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ヤンデレ魔法少女を回避せよ!  作者: 広瀬小鉄
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第百五十話 みーこと弥勒の部屋


「お、お邪魔しま〜す……」


 弥勒とみーこは家の中へと入る。弥勒はリビングへと顔を出すが、どうやら母親はいない様だった。


 先に洗面所で二人は手を洗う。家の中に入った途端にみーこは静かになってしまった。それを不思議に思う弥勒。


「俺の部屋はこっち」


 階段を登ってみーこを自分の部屋へと案内する。


「どうぞ」


 弥勒はみーこを自分の部屋へ入れる。彼女を入れる前に先に中を見たが、特に散らかってはいなかった。


 昨日、アオイがこの部屋を掃除している。そのため弥勒は彼女が帰った後、部屋の中を色々と調べて不審なものが無いかチェックしていた。しかし特に怪しいものは無かった。


「こ、ここがみろくっちの部屋……」


「それじゃあ、ちょっと飲み物とか持ってくるから待ってて」


「う、うん……」


 みーこはテーブルの前にちょこんと座ってそう返事する。弥勒はそれを確認してからリビングへと向かい、飲み物とお菓子を準備する。


 飲み物はオレンジジュースがあったので、それをコップへと注ぐ。お菓子は棚からクッキーを取り出す。それを持って部屋へと戻る。


「戻ったわ」


「お、おかえり」


 弥勒が部屋へと戻るとみーこは先ほどと全く同じ体勢で座ったままだった。


「飲み物とお菓子持ってきた。オレンジジュースで大丈夫だったか?」


「う、うん。ありがと」


「もしかして緊張してる……?」


 弥勒はみーこが緊張しているのではないかと思った。家に入ってから急に無口になって、部屋では全然動かずに座ったままだ。緊張で身体が固くなっているのだろう。


「べ、別に⁉︎ 男の子の部屋に入るのが初めてだからって緊張なんてしてないし!」


 弥勒の言葉にみーこは慌てて否定する。そのリアクションを見て弥勒は自分の考えが正しかったのだと感じた。


「ちょっと何ニヤニヤしてるんだし!」


「おっと、すまん。ついな」


 みーこが自分の部屋に入って緊張しているのだと分かって、つい頬が緩んでしまう弥勒。彼女は今まで積極的に弥勒にアプローチしてきてた。そんなみーこにもそういった初々しい所があるのだと思うと、彼女が急に可愛らしく見えてきたのだ。


「もう、なんだし……」


 みーこは弥勒のリアクションが気に食わないようで、少し拗ねている。


「いただきます」


 しかし今のやり取りで少し緊張は取れたようでみーこはオレンジジュースを飲む。弥勒もそれを見て同じ様にオレンジジュースを飲む。


「本棚見ていい?」


「ああ、良いぞ」


 みーこは本好きとしての本能として部屋に置いてある本棚が気になった様で弥勒に許可を取ってそちらを確認する。


「お、この本面白いよね。これも読んだことある。これも、これも、これも。あ、このシリーズ読んだことないや」


 みーこは本棚の中に入っている本を一冊取り出す。自分が読んでいない本が気になった様だ。


「これ前に図書館で借りようか悩んでやめたんだよね。面白かった?」


「面白かったよ。ただ虫が苦手な人はやめた方が良いかも?」


 彼女が手に取った本はミステリーだが、法医昆虫学者が主人公という変わった作品だ。そのため虫が作中にはよく出てくる。そういったのが苦手な人には読み辛いかもしれない。


「やっぱ? アタシもそれで躊躇ったんだよね〜」


 みーこはその本を本棚に戻して、残っている本たちを見ていく。


「そういえばこの前、オススメされた本を図書館で借りたよ。まだ読んでる途中だけど」


「ほんとに? 結構面白いでしょ?」


 自分がオススメした本を弥勒が借りたというのを聞いてみーこは嬉しくなる。


「ああ、ただ人の名前が覚えにくい……」


「海外小説あるあるじゃん。急にあだ名で呼んだりするから分かんないんだよねー。アタシは常に登場人物紹介のページを指で押さえながら読んでるし」


「俺もそこはいつでも開けるようにしてるわ」


「だよねー」


 それからみーこは本棚を見るのをやめて弥勒のベッドの方を見つめる。そしてニヤリと笑う。


「ダ〜イブ!」


 そしてみーこはそのままベッドへとダイブする。ボフッという音がしてみーこはベッドに転がる。


「何してんだ……⁉︎」


「そこにベッドがあったから?」


「いやそこに山があるからみたいな感じで言われても」


 弥勒はみーこの突然の行動に驚く。しかし彼女は当たり前のような雰囲気を出している。みーこにとって弥勒のベッドにダイブするのはそれだけ自然なことなのだろう。


「くんくん。うん、確かにみろくっちのベッドだ」


 みーこは置いてあった枕を確保してその匂いを確認する。


「いや堂々と人の枕の匂いを嗅ぐなよ……」


「最近、ミロクエナジーが不足してたからちょーどいいなーって」


 弥勒から注意されてペロッと舌を出して誤魔化すみーこ。可愛い仕草のため弥勒は一瞬、許しそうになってしまう。


「前にも似た様なこと言ってたな……そんな成分無いだろ……」


「あるし! そしてアタシはここに引き篭もる!」


 そのまま枕を抱えた状態で自ら布団を掛けて丸まってしまう。


「おい、何してんだ……⁉︎」


「ジューデンチュー」


「どんな充電だよ。出ろ」


「ヤーダー」


 弥勒は布団を引っ剥がそうとするものの、みーこが抵抗する。ガッチリと布団を掴んで離そうとしない。そのため弥勒は無理矢理布団から彼女を出すのを諦める。


「すーはーすーはー」


「そろそろ可愛いを通り越して変態の域に行きつつあるぞ。戻ってこーい」


 布団の中で深呼吸しながら匂いを嗅いでいるみーこ。それに弥勒は引きながらも彼女に忠告をする。ただ変態の域に行きつつあるではなく、既に行っている気もするが。


 すると突然、ガバッと布団からみーこが飛び出てくる。そして弥勒の腕を引っ張って布団の中へと引き摺り込んでくる。


「うをっ……⁉︎」


 そして布団が再び閉じられて弥勒とみーこは二人で布団の中へと入ってしまう。


「にひひ、捕まえた」


「おまっ、何して……⁉︎」


 みーこはそのまま弥勒に両腕で抱きついてくる。そして足を絡めて弥勒が動けない様にする。


「さぁ観念しろ、みろくっち。今日はアタシのターン」


 耳元でそう囁かれる。それに弥勒は思わずぞくっとしてしまう。いつもとは違う雰囲気に彼も呑まれつつある。


「……んっ」


 そしてそのままキスをされる。しかもそれだけで終わらず、舌を入れられる。弥勒も初めは抵抗しようとしたものの、すぐにそんな気力は無くなってしまう。


 みーこの息遣いや、豊満な胸が身体に当たって彼としても自らを堪えるのに精一杯で、抵抗する力が残っていないのだ。


「……んあ……ふふ」


 そして長いキスが終わる。するとみーこがイヤらしく笑う。


「続きはみろくっちがアタシだけを選んでくれたら、かな?」


「え……?」


 そう言って彼女は弥勒を解放する。そのまま布団を開ける。すると暗かった視界が明るくなる。呆然としたままの弥勒を放って、みーこはベッドから降りて自分の鞄が置いてあるテーブル近くまで戻る。


「だいぶ髪が乱れちゃったし」


 そう言って鞄から手鏡を取り出して髪型を整える。弥勒はベッドの上で間抜けな顔をしたまんまだ。


 みーこはリップを塗り直して身だしなみを整える。そして手鏡を鞄へとしまい、弥勒の方へと向き直る。


「さっきから固まってどったの?」


「い、いや……うん……何でも無いッス」


 弥勒もようやくベッドから降りる。生殺しの状態となってしまったため、弥勒としてはモヤモヤが残っている。


「まぁみろくっちとアタシは付き合ってるじゃん? でもまだ他の女の子たちとの関係に決着がついた訳じゃないし。みろくっちがしたがってるそーゆー事はそれからだねー」


 正式には弥勒とみーこは付き合っている訳では無いのだが、それは最早否定しづらい雰囲気になってしまっている。日帰り旅行やキスまでしているのだ。告白は無くても付き合っていると思ってしまっても不思議では無い。


 弥勒もそれが分かっているため否定の言葉は口にしない。というより否定の言葉を口にした後の彼女のリアクションが恐ろしいため言えないというのが正しい。


「えーと……そうだな……」


 そこからは普通にみーことお喋りをする。そして母親が帰宅する前に彼女は帰るのだった。


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