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【閑話】そうだ、流しそうめんしよう

夏の暑さを実感する今日この頃、ふと小学校の頃に食べた流しそうめんを思い出して書くことにしました。物語のキリも良さげだったので。

それではどうぞ。

 精霊祭から既に数ヶ月が過ぎようとしていた。日本にいた頃を思い出す、茹だるような暑さに皆が狼狽していた。


 そんなある日。授業が全て終わった放課後。みんなが暑さにダウンする中、俺は一人ピンピンしていた。


「ねぇ、こんなに暑いっていうのにどうしてシュウだけ平気そうな顔をしてるのよ」

「それはだな、氷魔法を常に展開して体温を調節しているからだ。ただし加減を誤ると体調を崩す」

「最後のところにもしかして体験談かしら」

「あ、確かに、シュウくんの横に来ると涼しいです」

「本当ね」


 おい。人はクーラーじゃねえぞ、とは言えなかった。美少女二人が向こうから寄ってきてくれるなんて中々無いからな。役得だ。


「僕も横失礼します」

「俺も〜。暑い」


 アッシュとエリクも寄ってきた。お前らそれ、暑くないのか?密集し過ぎだろ。周りから見たら見た目が暑苦しいだろうが。


「お前ら!そんなに涼みたいなら自分ですればいいじゃねえか!」

「私、氷魔法の扱いは苦手なの〜」

「僕も……」

「俺もだ……」

「私もまだうまく調節出来ませんし」


「お前らなぁ〜」


 少しは努力しようぜ?チャレンジぐらいしてみ?意外とできるかもよ?っておい、人増えてないか?

 近くで話を聞いていたのか、俺の周りに人が増えていた。なんかリュナとかソフィアが腕を握り出した!おい、流石に恥ずかしいからやめろ!


「あ〜、シュウくんの腕冷たいですぅ〜」

「気持ちいいわね〜」


 そうしていること数分。ずっと耐えていたが、遂に俺の羞恥心に限界がきた。てか恥ずかしさでむしろ暑いんだよこっちは!


「だー!!お前一旦散らばれ!俺が暑苦しいだろうが!」


 うがー、とみんなを振り解き、突如一つの案を思いついた。これはいいかもしれん。


「そうだ、流しそうめんしようぜ!それならみんな身体的にも気分的にも涼しくなれるぞ!」

「流しそうめん、ですか。どんなものでしょうか?」

「俺の故郷にあった、まぁ一種の料理だ。明日まで詳細は伏せておくが、楽しみにしてろ。じゃあ俺は準備するから抜けるな」


 確か、広野の横にある森にいい感じの川があったから、そこでやろう。そう思って学院から出ようとした時、呼び止められた。


「シュウよ、君はこの暑さを凌ぐ魔法を使えるって聞いたよ。教えてくれないか?」

「え?」


 いくら何でも話が回るの早すぎないか?俺さっき教室を出たばっかりなんだが。学院長の情報収集能力には驚くばかりだ。そうだ、いい案を思いついた。


「学院長、教えても良いですが、一つ手伝ってほしいことがあります」

「シュウのことは信用しているからね。私に出来ることなら

手伝おう」

「実はですね……」


 俺は学院長に流しそうめんに関する一部始終と、それに必要なもの、それと開催したい場所を説明した。


「流しそうめん、か。面白そうだ。労いの意味も込めて、教師たちも参加させていいか?」

「もちろんです。で、手伝ってくれますか?」

「あぁ。明日には間に合わせよう。材料は少ないし、それがある場所には心当たりもある。今日中に頑張ろう」


 ということで学院長直々に手伝って貰えることになった。この学院の教師ってホワイトだなぁ。労いのために、っていい上司だな、と心から思う。さぁ、流しそうめんの準備だ!


---------


「まず竹なんだが、開催予定地の森の近くに竹林がある。そっちに行ってくれるか?私は麺の準備をしよう。そっちは私の知り合いがいる」

「分かりました」


 この後二手に別れて材料の調達を始めた。てか、そんなとこに竹林とかあったんだな。



「おぉ、これは綺麗な竹林だな」


 学院長から伺った場所へ行くと、そこには若竹色の綺麗な竹林が広がっていた。上を見上げた時に差し込む陽光がいい味を出している。夕方とかなら夕焼けが反射して綺麗なんだろうな。

 コンコン、と竹を叩いて、質の良い竹を探す。色の青味が少なくて、叩くと澄んだ音の出る竹が良い。程よく歳をとった竹がな。ちなみにこういう知識は日本にいた時のテレビで得た知識だ。あんな使わなそうな知識がこんなところで役に立つとは、あの頃は思ってもいなかったな。


「お、この竹がいい感じだな」


 あおっぽくも白っぽくもない綺麗な緑色の竹。叩いた時に返ってくる音も聞いていて心地よいものだった。よし、これにしよう。


 持ってきたいつもの剣で竹の根元を切り落とす。倒れてきた竹を1メートルほどに切り分ける。意外とこの剣ってずっと使えてるんだよなぁ。一応毎日手入れはしているが、あの時の衛兵さんは意外と業物をくれたのかもしれない。見た目はただのショートソードだけど。ともすれば短剣といっても通じるぐらいだ。


 竹を上から剣で割り、節を取り除いていく。これ、意外と難しいぞ。節が残ってたらそうめんが引っかかちゃうからしっかり取らなきゃな。


 無言で作業すること30分。割った竹両方の節を取って、流す時の竹を支える足も作った。足を作るのを忘れるところだった。これがないと流せないからな。


 竹の準備を終え、竹を抱えながら川辺へ向かう。ちょっと嵩張るし、意外と重い……。


---------


 川辺に竹を下ろし、一息ついてから周りを見渡す。


「おぉ、やっぱり川があると涼しげだな」


 川と森の組み合わせは、見ているだけで涼しい。川の水も透き通っているし、立地は完璧だと言えよう。素晴らしいほどのマイナスイオンを感じる。氷魔法はここじゃ要らないだろうなぁ。


「よし、そろそろ竹の設置するか」


 足を立てて、竹に開けた穴に差し込み、外側を括る。こうすれば外れないはずだ。それを段差ごとに高さを変えて設置する。うちのクラスの大半と一部教師陣が参加するとのことなので、二列作った。参加者が多いのに一列しかないと、最後の方は食べれないからな。


 そうめんを流すレーンは大方作り終わった。これに明日そうめんを流す。さぞ楽しかろう。

 獣や魔物に壊されないよう、氷のドームで覆っておく。ここは王都付近の森なので、魔物なんて滅多には見かけない場所だが、念のためだ。今日の作業を終え、森を後にした。

 そうめんは学院長に任せてあるので寮へ帰る。


 寮の自室に帰った時、エリクに質問されたが、明日まで我慢しろ、と諭しておいた。


---------


 翌日の放課後。授業が全て終わり、本来なら少しずつ教室から人が抜けていく時間。そんな時間だが、今日はクラスのほぼ全員が集まっていた。


「シュウ、流しそうめんってのをしに行くんでしょ?」

「楽しみですっ!」

「僕も楽しみ」

「俺も昨日から待ってるんだからな!早く行こうぜ」

「分かった分かった。ちょっと待っててくれ」


 学院長に先に行って準備するから教師陣も早くくるように言った。そこでそうめんも受け取る。ざるいっぱいに乗ったそうめんは白く透き通っていた。てかざるを直に入れた冷却木箱に入れた運ぶ。そういえばこの世界、保冷バッグはおろか、冷蔵庫もないんだよな。いつか魔法で作れたら便利だろうな。この世界では食材は氷魔法で冷やし続ける、ということをしている。よく食中毒にならないよな。


---------


 森へ入り、例の川辺までみんなを連れてきた。お、氷も溶けずに残ってる。


「シュウくん、あの氷のドームは何ですか?」

「あそこに道具をしまってあるんだ。準備をする。ちょっと待ってろ」


 ドームを氷解させ、竹をご覧に入れる。


「その竹で何をするのかしら?」

「あそこの上から水と一緒にそうめんを流して、それを箸で掴んで取って食べるんだ。冷たくてうまいぞ」

「なるほど?」


 分かってないみたいだが、まぁやってみれば分かるだろ。

最初は俺がそうめんを流して、後で誰かに代わってもらおう。ちなみにつゆはある。そうめんにはつゆが必須だろ?つゆはあるのに冷蔵庫はない。なんとも無駄なご都合主義だな。料理はすごく発展しているのに科学は発展してないだよなぁ。魔法のせいかな。


「さて、あそこにあるお碗と箸を一人1セットずつ取って並んでくれ。そしたら始めるぞ!」


 さぁ、流しそうめん開始だ!



 全員が用意して並んだところに第一陣を流す。


「じゃあ一発目行くぞ〜!前のやつは後ろのやつに少しはきを使えよ。ほいっ」


 そうめんを小さな塊に分け、それを一つずつ流していく。

お、みんな苦戦してるな。まぁ箸なんてあまり使わなしうだしな。


「むーー、ほいっ!」

「ここっ、よし、とれた」


 意外とソフィアとアッシュが上手だ。他の人があまりとれていないだけだだろうけど。

「うーん、全然取れないわ……」

「くそ、逃がしちまった!」


 特にリュナとエリクが下手だ。まず箸の持ち方から違う。しょうがない、教えるか。


「おい、そうめんが掴めてない奴らは、持ち方が悪い奴が多いぞ。箸はこうやって、いつも持ってるペンみたいに持つんだ。エリク、箸をクロスさせたらだめだぞ。リュナ、箸が平行になってるぞ」

「お、こうか?」

「シュウ、これでいい?」

「いいぞ。じゃあもう一回流すからな」


 みんなの箸の持ち方が少し改善されたところで更に流す。

さっきより少し多めに。


「あ、取れた!うん、冷えてて美味しいわ!」

「よし!つゆともいい感じだな!」


 他のみんなもぼちぼちそうめんを拾えているようだ。少なくとも未だに一度もとれていないやつはいない。


「ん?あれって先生たちじゃないか?」


 お、やっと来たか教師陣。学院長とその他諸先生方がいらっしゃった。みな流しそうめんを興味深そうに見つめている。学院長も実物ははじめての筈なので、ここがお披露目だ。


「シュウ、上手くやれているかい?」

「はい。箸に慣れない人もいましたけど、教えれば何とかなりました」

「それはいい。じゃあ今からは私たちも混じる。後で流す側は変わるからシュウも流しそうめんを楽しんでくれ」

「ありがとうございます」


 それからは、教師たちも交えた流しそうめん大会が開催された。そうめんが尽きるころには、飽きを見せず、美味しそうにそうめんを頬張っていた。もちろん俺も食べたが、やっぱりこっちの世界のは美味かった。久々の流しそうめん、主催者だったがこっちも楽しめたし、みんなも涼しめただろう。


 夕方まで続いた流しそうめん大会は、みんなの満足そうな表情で幕を閉じた。

これからは30話とかに一回、話のキリが良い時に閑話休題を上げたいと思います。息抜きも大事だぜ!

次回からは本編に戻ります。これからの閑話もお楽しみに。


少しでも面白いと感じていただけたのなら、

ブックマークと評価、そして感想、よろしくお願いします!

作者は狂喜乱舞します。

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