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ヤンデレ魔法少女を回避せよ!  作者: 広瀬小鉄
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第百二十七話 写真


 日曜日に魔女裁判という大きな出来事はあったものの、平日は特に大きな問題も無く進んで行った。


 木曜日には再び麗奈たちと救世主チャンネルの動画撮影をした。相変わらず女子たちは賑やかで弥勒としてはやや置いていかれがちだった。

 

 金曜日にはエリスの教室へ手紙の返事を持っていった。彼女は嬉しそうに返事を受け取っていた。弥勒としては周りからの視線が初回よりも気にならなかった。


 また先週行われた中間考査の結果も返却されている。弥勒は学年でも真ん中くらいの成績だった。隣の席の麗奈はかなり上位だった様だ。


 その間にもどうやら天使は何体か出現しており、弥勒や魔法少女たちで退治している。やはり獣系の天使の出現が多かった様だ。


 そして土曜日になり弥勒は家でゴロゴロしていた。また気を抜くとすぐに期末考査がやってくるものの本日は完全なオフモードである。先週までイベントが多かったのも弥勒がだらけている原因だ。


「今日はこのままダラダラして終わりたい……」


 部屋にはヒコもいない。スマホには魔法少女たちからの連絡もない。それを良いことに弥勒はだらけきっている。


「晩飯なんだろう」


 弥勒はベッドから起き上がり、リビングへと向かう。すると母親はお茶を飲みながらテレビを見ていた。


「母さん、晩飯なに?」


「ん〜? 回鍋肉と餃子にしようかと思ってたけど何か食べたいものでもある?」


「いやそれで大丈夫」


 弥勒は晩御飯を確認してから冷蔵庫を開ける。そこからコンソメ味のポテトチップスを取り出す。そしてキッチンで自分のコップを手に取り氷を入れる。その二つを持って部屋へと戻る。


 そしてスマホゲームを起動する。最近、ハマってやり込んでいるアプリである。課金などはしていないが。


「久しぶりに飲むか」


 弥勒はアイテムボックスからジュースを取り出す。これは異世界で手に入れたクラールという果物で紫色の蜜柑のような見た目をしている。あちらではジュースとして使われていてその果汁は透明である。


 味としても蜜柑に近いものがある。甘さと酸味がバランス良く、弥勒は異世界ではこのジュースを好んで飲んでいた。そのため大量にアイテムボックスに入れて保存している。


 弥勒はそれを先ほど準備したコップに注いでいく。ジュースは透明のため一見、水のようにも見える。そしてコップを口へと運びジュースを飲んでいく。


「くはー! やっぱりクラールジュースは美味いなぁ」


 仕事終わりのサラリーマンがビールを飲んだ時の様な表情をする弥勒。異世界ではダンジョンから帰ってきてから飲んだりしていたので、ある意味同じである。ちなみに異世界でお酒も少し飲んだりしたが、弥勒の口にはあまり合わなかった。


 それからポテチとジュースをチマチマ飲み食いしながらスマホゲームを進めていく。日課というほどコツコツやってはいないが、素材集めのための周回などもこなす。


 一時間ほどプレイした所でゲームを終了させる。そしてホーム画面からアプリの一覧が表示されているページへと移る。


「……うーん」


 弥勒が見ているのは自分のスマホにいつの間にか入れられていたスパイアプリだ。この存在に彼は最近気が付いた。日帰り旅行の際にアオイが自分たちの所にやって来た事に違和感を覚えた弥勒が色々調べた結果見つかったのだ。


 いくら大町田駅を利用するだろうと予測してもピンポイントで弥勒たちがいたあの場所を見つけられるのはおかしいと考えたからだ。


「やっぱり消さない方が良いよなぁ」


 アオイがスマホにスパイアプリをインストールしたのは家デートをしたとかでは無いかと弥勒は睨んでいる。というよりもその時くらいしか彼女が弥勒のスマホに触るチャンスは無かったはずである。


 スパイアプリを発見した当初は削除しようと考えたが、悩んで放置する事にした。もしアプリを消してしまったらアオイは暴走するかもしれない。そうなると何をされるか分からない。それよりはスパイアプリをそのままにしておいた方が弥勒としては彼女の動向を把握しやすいと考えたのだ。


「うーん、今もこのアプリで俺を監視してるかもと考えると恐ろしいな……」


 アオイは普段が子犬っぽく明るい雰囲気のため余計に怖く感じる弥勒。


 するとそのタイミングで弥勒のスマホにチャットが入ってくる。ポンっという通知音に彼は一瞬、ビクつく。


「なんだ、麗奈からか……」


 弥勒は麗奈からのチャットに少し安心する。彼はチャットを開いてメッセージを確認する。


『特別サービスよ』


 メッセージにはそう書かれており、その下には何枚かの写真が添付されていた。それは巫女服を着た麗奈の写真であった。控えめにピースをしている写真や、お祈りみたいなポーズをしているものもある。


「あ、コスプレ会か! 今日やってんのか!」


 弥勒はすぐにその写真を保存する。スパイアプリの存在が気になったが、それを考えていてはスマホが触らなくなるので無視する事にした。


『すごい似合ってる』


 弥勒はすぐにそう書いて送信する。すると今度はアオイからチャットがやってくる。開いてみると同じ様にコスプレ写真であった。


『じゃじゃ〜ん! どうどう?』


 添付されていたのはナースのコスプレをしたアオイの写真だ。それに弥勒もホッとする。文面からも気まずさを感じないので返信がしやすい。写真を保存してからすぐに返信する。


『期待を超えるクオリティ』


 アオイとしてもコスプレ会が良い気分転換になったのかもしれない。テストが先週で終わったのも本日開催になった理由の一つだろう。


 そして案の定、エリスからもチャットが入る。弥勒はどんな写真が送られてくるのか期待しながら画面を開く。


『食べちゃうぞ〜!』


 そんなお化けの台詞と共にエリスのからかさ小僧のコスプレ写真が送られてきた。


「ぶふっ……!」


 その写真に弥勒は思わず飲んでいたクラールのジュースを吹き出さそうになる。巨大な傘らしきモノを被っているエリス。真ん中には顔を出すスペースがついており、そこには笑顔のエリスの顔が写っている。


 そして肝心の傘の部分は何故か可愛らしくデコられていた。ハートのシールやラメなどがついており、全体的に盛っている。これではからかさ小僧のコスプレというよりクリスマスツリーのコスプレである。


 弥勒はその写真ももちろん保存する。それはエリスのコスプレが貴重というのもあるが、写真に写っている彼女の生足が素晴らしかったからだ。


『可愛らしいからかさ小僧ですね』


 弥勒はエリスにも返信のメッセージを送る。するとエリスからコスプレ会の更なる写真が送られてくる。


『楽しいお菓子タイムです!』


 エリスの家でコスプレ会をしているのだろう。見覚えのある部屋のテーブルにお菓子が色々と並んでいる。


 その写真ではエリスだけでなく麗奈もアオイもカメラに向かってピースしている。三人とも楽しそうな表情をしている。


 よく見るとテーブルの端の方にお菓子に齧り付いてるヒコも写っていた。いつもと違って探偵帽にモノクルを付けている。一応、ヒコもコスプレしているのだろう。


『楽しそうで羨ましいです』


『次回はみろーくんも参加ですよ〜』


 弥勒はエリスからの返信に苦笑いする。そして弥勒のあだ名は「みろーくん」に決定した様だ。「ナイトアイランド将軍」にならなくてホッとしている。


『俺はコスプレ似合わないですよ』


 コスプレ会と言われても何にコスプレしたら良いか分からない弥勒。それを素直に告げる。


『うーん……そうですね。わたくしとしては一休さんがオススメですが、アンケートを取ってみます!』


 相変わらず独特なチョイスをするエリス。弥勒が一休さんのコスプレをして一体誰が喜ぶというのだろうか。


『アンケートって……』


 弥勒はとりあえずそれだけ返信する。すると五分くらい経ってからエリスから再び返信がやって来る。


『アンケート結果は執事が一票、一休さんが一票、海の男が三票でした』


『いや海の男って何ですか……』


 予想外のアンケート結果に弥勒は戸惑う。全部で五票ある事から魔法少女のグループチャットか何かでアンケートを取ったのだろう。


 それからしばらくはエリスや麗奈、アオイとのチャットを続けるのだった。

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[一言] アンケート誰が何に投票したんだろう? 冷蔵庫にポテトチップス?
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