二人っきりで
感想にあった季節の描写も少しだけいれて見ました。
感想ありがとうございます。
飾り付けを終えた翌日。
「さて、今日なんだが、授業は無い。上級生たちは、明日の精霊祭へ向けた特訓や、英気を養う時間に当てている。また、それに当たって教師たちも指導を行なっている。だから、今日は自由行動とする。明日は学院に集まった後、精霊祭へ行く。では解散。それと、シュウ君。この後来てくれないか。ちょっと話がある。」
げ、何で俺だけ呼び出しなんだよ。心当たり節は、ある。
恐らく…アレだろう。
みんなが教室から出て行く。
「シュウ、もし出来れば、後で街の広場に来て。」
「分かった。早く終わらせられるようにするさ。」
リュナと待ち合わせをして手招きをしている先生のところへ向かう。リュナの為にも、早く終わって欲しい。
「先生、話って何ですか?」
「大方予想はついているだろうに。シュウ、知ってるか?昨日西通りの八百屋の屋上に、剣術学院の三年生二人が気絶して倒れていたらしい。…心当たりは無いかね?」
くっ、やっぱりその事だったか。あいつらを放置したのは悪かったな。まぁ、あいつらから襲ってきた(筈)だから大丈夫だろう。というか、あいつら三年生だったのか。やけに弱かったが。
「先生、聞いてください。あいつらが挑発をしながら襲ってきたので、返り討ちにしただけです。魔法も剣も使っていません。」
「うむ、向こうから襲って来た、というのは目撃証言があったから知っている。私が言いたいのはな…」
な、何だ?思わず身構えてしまう。
「よくやった!剣術学院の三年生二人で掛かったのに、魔法学院の一年生一人に魔法も使わず気絶させられた、という良い煽り文句も手に入ったし、我が学院やお前の評判も上がっている。だから、良い意味での呼び出しだ。」
ほっ、よかった。不安とは反対に褒められるとは…てか、評判が良くなった、って何でだ?実力主義だからか。
「まぁ、あの生徒たちは今頃みっちり絞られているだろう。『剣術学院の恥だっ!!』って言って。ははは。」
「確かにそうですね。」
確かに、魔法学院の一年生に喧嘩を売った挙句、体術だけで負けているしな。
「では、もうそろそろ行っても良いですか?」
「リュナ君と待ち合わせしていたな。では行って来るといい。 …チッ、デートかよっ。」
先生の本音が漏れている。ちなみにデートでは無い。まず付き合ってないし。もしかして学院長は独身…?何歳だよあの人…てかあの会話聞こえてたのかよ!
ツッコミどころの多い先生の言動については見なかった聞こえなかったフリをして、街の中央にある広場へ急ぐ。
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初夏の青々とした葉を付けた木々の下、同じ木製のベンチ
の上に彼女はいた。
「すまん、遅くなったな。」
「大丈夫、今ここに戻ってきた所だから。」
リュナの返答を聞いて、学院長の言葉を思い出した。『チッ、デートかよっ』
今のやり取りがデートみたいで、恥ずかしかった。よく考えたら、女子と二人っきりってだけで意識してしまう。
「でさ。シュウ、コレ、着けてみて。」
そうリュナが差し出して来たのは、黒い革製のブレスレットで、所々に赤い模様が入っているものだった。
丁度半袖なので、着けたら目立つ。俺の髪みたいだな。
「あ、凄く似合ってる!私が選んだから、似合うか心配だったの。」
「リュナありがとう。気に入った。これからも付けさせてもらうな。」
「うん!」
俺を待っている時間に買ってくれたのだろう。何かお返しをしたいな。日本でも何か貰ったらお返しをしないと済まない性分だったからな。
「なぁ、これから何をするんだ?」
「あ、このブレスレットをあげる事で頭いっぱいで、何も考えて無かったよ…。」
「じゃあさ、このブレスレットのお返しを買いに行かせてくれないか?」
「え?良いよ、お返しなんて。今度魔法も教えて貰うし…」
「いや、お返しをさせてくれ。昔から、貰ったら何か返さないと、って思うんだよ。だから良いか?」
「そこまで言うなら、分かった。お願いね!」
さて、なにをお返ししようか。同じアクセサリー系が良いな。そう思い、服飾店を探す。するとお誂え向きの良いお店があった。アクセサリーも扱っているだろう。
店内に入る。すると、貴族が使うような礼服から、普通の布の服まで、様々な服と、指輪やネックレスなどのアクセサリーまで幅広く扱っているようだ。
貴族はここまで来るのか…?
そんな疑問はさておき、アクセサリー売り場を向く。
「ずいぶん色んな種類があるんだな…」
一つの指輪の色違いやサイズ違いなど、一つの種類でのバリエーションは豊富みたいだ。
さて、どれにするか。リュナは赤が似合いそうだから、赤が入ったのが良いな。お、これは似合いそうだ。
俺が見つけたのは、小ぶりのルビーのような赤い宝石の嵌まった金属製のネックレスだ。金属製なのに、軽い。
「なぁ、これなんてどうだ?」
「うん、凄く綺麗。でも、シュウが選んだのならどれでも良いよ。」
と言う事でコレに決めた。少しばかり値は張るが、それ以上に綺麗で、なによりリュナに似合いそうだ。
ネックレスを手に取り、会計へ。
「これを下さい。」
「あれ、もしかして彼女さんへプレゼントですか?でしたらラッピングが出来ますがどう致しますか?」
「いえ、このままで。」
「かしこまりました。」
いや、彼女じゃないけどね。だが、今それを言ったら時間掛かりそうだし、現品で渡したいから、包装は断っておく。
無事に購入を終え、先ほどの広場へ戻る。
「はい、コレ。お返しだ。着けてみてくれよ。」
「うん、ありがとう。」
ネックレスを渡し、着けてもらう。
「うん、やっぱり似合ってるな。」
「そうかなぁ、でもありがとう!」
やっぱりリュナには赤が映えるな。似合うものが見つかって良かった。制服なので、そこを見ると違和感があるが、リュナ自身に似合っている。
それからは、リュナと一緒に街を回ったり、ちょっとだけ魔法の練習をしたりした。一人よりもよっぽど楽しかった。
そして、夕日映える帰路に着く。
「ふぅ、今日はありがとう。お陰で魔法の練習もできたし、コレも貰えたし。」
そう言って彼女はネックレスを手に取る。
「それはお互い様だ。俺もこのブレスレットもらえたしな。
本当にありがとな。」
そう言い交わし、二人して笑う。寮の分かれ道。
「じゃあ、また明日。」
「あぁ、明日は精霊祭だし、早く寝ないとな。」
「うん。」
「今日はありがとな。じゃ。」
それぞれの寮へ帰る。
帰った時、珍しくエリクは家に居なかった。
「あれ、珍しいな。早く帰り過ぎたな。夕食でも先に作って待ってるか。」
そう思い、料理を作り、風呂にも入った後待っていたが、その日、いよいよエリクは帰って来ることは無かった。
エリクが帰って来ません。
何処へいったのでしょうか。
エリクの行方は、次話をお待ち頂ければ、分かります。
2日ほどお待ち下さい。
少しでもおもしろいと感じて頂けたら、
ブックマークや評価、よろしくお願いします。
作者は狂喜乱舞した後、全ての読者様に感謝します。