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廃倉庫の最奥に潜むもの

何か文章を悩んでいたら遅くなりました。

代わりに長めになっているのでご容赦を。

 西の廃倉庫という情報を得て、俺は学院へ走る。大通りの人を掻き分けて。ようやく手に入った情報なのだから、早く届けなければ。


「先生!生徒たちの情報が手に入りました!」

「シュウか。入れ。」


 礼をして部屋へ。応接室には、学院長、リュナ、ソフィアの3人がいた。リュナたちはこっちに逃げてたのか。いい判断だと思う。


「彼女らから少し話は聞いている。賊と交戦したのだろう?その様子じゃ、負けて逃げてきた訳じゃなさそうだしな。では、その情報は?」

「はい、賊を戦闘不能にして尋問したのですが、生徒たちは西の廃倉庫に囚われているそうです。」

「西の廃倉庫…、あそこか。調査に行った先生方から聞いたが、行方不明者は他クラスにも居て、しかも全員がそれなりに大きな地位の貴族の子だ。恐らくこれは大金目当ての誘拐犯だな。しかも、うちの生徒を容易く誘拐することの出来る実力を持っている。なので、応援を呼ぶ。途中参加になるが、カナデや騎士団にも協力をお願いしている。」

「師匠が来るんですか!頼もしいです!」

「あぁ、カナデはそれなりに近くにいる上、中々どうして強いからな。戦闘面では頼もしいこと間違いないな。」


 師匠が来るのは心強い!失礼だけど何かノリで来そうな気がする。あの人…フットワークが軽めだからな。


「ねぇ、カナデって人はシュウの師匠なの?どんな人?」

「そうだな、俺の知る限り、剣や魔法の腕で右に出る者がいない、頼りになる人で、俺に桜花流と無詠唱魔法を教えてくれた人だ。」


 ここまで普通に話しているが、賊は一つきになる情報を言った。それは…


「ソフィア。フランドール家の子、ってどういうことだ?」


 そう。賊は、ソフィアをみて、『フランドール家の奴』と言った。ということはソフィアも貴族ということか?


「…はい、私は確かにフランドール家の令嬢です。ですが、このことは精霊祭の後で話します。それまで待って頂けますか?」

「…分かった。待つよ。その時は、教えてくれな。」


 今度改めて答えてくれるそうなので今は追求しない方が良さそうだ。


「ゴホンッ、では本題に戻るぞ。カナデたちには既に連絡を飛ばしている。なので、最初は無理せず慎重に行く。侵入者用の罠があるかもしれんしな。数名の教職員とシュウで良いか?シュウは一部の教職員よりも強いからな。リュナはソフィアを守ってあげてくれ。奴らに狙われるかも知れないからな。」

「「分かりました」」


 今から教職員を収集し、西の廃倉庫での攻城戦へ挑む。絶対に負けられない。というか、エリクは何故拐われたのだろうか。貴族なのか?だとしたら俺の周りに貴族多すぎないか。


 そんな疑問を持ちつつ廃倉庫へ。屋根上を使って一気に向かう。こういう時に風魔法は便利だ。体に当たる風を軽減できるからな。


---------


 しばらく走って廃倉庫まで来た。廃倉庫といっても、使われていないだけで、見た目が異常に汚い訳でもない。だが、街の隅にあり、寂れた感じがする。

 そんな廃倉庫の中からは、多くの人の魔力が感じられる。中に一つだけ異様に大きな魔力を感じる。


「先生、一人だけもの凄く奴がいます…!」

「確かに、一人だけ魔力反応がおかしい。あいつがリーダー格か…?」


 何だか普通の人間よりも禍々しくて強い魔力反応。凄く嫌な予感がしている。だが、救出の為には行くしかない。


「ではここに数人残して中に入るぞ!」


 連絡や偵察用の先生を置いて倉庫内へ。中へ入るのは、俺、学院長、その他四人の先生方だ。寂れた金属製の扉は、かなり重く、身体強化をかけてようやくだった。


「重、すぎだろ」


 扉へ正直な感想を言った時、天井の暗闇から針が飛んできた。それを半身になって躱す。狙いを外した針は地面にカランと音を立てて転がっていった。恐らく毒が塗ってあるだろう。


「先生方、上から毒針です!他方向からも飛んでくるかも知れません!全方位の警戒をしましょう」

「あぁ、了解した。」


 暗闇から針が飛び交う中、先生たちは魔法で打ち落としたり逸らしたりして避けていた。ようやく針が収まったころ、地面が針だらけだった。


「針先を余り踏まないようにしろ!あと、誰か明かりの補充を頼む!」

「『光源(ライト)』」

「シュウ、助かる。もう少し規模を上げられるか?」

「分かりました。これでいいですね。」


 光を強め、より一層、倉庫内を明るく照らす。光を強めた時、一瞬だけ人影が見えた。やはり賊が見張っていたか。さっきの奴らが知らせを入れたのだろう。でも、ここで引き返す訳には行かない。


「先生!魔力反応は地下にあるので、下への階段を探しましょう。」

「分かった。ではある程度手分けして探すぞ。」


 それぞれで探し始める。各個撃破が怖いが、近くに賊の魔力を感じない。それ以上に地下の反応が気になる。本当にあの魔力は何だ?

「あったぞ!ここに地下階段が!」


 その先生の元へ向かうと、タルや木箱に隠れて見え難いが、そこには確かに地下へと続く階段があった。


 階段をおろて地下通路石造りの地下は、まるで迷宮みたいだ。しばらく進むと、行き止まりに当たった。


「これはどういう事だ?今までに分かれ道は無かった筈だぞ。」

「きっと何処かに隠し通路があると思います。ちょっと待ってください。


 俺は壁や床を触り、魔法で作られた偽物の壁が無いか調べる。その部分だけすり抜けるものが多い。見た目だけの壁ってことだ。


 予想通り、突き当たりから少し戻ったところの壁に偽物があった。ここから先へ行けそうだ。


「見つけました。ここに通れる壁があります。偽物なので触れませんけど。」

「でかした。そろそろ襲撃や罠があるかもしれない。慎重に進めよ。」


 慎重に進んで行く。部屋が幾つもあるが、どこにも魔力反応が無い。最奥の部屋だけだ。一つ、禍々しい魔力があり、生徒たちの魔力。そして複数の賊の魔力。生徒たちはともかく、もう少し魔力を隠そうとしないのだろうか。


---------


 遂に最奥の部屋の扉の前に来た。重厚感ある扉に、中の気配から、RPGゲームのラスボス見たいな雰囲気だ。


「全員聞け。生徒の救出が最優先だ。周りの賊は後から来る騎士たちに任せても良い。あのデカい魔力の奴には気をつけてくれ。では行くぞ!」


 作戦は簡単。あの大きな魔力の奴に細心の注意を払いつつ、生徒たちを開放、救出をし、すぐに逃げ出す、といった作戦だ。ちなみに俺と学院長は無詠唱が使えるので、賊の相手だ。


 扉を思いっきり開け、学院長とそれぞれ左右に魔法を放つ。


「『氷嵐(ブリザード)』」

「『パラライズ』」


 右の賊たちは手足を氷漬けにされ身動きが取れず、左の賊たちは体が麻痺して動けなくなった。それに加えて強風を送り、倒しておいた。


 そして、禍々しい魔力のソイツはーー、


「な、魔族…だと!?」


 黒い翼に黒い角。そして高い魔力を持つ人型の生き物。一度師匠に聞いた姿そのままの魔族だった。性格は残忍で狡猾だと言われている。


「ほら、やっぱり来た。強そうな人間が二人と他の奴ら。おいそこの二人、俺と勝負しろ。やっぱり人間は子供を連れてくれば釣れるんだなぁ。ほら賊ども、約束の金だ。」


 つまり、強者を呼ぶために賊を利用して誘拐したわけか。しかも助けに来る可能性が高い貴族連中を連れて。要するに戦闘狂だな。だが、わざわざ奴と闘う道理は無い。


「いや、お前と闘う理由は無い。そいつらを連れ帰らせてくれ。」

「じゃあこうしよう。こいつらを返して欲しければ、この我を倒して行くが良い!」


 …だよな。予想はしてた。でも本当に戦闘狂っぽいな。


「先生、やるしかありません。なぁ、魔族。俺たちが闘う代わりに、その生徒たちをこっちへくれないか。巻き込んだら大変だし。」

「そうだな。我も決闘で死人が出るのは好きではない。自由びするがいい。」


 奴が指を鳴らすと、貴族連中を縛っていたものが消え、身動き取れるようになった。てかアイツ魔族にしては優しくないか?戦闘狂なりのポリシーって奴だろうな。そういうには大体いい奴なんだが、魔族だからなぁ。


「おいお前ら、生徒たちを保護し次第、すぐにここから出ろ。後から追いつく。」


 貴族連中や先生が出て行く中、俺はその中にエリクの姿を見つけた。ホッと息をつくと同時に、あいつも貴族だったりするんだろうか。という疑問が起きる。


「では、そろそろ始めるようじゃないか。初手は譲ってやろう。来るがいい。」


 楽しむ様な口調の中に、あいつの自信が見え隠れしている。だが、絶対に勝たせて貰う。


「先生、行きましょう。あんな奴倒してしまいましょう。」

「そうだな。あいつを早く倒して無事に帰らせて貰う!」

「『獄炎槍(イグニートランス)』!」

「『暴風撃(エアリアルブラスト)』!」


 炎槍(ファイアランス)の更に上、蒼く燃え盛る巨大な槍と、圧縮され尽くした風が相乗効果を生み、とてつもない威力の爆炎を生み出した。


 さぁ、どのくらい効いた?大分ダメージは与えたと思うが…


 煙が晴れ、アイツの姿が見える。


「ふん、やはり我の見立ては間違っていなかったか。はは、やはり面白い。まだまだ楽しませてくれ。」


 所々焼けてはいるが、問題なくそこに立つ魔族の姿があった。くそ、もう少しダメージを与えたと思ったが違ったか。


「ふむ、一つ問おう。何故貴様らは精霊とやらを召喚せぬのだ?人間には一人に一体宿っておろう。」

「ふっ、すまんが私の精霊ではこの地下室に入らんからな。私のだけで十分だ。」


 くっ、精霊のことをすっかり忘れていた。ヴァルならこの広さでも呼び出せるじゃないか!


 あの青髪の少女を思い浮かべ魔力を込める。


「久しぶりだね!どうしてずっと呼んでくれなかったのさ!退屈してただろ?でも、それどころじゃなさそうだ。早速戦わせて貰うよ!」

「あぁ、すまんが頼む。手伝ってくれ。」


 メンバーにヴァルを加え、魔族に向き直る。すると、奴の傷は全て癒え、すっかり元どおりになっていた。


「はは、驚いたか。魔族の固有能力に、少し弱めだが、再生があるのだよ。少しの傷はすぐ治る。では、一人増えて面白くなってきたところで、2回戦と行こうじゃないか。今度は我からも行くぞ!」


 魔族は腰の剣を抜き放つ。そのリーチがすごく長い剣を構え、襲いかかってくる。


 戦いはこれからだ。

少しでもおもしろいと感じて頂けたら、

ブックマークや評価、よろしくお願いします。

作者は狂喜乱舞します。

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