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悪役令嬢三人組っ!  作者: 宇宙人
プロローグ
1/17

第一話:王国陥落

Wiki>乙女ゲーム>か行>金の王子と銀の騎士


~ゲーム内容の簡易紹介~


Q:このゲームはどんなゲームですか?

A:崩壊間近の架空の王国を舞台とした乙女ゲームです。

  あなたは王立魔導学園の生徒になって、王子様や騎士

  様達を恋愛的に攻略することになります。

  攻略の障害となる悪役令嬢など主人公の敵達を叩きの

  めし、王子様や騎士様と愛を育んでください。


Q:叩きのめすと言いましたか? 

  悪役とはいえ、誰かを攻撃しながら絆を深めるという

  のは気が引けるという子もいると思います。そんな子

  もプレイして大丈夫でしょうか。

A:はい、大丈夫です。

  主人公に立ちふさがる令嬢達などの敵役は清々しく、

  時には華々しく敵役を務めてくれるでしょう。

  また、主人公がヒーロー達と正しく結ばれなければ国

  が破滅します。なので結果的に主人公の頑張りは世界

  を救うための頑張りとなります。


Q:国が破滅するとはどういうことですか?

A:ここから先は貴女の目で確かめてください。


Q:……ネタが古くありませんか?

A:旧世代攻略本ネタが分かる貴女も古い時代の人間です

  から大丈夫です。

  ネタが分かった貴女には青春をゲームに注いだそのプ

  レイ歴に免じて。分からなかった貴女にはあまりに眩

  しすぎる初々しさに免じて以下のページからwikiらし

  くゲームの展開をお伝えします。


 ※以下反転文字につき、微ネタバレも嫌いな方は読み飛ばしを推奨します。


 ようこそネタバレありのwikiページへ。

 まずは最大のネタバレをば。

 このゲーム「金の王子と銀の騎士」において、もし主人公がヒーローを攻略できずバッドエンドを迎えてしまうと――





 

「――あのWiki読んどけばああ! わたしの馬鹿!」

「わ、ちょっと! 貴女今の状況分かってる!? 分かってなさそうね! もし分かって騒いでいるなら首を絞めたまま連れて行くわよ!」

「しっ。お二人とも、お静かに。今、良い具合に煙がこちらに……。よし、今から3つ数えますので、カウントが済んだら出ましょう。一斉に窓の外に転がり出ますよ。3,2,1、…今!」


 その日、巨大大陸の西端、建国200年の権勢を誇った"火と土の国"の王都は巨大な動乱の中にあった。

 その国は周辺諸国より飛びぬけて優秀な鍛冶の技術を国の基盤とし、工業都市らしい広大な市場と多くの工場を抱えた大国だった。


 町中の炉から伸びる煙突達は夜も煙を絶やさないと言われていた。

 国産の優良な金属製品・珍しい国外の布類など、雑多な品を店先に吊るし、競うように声を上げる商人たちの活気は、まさに大国の大市場のそれだった。

 国に認可された商人や組合ギルド所属数は、あるいは国民の数より多いのではとまで言われた、あらゆるものに満ち溢れた豊かな国。

 その国が、今日この日、滅亡せんとしていた。


 国の中心には土魔法の奇跡で作られた、鈍色の背の高い家々が並んでいる。

 かつて、どんな大火にも暴風にも負けないように、腕自慢の大工や土魔法使いたちの手で築かれた家々。

 天空から飛来する岩々がそれらの外壁に命中すると、無残なひび割れが広がり、そして砕けていく。

 穴だらけのまま倒壊しない家から今、炭と化した誰かの家財道具や商売道具が内から吹き出した熱風に乗って宙を舞った。

 

 慌てて頭を抑え、駆けていた足を止めた者がいた。

 立ち止まってしまった者の腕を引き、大声で何事かを叫ぶ者がいた。

 そして、そんな彼らに向け、雪崩のような勢いで近づく者達がいた。


 そんな風景が街の至る所にあった。


 街を駆ける集団は二種類あった。

 片方は、かつて城塞とも揶揄されたほど頑丈な我が家や商店を砕かれ、とるものもとりあえず慌てて逃げていく王都の住民たち。

 部屋着に仕事道具と思しき大箱を抱えて走る男もいれば、血を流す父に肩を貸して走る子らがいる。

 その場に留まる重装備の衛兵たちに願いを託し、一心不乱に”彼ら”から逃げようと走る。


 もう片方の集団は、あたかもそんな逃げる市民たちを追い立てるようにして突き進む、雑多な鎧や武装に身を包んだ戦闘集団だった。

 練度で勝る衛兵たちを津波のごとき人波の物量で押しつぶし、予め調べていた進軍妨害となる建築物に火魔法使いたちの炎弾をぶつけ、さながら王都を耕すかのごとく突き進む。


 「傲慢なる王に災いあれ!」

 「周辺国すべての民たちの富と食と家族を貪る悪鬼どもを許すな!」

 「我らは偉大なる”火と土の国”の真の再生を果たす志を果たさんとするものなり! 真に国を憂うなら道を開けよ!」


 掲げる言葉に、信念に、統一感はない。

 非戦闘員である市民にむけた積極的な攻撃は加えないまでも、跳ね飛ばし、蹴りつけることに躊躇を抱く様子はない。

 あるのは狂牛ような闘争心と、ただひたすらに「突き進む」ことのみを目的に心を燃やす暴徒たち。


「”革命党”だ! ”革命党”のゲリラが街に侵入しているぞ! ――王都の門が破られた!? 防衛網もズタズタだと!? くっ、……間違いなくすぐに騎馬隊が来るぞ! 防衛軍は直ちに王城へ迎え!」


 暴徒たちをかろうじて押しとどめていた王都の衛兵たちだったが、内側から破られた門に飛竜の群れが飛び込んで来るや形勢は一方的なものになった。

 飛竜たちが足に抱えた大型空中艦――つい先日、王国に平和的な”観覧船”と紹介されたお洒落な船の扉が開き、真っ黒な馬に跨った新たな敵達が雪崩をうって出て行ったのだ。


 風魔法使いの支援を受けた騎馬隊たちはお手本のような動きで隊列を分けながら王都に展開し、瞬く間に前線に合流していく。

 馬の蹄の音に加え、時折聞こえる剣劇の音がその頻度を増し、その音はどんどん国の中心へと近づいていった。


 そして、国の中心に聳える王城にも、ついに騒乱と怒号の波が到達する。

 昨日まで城下に存在した秩序と歓楽の空間は、暴力という獣に骨まで食い散らかされ、地獄のような風景に塗りつぶされつつあった。

 

 旅人の間で有名な、目も醒める空色の、馬車10台の横列を見下ろす巨大な王城門。

 その艶やかな壁面は次々と打ち込まれる火魔法使いたちの炎弾丸でくすぶり、どんどん穢れていく。

 飛翔の魔法を受けて飛来した数百の攻城矢が音を立ててつき刺さり、ひび割れを深くし、門はいよいよ無残な落ち武者の様相を呈し始めた。


 高熱の炎弾で熱し、凍結の魔法を宿した攻城矢がそれを冷やす。

 急速な温度変化に耐えきれず城壁の一か所に大穴が開くと、そこからはあっという間だ。


 城を攻める者たちが上げる鼓舞の嘶きが城門を乗り越え、城内に侵入を果たす。

 綺麗に磨かれた城の石畳が数十数百の軍靴で踏み割られ、それらを止めようと繰り出された無数の剣と槍がぶつかり合う。


 王城への侵入を手引きした者達への案内で硬い鎧に身を包んだ革命軍兵士たちが列を成して進軍し、一足先に王城前を制圧した革命軍の兵士たちが喝采の声を上げている。


 もはや王城に防衛機構としての機能はなかった。

 既に陥落を待つのみとなったその王城に目を向けるものは多かったが、その一角にある小さな塔から、三つの小さな影が塔の下の庭に向けて飛び降りたことに気付いた者は皆無であった。


「あ痛ぁっ!」


 塔の窓から身を躍らせ、芝生の上に盛大に尻から落下した一人目は、煤だらけの赤髪とあか抜けないそばかすだらけの顔つきを、急造したテーブルクロスの頭巾で覆う、齢13の少女。

 身にまとった上品な薄いビロードのドレスと、それとまるでは不釣り合いな巨大な背負い鞄がちぐはぐな印象を与えている。


「ああもう、トロいわね! ほら! 私の手を掴んで!」


 危なげなく芝生に降り立ち、尻を抱える先客の手を引いて急かす二人目は、険しい目つきを宿した背の高い少女。

 齢13にして既に、西洋諸国のスタンダードな美人といえそうな整った美人顔だ。

 豪奢な金の巻き髪を片肩に垂らし、優雅な雰囲気を纏っているが、抜群の体幹とすっと伸びた背筋からは機敏さを感じさせる。

 着ているものは、一件彼女の雰囲気とは不釣り合いな黒と赤の色合いの東洋の「着物」であったが、少女はそれをいっそ奇妙なほど良く着こなしていた。


「……うん、大丈夫そうですね。見られている感じはありません。ちゃんとした死角に作られているんですね、この場所は」


 二人に続いて音もなく着地し、さっと周囲を一瞥した三人目は、少量の金属があしらわれた黒い衣装――ある国の伝統的な武道着に身を包みんだ、齢13とは思えぬほど小柄な少女。

 色素の薄い青の短髪に、少年とも少女ともつかない幼げな顔。そして顔立ちとは対照的な大人びたグレーの眼差しが良く映えている。


 三人目の少女は、辺りに危険がない事を確認するや、野兎のように駆けだした。


「……ありました。なるほど、窓の上からはちょうど見えない位置ですね」


 少女が足をとめたのは、王城内に無数にある中庭の一つに作られた、ある枯れ井戸の脇。

 あまり整備のされた様子の見えない苔と雑草に塗れた大井戸は、黒い大口を開けて芝生の庭の一角に鎮座していた。


「確認します」


 少女は、足元から流れるような手つきで拾い上げた大きな石をその大井戸の中に放り投げ、肩までの青髪をさっとかきあげるとじっと耳を澄ませた。

 井戸が枯れていなければ聞こえるはずの水音はなく、硬い石などが敷かれていれば鳴るはずの音もない。


「まちがいなさそうですね。ここがきっと、隠し出口です」


 小柄な三人目の少女のその言葉に、おっかなびっくり大荷物を背負って井戸に近づいてきたばかりの一人目と、金属音で喧しい城内を気にしながら最後に井戸に近づいてきた二人目の少女の二人が顔を輝かせた。


「やった! 今作でもちゃんと作ってくれてたんだ! 愛さん愛してる!」

「何とかなりそうで良かったわ。死ぬ思いなんてのは、一度味わえばそれで充分よね。……あ、二人とも待って、ちゃんとランプの灯りを持ってきてるから。備えあって憂いなし。我らが祖国風に言えば、馬の背には情婦より替え槍、だったかしらね。うん、よし。点いた。行けるわ」

「では、私が先に行きます。すぐについてきてください」


 釣瓶に偽装された縄梯子を目ざとく見つけた三人目の少女が井戸の中にそれを放り、三人の少女が井戸の中に消えていく。

 城下でありながら普通の通路からはたどり着けないよう設計されたその場所に、城を襲う革命軍の兵士達が押しかけてくることはなかった。


 やがて三人の脱出した城は炎に包まれ、黒煙を上げ始める。

 剣や槍のぶつかり合う音が止み、代わりに城を攻め落とした兵士らの勝利の勝鬨と石畳を叩く槍の柄の音が城の内外に響き渡る頃。数日前より城に滞在していた隣国の令嬢たちがいることを知るものは誰一人として残っていなかった。

 

 その日、”火と土の国”ーーかつてプロティアラ王国と呼ばれたその地は、巨大大陸パンギアの地図から消えた。

 プロティアラ王国の陥落がやがて、パンギア大陸の隣国や他の多くの国々にとって大きな騒乱の火種になることを本当の意味で知る者は、この時点ではまだいなかった。


「あ、忘れ物した」

「え。まさか、例の宝玉!? ちょっと、洒落にならないわよ!」

「ううん、この国のお土産。せっかく買ったのに……」

「……それ、今言う必要あったかしら? というかあの滞在時間で良く買えたわね」

「まあまあ、お二人とも。まさか今日こういうふうになるとは思わなかったわけですから。しょうがないじゃないですか。それより朝子さん。この移動用魔道具らしきもの、動かせそうですか?」

「やってみるわ。というかもし動かせなかったら私たちこれからどれだけ歩かなきゃいけない?」

「200kmくらいでしょうか。ふふ、大競歩ですね」

「おー、頑張れ朝子ちゃん。わたしたちの未来は君にかかっているぞー!」

「頭が痛いわ……。ん、当たり前だけど魔導回路はこの国、プロティアラ式ね。まあ、何とかして見せるから待っててちょうだいな」


 ごく一部の、例外たる少女達を除いて。


※改行が崩れているとの指摘がありましたので修正

 2話目以降も順次修正します

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