第十六話:エイナと?と受難の時2(王子様のお茶会:後)
アルトが倒れ、テラスを覆っていたの防諜結界が崩壊し、地上は蜂の巣を突いたような騒ぎとなった。
「結界が! 殿下が! 何があったというの!?」
「分かりませんわ! アルト殿下の御身になにが!」
「医術師を呼ぶのだ! おい、そこな役員ども! 邪魔をするな!」
そしてその騒ぎは単なる喧騒というレベルでは終わらなかった。
騒ぎが広まるのは地上だけではない。
混迷の中、何人かの生徒が空中に飛び出し、役員達に静止された。
「君達、テラスへの接近はやめたまえ! 何が起こったか分らんが、こんな時だからこそ殿下の安全のためにも混乱だけは避けなければ――」
「暗殺だ! 隣国の革命党の連中が我が国にも!」
「ここに居ては我らも危険だ! 早く逃げろ!」
「何を言っている! 我々が殿下らを守らねば!」
「なっ……何を言いだすんだ君達!」
テラスを覗き込むべくいち早く空中に舞い上がった者たちの一部が口々に好き勝手な憶測を叫び、四方八方に飛び急ぐ。
静止する側の役員たちからすれば違和感を覚える物言いだったが、そう受け取らない者達もいた。
テラスを中心に、地上のそこかしこにグループで集っていた多くの学生達。
アルト王子の昏倒で溢れた不安という火種に、上空からばらまかれた流言が火をつけた。
「行かないと!」
「行くってどちらにだい!?」
「とにかく箒に乗りましょう! 飛ぶ準備だけはしておかないと!」
そして、折悪くこの場には、つい先日飛翔魔法を身につけたばかりの2年生達が多くいた。
かしこで杖が振られ、杖や箒を基本魔法で象る者、風での飛翔準備につむじ風を呼び出す詠唱をする者達が現れる。
浮き足立ち、早くも空中に上がってしまう者もいた。
公共の場での飛翔魔法行使許可証を得ている一部の三年生の中でさえ、異様な空気に飲まれて、あるいは上空を飛び去った者達の流言に当てられて空へと身を躍らせてしまう。
そして、その無秩序の中で事故が起こる。
習ったばかりの風系魔法での飛翔制御を誤り、空中での衝突事故を起こす学生が現れた。
それも、一つ二つではない。
飛び出す人数が増え、空からは休止地上に伝播を始めた謎の流言の波が強くなるにつれ、そうした事故の数は加速度的に増えていく。
飛翔魔法とワンセットで学ぶ衝撃吸収の簡易結界のおかげか深刻な死傷者は出ていないが、それも時間の問題かに思われた。
「強制排除を許可します! 危ういーーいえ、指定空域に飛んでいる一般生徒は片っ端から強制安全降下させてください! 責任は私が取ります!」
臨時役員の徽章をつけた、判断の早い防衛担当役員の指示の声が響き、テラスを囲んで飛んでいた防衛隊員が一斉に杖を構える。
そこから間も無く、対飛翔者向けの魔法弾がそこかしこで打ち出された。
命中した者を絡めとり、緩やかな落下を強制させる、飛行魔道具の事故などでも用いられる安全な魔法だ。
元より数の少ない防衛担当役員達では、目に見えて増えていく接近者達を抑えきれない。
善意•パニックを問わず意図的にテラス周辺に近づこうとする者、箒や魔道具の制御を誤って領空に突っ込んできそうな者。
彼らは色とりどりの魔法弾に絡め取られ、次々と降下させられていく。
指示を出した役員の声掛けですぐさま二つの編隊が組まれ、テラス周辺はすぐさま不可侵の場所となる。
テラスの王族防衛の観点では、それは間違いなく正しい判断だった。
しかし、目的達成優先で簡易な術式で組まれる魔法弾は、作成者の魔力色に光を放つ、遠目にも目立つ攻撃魔法だ。
全ての状況を説明できる神の視点をもつ者のいない学園の庭で、王子の昏倒、謎の流言、防衛用とはいえ攻撃魔法の行使。
それらの情報は危機を伝えようと叫ぶ者達の声に乗って学園を伝播し、狂騒をより激しくしていく。
その狂騒を収める手段はないわけではなかった。
一つは、エイナ=ゴルドランスの一喝。
理性的な意思を持って、ラウンジのテラスの様子を見ようと上がってきた者達も。
あるいは衝動に駆られたり周りに釣られたりして飛び出してしまった者達も。
彼らの殆どは学園中等部の生徒達である。
彼らの耳に馴染んだ全総代エイナの声。
それも、アルト王子のすぐそばにいたことを皆が知る彼女が皆に落ち着くように命じて、王子の安全は自分達で確認すると堂々と宣言していれば、かなりの生徒が安心と共に狂騒から覚めたことだろう。
もう一つは、第二・第三王子の宣言。
それは、この場で最高の地位を持つ彼らの宣言が生徒達を安心させるから、というだけではない。
今回の狂騒は、間違いなく彼らの手の者が大きな原因だった。
「今回のお茶会を、自然に失敗に導く機会があればそうするように」と、人伝に指示を受けた者達がそれだ。
暗殺だ、内乱だ、他国の兵だ、など根も歯もない流言を放ち、狂騒を深める者。
あるいは事故に見せかけて空を飛ぶ生徒にぶつかっていく者。
命令系統がまるで異なり、互いに互いを認識せず、けれど彼らは相乗効果でただただ場の混乱を深めている。
それは、お茶会の失敗を「生徒会のちょっとした失敗」程度に収めたかった二人の王子にとって意図しない、暴走とも言える行いだ。
人伝に密かに広範囲にと、意図を知らさず目的だけを曖昧に伝えられた者達が多かったからこその弊害だった。
とはいえ、そうした混乱を煽る者達は、自分達への本当の命令者を知らないにせよ何かしらの形で二人の王子の傘の下にいる。
王子の宣言で混乱を収めるよう命令が降れば、彼らも手を緩めることは間違いなかっただろう。
しかし、その二つのどちらも、狂騒の中心であるラウンジのテラスから発せられることがなかった。
エイナはアルトの「謎の昏倒」が今日この場の明確な敵、二人の王子のどちらかが手引きしたものと疑った。
したがって、エイナが咄嗟に取った行動はその二人からアルト王子を背に庇い、睨みつけるというもの。
「いったい何をされましたの!?」
もはや、表向きの和やかな会談を維持するなどと言っている場合ではなかった。
とはいえ、エイナの立場で王族に杖を向けるわけにもいかない。
毒を盛ったか、あるいは未知の魔法か。
まさか弟王子二人、あるいはそのどちらかがそうした直接暴力に及ぶなどとは思っていなかったエイナは自分の見通しの甘さを後悔しつつ、覚悟を決める。
両腕を横に大きく広げ、ただ気丈に二人を見据えた。
「まさか……」
「ぅん?……」
しかし、エイナに睨まれる二人も、当然そんな謀をした覚えはない。
当然の帰結として、自分ではない、もう一人の王子が仕掛け人という疑いを覚え、互いに距離を取る。
緊張感の高まる3人に地上を気にする余裕はなかった。
残る第四王子、第五王子も倒れたアルト王子の元に走り寄り、エイナに指示を仰ぎながら兄の身体を横に寝かせる作業で手一杯。
こうしてラウンジのテラスを中心に広がった狂騒は、テラスの沈黙と恐ろしいボタンの掛け違いを受け、止まることを知らずに広がっていく。
「アリス! お兄様のところに飛んでいくわ! ついてきなさい!」
「待って! こんな有様じゃあ、空は危険ですよ! 姫様は真っ当に建物の中から向かうべきでは!?」
「おっけー、なら任せて。ソプラ様は僕が連れて行くよ」
そして、飛行する生徒たちで溢れる校庭の一角に。
対応を決めかねて狼狽える地上の群衆を突っ切りながらラウンジに向けてまっすぐ駆ける三人の男女がいた。
フードを被った背の低い女性を先頭に、よく似た栗色の髪をした男女がその後ろを追っていく。
狂騒の中にある校庭でその三人に注目する者は少なかったが、彼らの手で状況は大きく動いた。
「仕方ないわね。アリス、指輪を貸すから先に行って! お兄様を頼むわ!」
「はい、姫様! 先に失礼します!」
三人のうちの一人、栗色の髪の少女が指で十字を切る。
それと同時に混迷の中心、衆人環視で見守られるテラスの上にいた五人の王子達が右手に装着していた指輪が光り出した。
「いったい何をされるおつもりですか!?」
対峙していた二人の王子の指輪から魔力光が漏れ、警戒の声を上げたのはエイナだった。
エイナには指輪に関する知識があった。
高度な癒しの魔法や強力な攻撃魔法、空間跳躍といった、行使のために膨大な魔力と国への申請が必要な魔法を日に数度、無条件で行使できる王族専用の魔道具だ。
そう聞くととんでもない代物だが、魔術式の構築や魔法の制御はあくまで装着者本人が行わなければならず、相応の技量が無ければただの魔力タンクでしか無い。
しかし、秀才で知られる第二王子や魔道具を含む幅広い市政知識に貪欲な第三王子が指輪を使うというなら、警戒して然るべきであった。
「ち、違うで! これは単なる共鳴の光ぃや! 誰かが近くで同じ指輪を使った大魔法をーー」
慌ててエイナの疑いを否定した第三王子の言葉を証明するかのように、王子の背後に虹色の魔力光が吹き上がった。
「ぉわあ!?」
膨大な魔力の奔流が生み出す風圧に吹き飛ばされ、受け身を取って立ち上がる第三王子。
「これは空間転移魔法の出口、か? 姉上の魔力色では無いが……」
呆然と虹色の柱を眺める第二王子。
今の王族でここまで複雑な魔力色をした者はいない。
その上、空間転位という極めて高度な魔法を扱える王族唯一の存在である第一王女の魔力色は紫の単色である。
それはつまり、王族の指輪を借り受けた何者かが今この場にやってこようとしているということだ。
派手に現れた虹色のゲートは地上での進退を迷う生徒たちや、空中で睨み合う者達全ての視線を集めた。
空から生徒を煽り立てていた下手人も思わず手を止めてそちらを振り返る。
テラス防衛線の中心として空を無手で舞っていた青髪の少女も。
騒ぎになった校庭の様子を見に駆けつけた教師たちの一団も。
木の上の特等席に突っ込んできた上級生と衝突し、あわや落下というところで枝を掴んで耐えていた一年生の三人娘たちも。
皆の視線を一身に集め、その女の子は虹色の光を纏って現れた。
「……天使様?」
現れた少女を見てそう呟いたのは芸術に造詣が深い第四王子。
かつて神の奇跡が地上に頻繁にもたらされていた時代。
背中に翼を生やした神の御使いは「天使」と呼ばれ、神の託宣や様々な祝福を地上に運んだと言われている。
大魔法である空間転移のゲートをくぐり終えたばかりの少女は、栗色の髪に虹色の残光を光輪のごとく纏わせ、消えつつあるゲートをまるで巨大な羽のように背負っていた。
意志の強さをうかがわせる大きな瞳は魔力の輝きを映して七色に輝き、学園内では中々見られない美しい白のワンピースドレスは、少女の清らかさを強調するかのようだった。
少女はテラスに降り立ち。
「へぶしっ!?」
バランスを崩して頭から床に突っ込んだ。
(((((((((((((((何それ!?))))))))))))))
恐らく、この場に集った多くの人間の心が一つになった瞬間だった。
「あ、姉上から聞いたことがある。空間転移は慣れないと転移直後平衡感覚を崩して転びやすいと」
第二王子が誰に向けたか分からないフォローを入れる中、大勢の前で注目を集めて転倒して見せた少女は、打ち付けた顔を抑えながらよろよろと立ち上がった。
「あ、アルト殿下を 私に治療させて下ふぁい!」
盛大に鼻血を流しながらそう言い放った彼女に、すぐに反応を返せたものはいなかった。
一連の流れに呑まれつつある中、いち早く正気に返ったのはエイナだった。
「貴女いったい――」
「せ、説明はあとで! エイナ=ゴルドランス様! 今からこの指輪の力でアルト殿下に治癒をいたします!」
左手で顔を拭いながら右手に嵌った王族の指輪を見せる少女に、エイナは迷った。
アルト王子の治療ということなら、この謎の少女に頼らずとも、緊急時に備えて待機させていた医術師がいる。
大事があれば生徒会役員が飛翔魔法でこの場に連れてくるというプランは実施できなかったようだが、恐らく今は陸路でここまで向かっているはずだ。
さらにエイナには、この目の前の少女をどこかで見た覚えがある気がしていた。
中途半端に覚えているが故、その正体を思い出せないことに警戒心を煽られ、道を通すことを躊躇わせる。
「アリスを通しなさい! ゴルドランスの布好き女」
そんなエイナの背後から、高圧的な声が飛んできた。
そこにいたのは、身に纏ったローブを派手に脱ぎ捨てた王国の王女、ソプラ=ベルセルグ。
「ラウンジで会った医術師のおじさんたちも一緒に連れてきたよ。これなら安心でしょう?」
そして、銀色の球に乗ってソプラの後ろに侍る栗色の髪の少年と、同じく銀色の球に乗って何故だか目を白黒させている学園所属の医術師の男二名。
「……わかりましたわ、殿下をお願いいします」
アルト王子に最も懐いていることで有名なソプラ王女のご指名とあれば、エイナに否定する理由などなかった。
そして、学園医術師二人に挟まれたアリスと呼ばれた少女が最高位の治癒魔法を行使しようと指輪を光らせだしたころ。
テラスを中心とした騒乱はいつの間にかすっかりと落ち着いていた。
狂乱の中にあった生徒たちは毒気を抜かれ、さらに一旦大きな間を置いたことで落ち着きを取り戻し、役員たちの促しで地上に戻っていき、始まった治療の行く末を見守ることになった。
やがて、先ほどと同じ巨大な虹色の魔力の柱が立ち、治癒魔法の発動が始まった。
アリスと呼ばれた栗色の髪の少女が行使するのは、「回帰」と呼ばれる究極の治癒術式だ。
治癒対象がたとえ現在どんな状態であったとしても、数刻から最大数年前までの健康だった時の状態と比較し、見つかった差異の中で身体を蝕んでいるものを片端から無に帰し、失われたものがあれば失われる前の状態に戻すという、究極の名にふさわしい万能治療の魔法である。
「空間転移に続いて治癒魔法までとは。こんな子をいったいどこで見つけてきたというんだ、ソプラ」
「あっと、お兄様はそこから動かないでくださいましな。この後やらなければいけないことがあるのだもの。それまでお兄様は、そこ」
「――ふむ。なるほど」
「それぇ、僕も?」
「当、然」
「せやろなぁ」
第二王子、第三王子、ソプラ王女が話すのを背後に聞きながら、エイナの目はアルト王子にくぎ付けだった。
昏倒した直後の歪んだ眦が和らぎ、頬に赤みがさしていくのが分かる。
「ゴルドランスさま、嬉しそう、ですね」
「ええ。勿論」
ソプラ王女の従者か何かと思われる少年に話しかけられ、エイナは目の端に涙を滲ませながら首肯した。
原因不明のアルトの昏倒、犯人と思われる第二・第三王子との対峙。
アルト王子の容態も分からないまま不安と緊張ですり減らされた心が、ようやく落ち着きを取り戻しつつあった。
「ソプラ様、治療の方は終わりです。ええっと、胃とか体中の細いところとか、色々弱くなっていたところ、全部健康状態に回帰できました」
「ご苦労様、アリス。じゃあ、アルトお兄様の健康が害された理由も分かったのね?」
「……おそらく、ですけれど」
「回帰」の魔法の恩恵は治癒だけではなかった。
回帰の魔法は、あらゆる過去の状態を読み取る。
つまり、治療を施した対象を害したものが毒であったとしても魔法であったとしても、そこに携わった何者かの魔力の残滓を知ることができるのだ。
通常なら一瞬で散逸するような微量の魔力も、時間という枷を超えて読み取る回帰であれば問題はない。
「お兄様方も分かってますね? ”回帰”魔法でお兄様が癒されたことがどういうことか」
「無論」
「これではっきりするわけやぁ」
”回帰”の魔法は過去、暗殺されかけた王族の命を救うと同時に、その犯人までも突き止めたことで有名だ。
実際のところ、何でもかんでも過去の情報を拾って整理できるような便利な魔法ではないのだが、魔法の対象となる治癒対象の症状に大きく絡む者の情報なら別だ。
「さあ、アリス! 教えてちょうだい! アルトお兄様を昏倒に追いやったのは誰!?」
「……」
ソプラの声を聞きながら、エイナは胸を撫で下ろしていた。
王族の断罪を王族の手で行ってもらえるのであれば、間違いはない。
ソプラ王女のアルト王子への親愛は有名であるから、親族とはいえ、下手人の王様は問題なく裁かれるだろう。
同じく、二人の王子も胸を撫で下ろしていた。
少なくともアルトの昏倒についてはこれで自分の無実が証明されると思ったからだ。
唯一、ソプラに命じられたアリスだけが何故だかとても顔色を悪くしていた。
「あの、……今この場所の会話って魔導学園の生徒の皆さん、みんな聞いています。その、良いんですか、ソプラ様?」
「え? 何を言っているのアリス、今日は元々お兄様の身に何かあったらそうするって説明したわよね? ――あ! そうね! 拡声魔法が必要ね! ヴィル、やりなさい!」
「わかった。やってみる」
ソプラの傍付の少年は胸元から取り出した紙片を見ながら、杖を一振りする。
すると、ソプラの求め通り拡声の魔法術式が展開される。
銀色の細い糸のような線がテラスから地上を伝って四方に伸びていく。
それらは地上の生徒たちの脇を通り、校舎の建物表面を伝ってかなりの速度で長さを増し、枝分かれをしながら伸びていく。
間もなく、テラスの会話を伝える魔法の糸は校庭はおろか中等部の敷地のほぼ全てを網羅するくらいにまで伸びきった。
「これでよさそうね。アリス、言いなさい」
「――その。先ほどアルト殿下が昏倒された原因は――心の……精神をむしばまれたことによるもののようでした」
何か迷うように一瞬だけ顔を伏せたアリスだったが、覚悟を決めたように言葉を語り出した。
「なら、お兄様の精神を蝕んだ人間の正体がわかれば、それこそがお兄様の敵というわけね、誰なの? 分かるでしょう?」
説明を聞くエイナや王子達といった知識人達の脳裏によぎるのは、精神汚染の邪悪な魔法や、毒代わりに用いられる極小の魔獣。
ソプラの脳裏によぎったのは、強靭な精神を持つはずの兄、アルト王子を追い詰めるほどの苦痛を与えるべく、夜な夜な呪いの言葉を呟き、藁人形の魔道具に杭を打ち付ける第二・第三、二人の王子の姿。
「はい……彼女です」
「何?」
「えぇ?」
「え?」
治癒魔法を行使したアリスが指し示した、第一王子アルト=ベルセルグ昏倒の真犯人。
それは、その場のだれもが予想していなかった人物だった。
アリスの指の先に呆然とした面持ちで立っていたのは、青い異国風の装いを纏い、先ほどまで誰よりもアルト王子の快復を喜んでいるかのように見えていた人物。
アルトの婚約者、エイナ=ゴルドランスだった。
次回投稿は3/20予定です
→申し訳ありません。今週の更新が難しく、次回更新日は3/27の予定となります。
→年度末多忙につきさらに更新日予定が4/10へと延期となります、申し訳ありません。
次回はエイナさんとヨルコさんのターンです。