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クラスで迷宮探索

うわーお、久しぶりのクラスメイト視点。

今回も鈴乃さん目線でお送りいたします、

あと更新遅れましてすみませんでした。

 時は少し遡り、シュウ達の街で精霊祭の事件が解決したあと。フィロの街の小さな王(領主)の城で毎日課される訓練に取り組み、勇者たちは確実に個人としても、団体としても、その力を高めていた。


 生徒たちは訓練に勤しんでいる中、先生やバスドライバー、バスガイドさん達は、城で生徒と別れたあと、催眠術を掛けられ、何らかの理由で城の地下で軟禁状態とされていた。そのことは知らされていない。


 生徒たち、彼らの中で、突出して強い力を持った者が二人いた。

 一人、クラス委員長である鎌月鈴乃。

 二人、文武両道でモテ男の立川京介。


 この二人は、まだ成長途中であるにもかかわらず、実了はAランクの冒険者にも負けずとも劣らない物だった。


 その立川の腰巾着だった四人、その他数名も二人程では無いが、それなりの実力を誇っている。他のクラスメイトも、差こそあれど、C〜Dランク帯の実力がある。勇者たちはまだ発展途上なのだ。


 ちなみに、立川の得物は槍。もちろん勇者の中で最も素質が大きかったので、領主が王から貰い受けた聖槍を所持している。その名を『雷鳴の金剛槍(ダイヤ・ボルト)』と言う。魔力との親和性が高いミスリルと、硬度最高クラスのダイヤモンドの合金で作られた槍に、神の雷を落として作ったと言われる伝説の槍だ。装備時は雷の魔法攻撃力が大幅に上がり、移動速度にも補正がかかる、神話の時代の武器と言われている。


 そしてもう一人、鎌月の得物は、その名の通り鎌。全種類の武器を試して適性があったのが鎌だったのだ。テンプレの様な聖女では無く、どちらかと言うと黒を基調としたカッコいい装備を着ているため、クラスの女子に厨二病、と弄られている。そんな彼女の鎌は、『満月の氷鎌(ルナ・アイスサイズ)』。率直な名前だが、その名の通り氷属性の鎌で、攻撃を当てると自身の体力と魔力を吸収出来るという便利過ぎる効果を備えている。


 そんな彼らだが、誰も『紅と蒼の双刃剣(ブルークリムゾン)』を扱うことが出来なかった。この武器は、二本の剣から成る双剣で、片方だけでも充分な力を発揮する。歴代勇者の一人は、その扱うための力をパートナーに分け与え、まさに一心同体といった様子で戦ったとされている。


 今日、いつも通り訓練所に集まった時、こんな知らせを受けた。


「本日より、勇者様ご一行で迷宮探索に行ってもらいます!迷宮探索をするときには、5パーティで1パーティーに6人ずつです。一度6人組を作ってください。出来るだけ実力が近い者同士で組んで頂けると幸いです」


 戸惑う勇者たちだが、取り敢えず6人組を作る。その中の一つは、立川と鎌月、そして立川の取り巻きである山田と新島、内田と飯田の4人が同じパーティーだ。立川と鎌月が強制的に組まされたので、取り巻きが付いてきたのだ。下手に実力があるので、断ることも出来なかったのだ。


「皆さん6人ずつですね。では、引率はセレナさんにお願いしていますので、そちらに着いて行って、馬車に乗ってください」


 みなが言葉に従って出ていく。


「馬車って苦手なんだよ……」

「馬車自体は何度も乗ってるんだから、いい加減慣れなさいよ」

「衝撃が直に来て尻が痛くなるんだよ!」

「それはみんな一緒よ!」

「和樹、美奈、止めろ。それは言っても仕方ないだろ」

「それもそうだな……」


 この二人、山田和樹と内田美奈はいつもこんな感じで仲が悪いので、これも日常茶飯事ではある。こんな中に放り込まれた鈴乃は、フードを被って静かにしていた。もちろん、黒色の。


「どうして私がこんな事に……」


 ちょっと不憫な鈴乃さんであった。


---------


 馬車に揺られる、というか振られること1時間ほど。ようやく着いたとの事で馬車を降ります。


「イタタタ……」


 やっぱりこの馬車はお尻が痛いです。サスペンションの取り付けと乗り心地の改善を要求します……。


「では皆よ聞け!より実力のあるパーティーから順に入っていく。地図を見ながら、今日は10階層を取り敢えず目標としている。迷宮については講義を受けていると思うので、しっかり気をつけながら進み、死人が出ないように努めてくれ。では鈴乃のパーティーから行ってくれ!」


 セレナさんの激励を受けつつ、地図を受け取って迷宮の中へ。ここからは真剣に行きましょ。


---------


 迷宮の入り口の階段を降りた途端、空気が変わった。外の温かな空気などではなく、戦いの場である事を示す血のような臭い。血の匂いはしっかり嗅がないと認知できないレベルだけど、それは入り口付近だからだろう。


「よし、みんな。ここからは少し真剣に行くぞ。命を大事にしていくぞ!」

「おうっ!」


 勇者である立川くんの号令で緊張感が高まる。周囲を警戒しつつ、地図に沿った道順を進む。


 少し歩いたところで、張っていた私の魔力感知に反応があった。


「前方、20メートルぐらい先の角に魔物よ!」

「分かった。和樹、美奈、前に出ろ。みんな行くぞ!」


 ちなみに今回の編成配置は、前衛は立川くん、山田くん、内田さん。中衛兼索敵が私。そして後衛が新島くんと飯島さん。前者から順に勇者、剣闘士、魔剣士、魔鎌士、射手、魔道士だ。生憎にも仲の悪い二人が近い職業で、いつも張り合っている。凄く張り合っている。もう慣れたけれど。


「俺のが先だ!『疾風斬(スピードスラッシュ)』!」

「でも他は貰うわよ!『付加炎弾(エディットフレア)』」


 疾駆する山田くんが一匹のゴブリンを剣で貫く。その間に自身の剣に炎を付加し、横に一振り。そこから放たれた炎弾が数匹のゴブリンを焼き尽くす。


「おー。俺が出る幕も無く全滅させたな」

「くっ、美奈に負けたっ!」

「ふん!あんたはまだまだなのよ」

「次は俺たちにも戦わせろよ」

「そうそう、することがないのって辛いのよ?」

「……」


 そんなことで張り合っている場合では無いことに気付いて欲しい。また魔物が迫っている。しかもさっきより数を増して。


「また、魔物が来ますよ。正面から真っ直ぐ。次の階層に進むなら通らないといけません」


 その魔物たちは、地下へ続く階段への道を塞ぐようにしていた。番人、といったところかな。


「よし、全員で行くぞ!」


 走る。やっぱり速いのは山田くん。移動速度なら立川くんと同じくらい。やる気に溢れていてフライイング気味のスタートだったけど。


「うぉぉりゃぁぁ!『疾駆斬り(ダッシュアタック)』!」

「俺も行くぞ!『雷電刺突(ボルトスタブ)』!」

「『付加風刃(エディットブラスト)』!」

「『曲線射撃(カーブショット)』」

「『岩石槍(アースランス)』」

「……『凍結鎌(アイスサイズ)』」


 取り敢えず鎌に込められた氷の力を一部解放する。発動中に切りつけた箇所を凍結させ、移動速度や感覚を鈍らせる付加効果を持つ。


「せいっ」


 見た目よりも圧倒的に軽い鎌を振るう。感覚的には一キロも重さは無い。ミスリルって凄いね。


「グギャアァァァァ!!」


 先程の先制攻撃で群れの大半を倒す。立川くんの電撃は周囲にいた魔物たちにも影響を及ぼし、棍棒などの武器を取り落とすほどの麻痺効果をもたらした。勇者は状態異常も駆使して戦っている。だからこそ強い。彼は何でもこなすオールラウンダーなのだ。


 その後も鎌を振るう。一度横に薙ぐだけで数匹の魔物を巻き込み、切り裂く。みんなも剣や魔法、矢を放って敵の数をどんどんと減らしていく。


「よし、こいつで最後だな」

「やっと終わったぁ、」


 長かった。最初感知した時よりも数が増えていたのだ。恐らく、戦いを続けている間に他から紛れ込んだのだろう。それにしても多かった。何だか講義で受けた迷宮と少し勝手が違う気がする。よく分からないが、気をつけていくべきだね。


「じゃあそろそろ次の階層に進もう」

「そうだぜ!まだ一階層だぞ?もっと速くして行こうぜ!」

「焦りすぎて転ぶなよ〜」

「転ぶかっ!子供じゃねえんだぞ!」


 迷宮には合わない空気感のパーティーの中、私は山田くんの発言に危機感を覚える。攻略速度を上げるのには賛成だけど、もう少し警戒をしっかりするべきだと思う。


 一抹の不安が残る中、私たちは二回層へと歩みを進めた。

鈴乃さん視点、続きます。


少しでも面白いと感じて頂けたら、

ブックマークや評価、感想をよろしくお願いします。

作者は狂喜乱舞します。(多分)

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