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ヤンデレ魔法少女を回避せよ!  作者: 広瀬小鉄
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第百十六話 日帰り旅行中編


 バスから降りて昼食を食べるためにお店へと入る。そして「団体予約」と書いてある席に座る。


「お昼ご飯楽しみ」


「バスに乗ってただけだけど腹減ったわ」


 メニューは選べないため席に着いてからは料理が運ばれてくるのを待つだけだ。弥勒もみーこも美味しい海鮮料理を期待している。


「お待たせ致しました。海鮮丼セットです!」


 そうするとお盆に乗った豪華な海鮮丼が運ばれてくる。どんぶりには海老やマグロ、いくら、ウニなどお米が見えなくなるくらいの新鮮な魚介類が乗っている。


 更にカニで出汁をとった味噌汁に、海老の天ぷらが一本付いている。おまけにひじきの煮物まである。


「おぉ〜! めっちゃ豪華じゃん!」


「美味そう!」


 期待していた以上のランチに二人のテンションも上がる。弥勒はすでに箸をもってスタンバイしている。視線は海鮮丼に釘付けだ。


 みーこの方はスマホで海鮮丼の写真を撮っている。数枚、撮ってからカメラの位置を少し上げて画角の中に弥勒の一部が写るようにしたものも撮影する。


「それでは皆さま、ここから昼食タイムとなります。時間は一時間となっております。こちらでは隣にご当地商品を販売しているコーナーもありますので、食べ終わりましたらそちらも是非ご覧になって下さい」


 ツアーコンダクターの佐藤の言葉によりランチタイムが始まる。ツアー客たちもすぐに海鮮丼を食べ始める。


「「いただきます!」」


 二人も行儀良く挨拶をしてから海鮮丼セットを食べ始める。弥勒はまず味噌汁から、みーこはいくらから口に入れる。


「カニが凄いな!」


「こっちもいくらの弾ける感じがたまらない!」


「うわ、本当だ。何か新鮮な感じがするわ!」


 みーこのリアクションを見て弥勒もいくらを口に運ぶ。そして少しアホなリアクションをする。残念ながら弥勒はスーパーの寿司に乗っているいくらしか食べた事無いので仕方がない。


「でしょでしょ! ていうか味噌汁も出汁すごいし!」


「いやー、これだけで来た甲斐あったな」


「確かに。やっぱり新鮮なものは違うね。ママに感謝しないとね!」


 みーこと弥勒は楽しそうに喋りながら食べ進めていく。


「ひじきの煮物って今まで美味いともマズいとも思った事ないけど、これは美味いな!」


「アタシはひじきの煮物たまに作るけど。お弁当にも入れられるし、何よりカロリーが低いし!」


 ひじきには食物繊維やカルシウムも含まれているので、健康に良い食品である。もちろん、だからといって食べ過ぎは厳禁だが。


「家庭的なんだな……」


「ふふん、惚れ直した?」


「ちょっとな」


 そんな話をしているとあっという間に海鮮丼が食べ終わる。天ぷらまで付いていたので二人は満腹となる。


「「ごちそうさま」」


 弥勒はお茶を飲んで一息吐く。みーこも弥勒も海鮮丼の余韻に浸っている。それだけ美味しかったという事だろう。


「お土産コーナー見に行くでしょ?」


「ああ。ここで買うかは分からないけどとりあえず見ようか」


 二人は席から立ち上がり、食堂の隣にあるご当地商品コーナーへと向かう。するとそこには魚や野菜、落花生やお菓子などが売っていた。


「流石に魚とか野菜は買えないし」


「落花生もあるぞ。家にあると無心で食っちゃうんだよなー」


 二人は魚や野菜のコーナーは飛ばして、お菓子など日持ちしそうな所を重点的に見る。


「わかるー! 殻を綺麗に割れた時はちょっと嬉しい」


「間違いない」


 二人で笑いながら落花生の袋を手に取る。その他にもいくつか落花生を使用したお菓子なども見たが、結局はシンプルなのが一番だろうという結論となった。お互い落花生を一袋ずつ買ってバスへと戻る。


「次はどこ行くんだ?」


「えーと、牧場って書いてある!」


「ああ、あの有名な」


「ブルーベリー狩りもできるんだって。楽しそう」


「ブルーベリーってあんまちゃんと食べた事ないなぁ」


「アタシもないわ」


 二人が食べたことのあるブルーベリーはジャムかヨーグルトくらいだろう。あるいはケーキなどにちょこんと乗っている数粒程度のものだ。


 そこからしばらくバスで待機しているとツアーメンバーの全員が乗車完了する。そしてバスは出発する。またここからバス旅となる。


 次の目的地は牧場である。そこでは動物たちとの触れ合いやブルーベリー狩りなどもできる。みーこはここから目的地までマップアプリで時間を検索する。


「30分くらいで着くみたい」


「近いな」


「アタシたちが走るのとどっちが速いと思う?」


 みーこは他の乗客には聞かれないように小声で聞いてくる。質問自体、しょうもないものなのだが。


「うーん、俺らじゃないか? ビルを飛び越えていけば最短距離で行けるし」


 瞬間的な速度でバスを超えるのは簡単だが、そのスピードを維持して移動に使うのは魔力の無駄遣いである。そのためジャンプしながらビルを飛び越えていくのが手っ取り早いだろう。


「なる、その手があったか。メリディゴあたりなら普通にダッシュ力で勝てそうだけどね〜」


「メリディゴってお前……」


 メリーガーネットのメリガネに続き、メリーインディゴの名前も省略して呼ぶみーこ。


「あとの二人はメリアンとメリパンと呼ぼう」


 そして残りのメンバーの略称もみーこは勝手に決める。それに弥勒も笑ってしまう。


「みーこは他の女子メンバーと交流してたりするのか?」


「うーん……エリス先輩とはたまにチャットで話すけど、他のメンバーはそんなにって感じかな〜。特にメリガネは全然ダメ」


「それは元々、お前がレディ・セイバーなんてふざけてるからいけないんだろ」


 弥勒の正体がバレる前はみーこも自らの正体を隠していた。その時はレディ・セイバーと名乗っていたのだ。そして麗奈の前で過剰にセイバーにくっつくなどして彼女から反感を買っていた。


「ちょーっとやり過ぎたかなって思ってるけどさー。でもマウント合戦に負ける訳にはいかないのよ、同じ女として」


「マウント合戦て……」


「みろくっちは気付いてないけど、みんな結構お互いに牽制しあってる感はあるよね」


「え……そうなのか……?」


 みーこの言葉に弥勒は驚く。


「まー、みろくっちは気にしない方が良いよ。というかむしろ気にしたらややこしい事になりそうだから知らん顔しときな」


「うーむ……まぁ分かったわ……」


 弥勒としては釈然としないが、女同士の戦いという事で理解を示す。みーこの言う通り、弥勒が下手にそれを止めさせようとすると余計に争いが激しくなる可能性がある。


「という訳で、SNSに彼ピと日帰り旅行ちゅー」


 そんな話をしながらみーこは先ほど食べた海鮮丼の写真を自らのSNSに投稿する。表アカウントの方だ。このアカウントはアオイもチェックしている。


「おい、早速マウント取ろうとするな!」


 弥勒がみーこの投稿を止めようとするものの、それをかわして彼女は送信ボタンを押す。そしてSNSが更新される。


「みろくっち、今アタシの胸触ろうとしたでしょー?」


「してねーわ! 投稿を止めようとしただけだから」


 みーこが弥勒をからかってくる。するとそのタイミングで彼のスマホからチャットの通知を知らせる音がなる。


 弥勒はみーこの話をスルーするためポケットからスマホを取り出す。そしてチャットアプリを開くとアオイからであった。


『いまどこにいるの』


「…………」


 弥勒はそのメッセージに固まってしまう。するとその隙に横にいたみーこがひょいっと弥勒のスマホを取ってしまう。


「って、おい⁉︎」


「はいはい、『かのじょとでーとちゅー』っと送信!」


 みーこは弥勒が動揺している隙にアオイに返信してしまう。しかも火に油を注ぐようなメッセージだ。


「な、なんて事を……」


 この後の言い訳を考えると頭が痛くなる弥勒。それにみーこはニヤリと笑う。


「デート中に他の女の子とやり取りをするなんてマナー違反だし」


「はぁ……早く牧場に着かないかな」


 もう動物たちに癒されたいと考える弥勒。完全な現実逃避である。しかし彼の願いは通じたのか、それからすぐに牧場へと到着するのだった。

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[一言] この話を読んで知った衝撃の事実私は落花生を食べたことがない! 何処となくホラー感が出ている
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