表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤンデレ魔法少女を回避せよ!  作者: 広瀬小鉄
129/315

第百二十九話 次なる大天使


 日曜日の午前中から事件は起こった。家の中にいても感じられる大きな鼓動に弥勒は窓の外へと目を向ける。


 すると空には大きな魔法陣が現れていた。それが意味するのは新たな大天使が召喚されるという事だ。


「今日は戦いの日か……」


 弥勒は嫌そうに呟く。昨日は弥勒としては久しぶりにのんびりできた。しかも麗奈たちのコスプレ写真というお宝まで手に入れる事ができたのだ。彼としては大満足な一日だった。


 弥勒は天使コンパスをアイテムボックスから取り出す。そこに表示されている文字を確認する。


「やっぱり獣型の大天使か……」


 スマホを見てみるとグループチャットでも魔法陣に気付いたメンバーから連絡が来ていた。弥勒もそこに返信をして今から現地に向かう事を伝える。


 そして弥勒は急いで家を出る。そして目立たない場所でセイバーへと変身する。フォームはスタンダードな灰色の騎士である。


 近くにある家の屋根に飛び乗る。魔法陣は目立つため迷うことはない。目的地へ向けて真っ直ぐ進んでいく。


「弥勒くん!」


 すると家が近いからだろうか。途中でアオイと合流する事に成功した。彼女は大天使の出現に慌てている様だった。


「一応、この姿の時はセイバーって呼んでくれ。いつ周りの人間に気付かれるか分からないしな」


「あ、ごめんね。ってそれよりも大天使だよ!」


 弥勒が呼び方について注意すると彼女は素直に謝る。二人は屋根伝いに進みながら情報を交換する。


「天使コンパスによると獣型みたいだな」


「だね。ここのところ獣型の天使の出現は多かったし……どんな敵なのかな……」


 今まで弥勒たちは三体の大天使と戦っている。そして勝利している。しかしその勝利の大きな要因はいつも弥勒によるものだった。


 鳥型の大天使は魔法少女たちが足止めと結界崩しを行った。弥勒がそこから一対一で大天使を圧倒して倒した。


 人型の大天使はまず弥勒が大打撃を与えた。それから逃げようとした大天使にアオイたちが追撃をした。それからの敵の自滅である。


 魚型の大天使は弥勒が周りへの大きな被害を防いだ。その後、魔法少女たちの必殺技連打により大打撃を与えた。しかし倒し切ることは出来ず、最後は弥勒がトドメを刺している。


 そのためアオイの中には苦手意識が芽生えているのかもしれない。もし弥勒がいなければ魔法少女たちは全滅してしまう可能性すらあるという事に。


「どんな敵だろうと勝つしかない。大丈夫、俺らなら勝てる」


「うん……そうだよね!」


 弥勒の励ましの言葉にアオイも少し表情が明るくなる。


 そして弥勒たちは現場へと到着する。上空には魔法陣が広がっている。その場にはすでに麗奈と月音が到着していた。


「来たわね」


「そろそろ光の柱が降りて来る頃かしら?」


 麗奈は弥勒たちに視線を向けてくる。一方で月音は空を睨んだままだ。するとそこにエリスとみーこ、ヒコがやって来る。


「来ました!」


「お待たせ〜!」


「登場でやんす!」


 これでメンバーが全員揃った事になる。空から目を離さないようにしつつも弥勒は指示を出していく。


「メリーパンジーはクマたちを出して避難誘導をしてくれ。住宅街だからあまり人通りは多くないだろうけど」


「はい! 来て下さい、クマちゃん!」


 エリスはテディベアたちを召喚して周辺へと散らせる。


「メリースプルースは音符を出していつでも動けるように」


「あいあいさー! スプルースノート!」


 みーこも弥勒の指示に従って音符を出して待機する。月音はすでにドローンを飛ばしている様だ。麗奈とアオイはそのままの状態で待機している。


 すると魔法陣の輝きが強くなり、光が下へと降りて来る。その中に何かの影が見える。恐らくそれが大天使だろう。


「来るぞ!」


 弥勒の声に魔法少女たちもさらに気を引き締める。そして光が収まるとそこには何もいなかった。


「あれ? 何もいない?」


 アオイが呆けた声を出す。麗奈も戸惑ったような表情をしている。


 しかしその瞬間、空中に突如として炎の球が出現する。それはアオイに狙って勢いよく飛んでくる。


「え?」


「させるか!」


 弥勒は咄嗟にアオイを庇うように前に出る。そして右腕からシールドを展開する。それにより炎は弾かれて散ってしまう。


「気をつけろ! 敵はもうすでに出現しているぞ!」


 弥勒は魔法少女たちに忠告をする。その言葉により彼女たちも臨戦体制に入る。するとそこから周りにいくつもの炎が浮き出て来る。


「より強い熱源反応を探すわ」


 その状況を見て月音は防御をせずに索敵に入る。防御に動くのは麗奈である。


「ガーネットペタル!」


 お決まりの花弁によるシールドを展開して魔法少女や弥勒たちを包む。しかしそれに弥勒は厳しい表情をする。彼はアオイとみーこに声をかける。


「メリースプルースはメリーアンバーを、メリーインディゴはメリーガーネットを守れ!」


 その台詞と同時に浮いていた炎球たちが一斉に弥勒たちへ向かって放たれる。炎たちがガーネットペタルに着弾した瞬間、ガラスが割れる様な音がしてシールドが決壊する。


「うそっ⁉︎」


 自慢のシールドが破られる展開に麗奈は驚く。そこにアオイがカバーに入る。彼女に向かって飛んできた炎球を魔力の籠った拳でかき消す。


「インディゴパンチラッシュ!」


 そして反対側でも同じようにみーこがシールドを突き破ってきた炎球をスプルースノートで処理をする。


「よいっしょー!」


 弥勒はエリスの近くでシールドを展開して彼女を守る。


「大丈夫か?」


「は、はい……」


 エリスは炎が間近に迫って来る様子に少し恐怖を覚えた様だった。つい最近まで普通の少女だったのだから無理もないだろう。


「どうしてガーネットペタルが⁉︎」


 麗奈が慌てた様子で弥勒に尋ねて来る。まさか自慢のシールドがこんなにあっさりと破られるとは思っていなかったのだろう。


「ガーネットペタルは植物系の力だから、炎系の攻撃と相性が悪かったんだろう」


 弥勒が端的に答える。もしこれが通常の天使による炎攻撃ならばガーネットペタルに傷など付けられない。しかし敵は大天使だ。流石に相性が悪かったのだろう。


「くっ……だとすると今回の戦いはワタシとしては厳しいわね」


 防御に関して一番優れていたのは麗奈である。彼女のガーネットペタルには弥勒も含めて魔法少女たちは何度も助けられていた。それが通用しないとなると今回は厳しい戦いとなる。


「近くの人たちの避難はある程度終わりました。しかし家の中にいる人たちまでは……」


 エリスのテディベアによる避難誘導は終わった様で彼女の周りにぬいぐるみたちが集まって来る。


「ありがとう。メリーアンバーは何か分かったか?」


「さっきの炎が現れた瞬間、あっちの屋根の方にかなり高温な熱反応があったわ。けれど今はおかしな反応は無いわね」


 月音は近くの家の屋根を指差して言う。彼女は敵が炎を出してきた事から、本体はより高温になっているだろうと推測しドローンによる熱源感知を行っていた。しかし今は何も補足出来ていない様だった。


「セイバーは敵を探る力とか無い感じ?」


 熱による補足が難しいと思ったのか、みーこが尋ねてくる。


「魔力感知をしてみる」


 弥勒はそう言って自らの魔力を広げていく。その柔らかな波動は魔法少女たちにも感じ取れた。これは彼女たちが変身して魔力を感じ取れる状態になっているからだ。


「っ……! 真上だ!」


 その言葉に全員が咄嗟にその場から飛び退く。すると先ほどまで弥勒たちがいた場所に炎らしき何かが上から突撃して来る。


 ドガンとアスファルトが破壊される音がして土煙が舞う。弥勒たちはそれに目を細める。そして突撃してきた敵は、さらに弥勒へと照準を定めて再び突撃して来る。


「くっ……!」


 シールドを展開してなんとかその突撃を防ぐ。弥勒は想定していたよりも敵のスピードが速い事に驚く。そしてシールドにより弾かれたソレはそのまま空中で体勢を変えて地面へと着地する。そこで初めて魔法少女たちと弥勒は敵の正体を目にする。


「あれが……獣型の大天使⁉︎」


 麗奈が驚きの声を上げる。


 そこにいたのは豹の姿をした炎であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ