表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/38

鍛冶屋の悩み

投稿。少しずつ書いてたらいつの間にかいつもより長めになってました。鍛冶屋のお話、書いてみたかったんですよね。

 最近思うことが一つある。それは……


「剣が弱い!!」


 そう、武器だ。俺が使っている武器は、未だに街の衛兵さんからの貰い物、RPGで言うと初期武器なのだ。あの衛兵さんには申し訳ないが、この剣、壊れわしないが如何せん攻撃力、もとい切断能力や属性強化などが一切無いのだ。まぁそりゃ、ただで貰えただけありがたいよな。しかし、壊れないだけじゃない武器が欲しいのだ。それこそ、属性付与された剣とか。


 なのでこの休日に、鍛冶屋で武器のオーダーメイドをしてもらいたいと思っている。今使っているこの剣、壊れないので予備武器としては使えるだろう。

 という訳で鍛冶屋に向かわんと寮を出ようとしたのだが……


「シュウ、俺も行かせてくれ!俺、魔法剣士を目指してんだから、武器の調達もしたいんだよ!頼む!」


 別に断った覚えもないが、何故か頭を下げて懇願してくるエリク。……俺、何かした?

 別に断る理由も無いので承諾する。


「ありがとな!いや〜、シュウがこっそり出てくから俺を置いていくつもりかと思った」


 こっそり出ていったつもりは毛頭無かったんだが。まぁいい、エリクも連れて行くか、鍛冶屋に。


「あ、エリク金あるか?今日はカイトの街まで馬車で行くからな」

「え、馬車!?金はあるけど、馬車は苦手なんだよなぁ」


 その気持ちはわかるんだが、その人はカイトの街にいるからな。しょうがないだろ。

 ちなみにその鍛冶屋の情報は、いつぞや師匠の下で修行に精を出していた時に聞いた。「あそこの鍛冶屋って実はかなりの隠れ名匠で〜」と鍛冶屋の良さを教えてもらった。その鍛冶屋へ行くのだ。師匠の剣もそこで打ってもらったらしい。俺の場合、武器に頼っちゃうから、修行が一区切りするまでダメ、と言われていて、あの剣をずっと使っていた。実を言うと、会ったこともみたこともない。どんな人なのか、少し緊張している。


「じゃあ行くぞ、カイトの街に」

「馬車……でも、剣の為なら!」


 俺の横で決意を固めていたエリクとともに、馬車の乗り合い所へと向かう。


---------


「イテッ、あぁ、やっぱり馬車は苦手だ……」

「頑張れエリク、剣の為だぞ。それにあと少しだ!」


 俺は震度で背中を何度もぶつけて痛そうにしているエリクを激励しつつ、俺自身も揺れから襲い来る少々の酔いに耐えていた。日本でも乗り物には強い方だったが、学院の入学以来一度も乗り物に乗っていないし、耐性が弱くなったのかもしれない。道のりは、あと僅か。


---------


「はぁ〜、やっとついたぁ、」

「これ、帰りも馬車なんだよなぁ、キツ。」


 ようやくついた所で、すぐに馬車を降りて一息吐く。徒歩ってこんなに素晴らしいものだったのか。二人して少しばかり酔ってしまった俺たちは、休憩を挟んでから、目的の鍛冶屋へと歩き出した。


 大通りから少し逸れた道、職人たちが集まる通称:職人通り(スミスストリート)の中ほどに位置する。ちょうど現在はお昼時で、職人通りに客足は少ない。


 目的の鍛冶屋の前に立つ。『炎鉄のへパイトス』と書かれた看板が目立つ、二階建ての建物。聞いた話によると、一階が完成した武具を売る販売所及び、金属を鍛えて武器を作る鍛冶場。そして二階が鍛冶師たちの部屋がある生活空間らしい。


 現在はお昼時のため、客足が無いのは分かるが、販売所の売り子に誰も立っていないにが気になった。誰もいない。店内に客二人のみという奇妙な状況に困惑しつつも、耳を澄ます。


「なぁシュウ、誰もいないじゃねぇか」

「エリク、すまないが一旦黙ってくれるか?」

「お、おぉ、すまん」


 エリクに釘を刺した後、販売所のカウンターの奥、鍛冶場の方へ耳を傾ける。鍛冶屋には炎が上がっている。誰かがいるのは間違いないだろう。盗み聞きは決して良いものでは無いと思うが、ここではしょうがないだろう。


 そう言い聞かせ、身体強化魔法の応用で聴覚を強化する。エリクの足音がやたら大きく聞こえて鬱陶しいが、確かに鍛冶場の方からは、確かに言い争うような声が聞こえてくる。喧嘩か何かか?


「どうしてお父さんはそう頑ななの!騎士様に献上する剣が認められれば、ここだってもっと繁盛する筈なのに!」

「そう簡単な話じゃない!沢山の鍛冶師が献上するんだぞ。その中の一つに選ばれるなんて、どうすれば出来るってんだ。やれるならやってみろ!」

「じゃあそうさせて貰うわ!絶対認められる様な剣を打つのよ!」

「まったく……お前じゃ無理だってのに……お、お客さんか。いらっしゃい。初めて見る顔だな。『炎鉄のへパイトス』に何用だ?」

「剣を二本ほど、オーダーメイドで打って欲しくて」

「剣の発注か。おいライラ。お前は打たなくていいからな」

「はいはい」


 聞き耳を立てていると、突然こちらに向かって歩いて来たので、居住まいを正し、来た目的を伝える。


「オーダメイドなら少々値は張るが、そっちから言い出すくらいだから、大丈夫だろうな?」

「はい。お金に関しては大丈夫です」

「なら話は早い」


 解説を忘れていたが、ライラと呼ばれた女性は、その体には似合わないサイズの鍛治用の大きなハンマーを片手で持ち、いかにも鍛冶屋の娘ですっ!って感じだった。真っ赤な作業着は、血など物騒なものではなく、金属をも溶かす真紅の炎を連想させる。……いかにもモテそうなやつだな。こういう奴には大体異性の幼なじみが居るものだが。まぁ後で聞いてみるか。いや、それは野暮というものだろうか。

 そして一方、まだ名前を聞いていない親父さんだが、娘さんと同じ真っ赤な作業着を少しラフにした感じで着こなす、立派な髭を蓄えたやや大柄な人だった。ガタイがいいので、少し圧迫感がある。強そう。


「じゃあ向こうの部屋でオーダーメイドの内容を聞く。あんちゃんらはついて来てくれ。ライラは店番だ」

「嫌よ。私もその話聞く。どうせ店番したって誰も来ないだろうし」

「はぁ……すまないな、あんちゃんら」

「いえ、全然大丈夫です」

「んじゃここだ」


 そこは、石造りの応接室とでも言うか、テーブルを挟んで2つずつ向かい合わせで椅子が置いてある。商談にはもってこい、という訳か。


「まず、作るのは剣でいいよな。さっき二本と言ったが、それは双剣として使うのか?それとも別々か?」

「あーどうしよ。ちょっと待って下さい」

「おう」


 そうか。双剣にするのもアリだな。じゃあ俺は双剣にするか。


「エリク、お前はどうする?」

「いや、俺は取り敢えず一本でいい。片手剣から順に慣れていかなきゃだからな」

「分かった。では合わせて三本、お願いしていいか?」

「おう。三本か。久しぶりに連続で打てるな。双剣と片手剣だな?了解だ」


 親方さんは意外にも器用な手つきで紙にメモ紙に羽ペンを走らせている。字、綺麗だな。

 今更だがこの世界の字がカクカクしたものが多い。日本ではカタカナや漢字に近い。何故かそれも読むことができる。召喚の時の副次効果だったのだろうか。


「じゃあそっちの人!剣のオーダー私にちょうだい。隣の部屋来て」

「あ、おい勝手に……」

「お父さんはもう一人のオーダーを聞いてあげて!個別に聞いた方が効率もいいでしょ!」

「確かにそうだが……もういい。そっちは頼んだ」


 また反論をしようとした親方さんだが、客の前で言い争うのは心象がよくないと気付いたらしい。エリクとの商談を始めていた。


 隣の部屋の椅子に着席し、こちらも商談に移る。


「さてお兄さん、どんな剣をお望みでしょう?」

「ちょっと難しいかも知れないが、魔導結晶(ミスリル)製の剣にしてほしい」

魔導結晶(ミスリル)ですか。と言うことは魔法属性の付与をするんですね?」

「正解だ。今回頼みたいのは、風属性付与と炎属性強化の二つだ。出来るか?」

「そりゃ出来ないことは無いですけど、どうして付与属性と強化属性を変えてるんでしょう?」

「風属性の武器の上に火魔法を重ねると、相乗効果を生んでどちらの威力も強化されるんだ。俺は魔法も使うから、そういう形で頼みたい」

「そうなんですね。騎士様に献上する時の参考にもなりそうです。ありがとうございます」

「なぁ、どうしてその騎士に献上する件で言い争ってるんだ?属性付きの剣を作るまでの実力があるのに、どうして許可が出ないんだ?」

「それはですね……馬鹿な話ですけど、うちのお父さんって過保護なんですよ。だから、「金属の加工は危ねぇからやめとけ」って何度も言われまして。火傷するから、とか重い槌は持てないだろとか。色々言われてたんですよ。はぁ……」


 呆れた、と言った風に肩を竦めてため息を吐くライラ。でもそうなると一つ疑問が残る。


「なら、当然技術とかも教わってない筈だよな。なのにどうしてそこまで実力があるんだ?」

「それなら、父の部屋にあった、鍛治技術についての基本から応用まで全てが書いてあるものを見つけて、そこから学びました。筆者はうちのお爺ちゃんだそうです。お爺ちゃんは純ドワーフで、鍛冶技術は卓越していたそうです。あとは自分で言うのもアレですけど、ドワーフの血による才能だと思います」

「ということは、お前はクォーターのドワーフなんだな」

「そうです。その後もお父さんに隠れて何度も練習してました。今日もそれが見つかって説教され掛けてたの」

「そうだったのか……」


 やっぱどこにだって事情があるんだよな。でも教科書があったとはいえ、属性付与まで出来るとはびっくりだな。


「まあでも、異なる属性付与とか面白そうな依頼、お父さんには渡さない。あなたの剣は、私が打ってあげるから、期待してて欲しい。頑張って仕上げるから、まら明日の夕方ぐらいに取りに来てくれる?腕によりを掛けて作っちゃうからね!」


 彼女は頼もしい笑顔でそう宣言した。俺も期待しておくことにしよう。彼女なら、最高の剣を打ってくれそうだしな。


親方さんの名前、今から決めます。どうしようかな?


少しでも面白いと感じて頂けたら、

ブックマークや評価、感想をよろしくお願いします。

作者は狂喜乱舞拍手喝采します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ