緑子ちゃんが愛女にいるの? 卒業生とかじゃないでしょ」


 穂波の台詞にみーこは思わず言葉を詰まらせる。彼女はみーこが大町田高校に通っているのを知っている。


「えーと、友達と一緒に遊びに来た感じ……?」


「友達、ねぇ……」


 みーこの誤魔化しに穂波は周りにいるメンバーに目を向ける。その視線に小舟と凛子は身体を強張らせる。愛花もどこか緊張した面持ちとなっている。月音は相変わらずどこ吹く風といった様子だが。


「そ、それより穂波さんはどうしてここに?」


「私の方はもちろん怪事件の調査よ。町高の方はある程度、話を聞けたから今度はこっちを調べようと思ってね。なんせこっちの事件はまだ未解決みたいだし。何かタイムリーな情報が得られるかもしれないでしょ?」


 穂波は自分が愛女へ来た理由を説明する。大町田高校で起きた事件はすでに収束している。その一方、愛原女子中等部で起きた事件は現在進行形だ。ジャーナリストとしてはそこを見逃す手は無いだろう。


 最も彼女がこの幽霊騒動に目をつけたのはジャーナリストとしての勘であった。この幽霊騒動は一連の天使が街中で暴れるというのとは少し毛色が違う。そのため同一の事件であるという保証は無かったのだが、穂波はそれを直感で同一事件として捉えていた。


「ジャーナリストが女子校で取材なんて許可が降りるもんなんですか?」


「ふふん、そこは私がここの卒業生だからよ。愛女の新聞部出身なの。だから簡単に入れたって訳」


 実は穂波は愛原女子の出身であった。そこで中学、高校と彼女は新聞部に所属していた。そして現在は大手新聞社に就職している。そのため愛女の新聞部の生徒たちからしたら憧れの存在と言えるだろう。


「な、なるほど」


「それで緑子ちゃんは他校の、しかも中等部で何して遊んでるのかな?」


「えーと、女子校っていうのに興味があって……それで友達に案内して貰ってたところです」


 みーこはなるべく無難そうな答えを言う。女子校の生活に興味があるのは嘘では無い。彼女としては共学の学校との違いなど気になる事も多かった。ただ今回の調査には関係無いため口には出していなかったが。


「へー、そっちにいる私服の子も愛女の生徒じゃないよね?」


 穂波の視線の先にいるのは月音である。愛花たち三人は制服を着ており、みーこと月音は私服である。そのため月音がこの学校の生徒で無いのは一目見て明らかだった。


「えぇ、そうよ。せっかくだから私も女子校ツアーに参加させて貰ったの」


 月音もみーこの話に合わせる。みーこが遊びに来たと言った以上、彼女が全く別の話をする訳にはいかない。


「そう。まぁ気持ちは分かるわ。女子校とか男子校って共学の生徒からすると未知の世界だしね〜。ただあんまり他校にこっそり侵入するって褒められたやり方じゃないから気をつけなね?」


「あはは、すいません……」


 穂波の指摘に冷や汗をかきながら答えるみーこ。彼女の言ってる事は間違っていないので、謝る事しかできない。


「ま、バレたのが私だから良いけどね。教職員とかにバレると面倒だから」


「そうですよね。だからアタシたちもそろそろ帰ろうと思ってたんですよ……」


 これ以上、学校を調査するのは穂波の目があるため難しいと考えたみーこはそう伝える。


「そう。あんまり変な遊びばっかしてると先輩に報告しちゃうからね?」


「はーい。穂波さんの方はもう大町田駅での調査は完全に終わったんですか?」


 みーこはせめて穂波から何か情報を得ようと探りを入れてみる。彼女の今後の動きについて分かればこの様な鉢合わせは起こらないと考えての事だった。


「うーん、数日はここで調査かな。その結果次第で次はどこを調べるか決める感じね」


「へー、大変なんですね」


「まぁそれがジャーナリストの仕事だからね〜」


「確かに……それじゃあ、アタシたちはこれで行きます。失礼します」


「はいはい、またね〜」


 挨拶をしてみーこたちは穂波が通って来た道を遡る様に来客受付へと向かっていく。その間は全員無言であった。


 そして受付で来客用の名札を返却して五人は校舎から出る。するとそこでみーこが口を開く。


「ごめんなさい。まさかこんな所で会うと思わなくて……」


「仕方ないわ。とりあえず弥勒たちと合流しましょう」


 月音が彼女をフォローする。その言葉に中学生組も頷いている。それから五人は弥勒とアオイが待っているファミレスへと向かうのだった。

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