街の飾り付け
25話目。
バックアップが消えたりして大変でしたが、(言い訳)
作者は頑張りました。
精霊に関する授業が始まって二週間が経った。そんなある日のホームルームにて。先生が教卓を叩いて言い放った。
バンッ!
「今日は精霊祭の準備だ!精霊祭まであと二日ある。その間に、授業の時間を使って街の飾り付けを行う!飾りは、既に運営の方々から頂いている。そうだな。実地演習の時のパーティーで飾り付けに行って貰う。リーダーは飾りを取りに来い。」
席を立ち、教卓へ飾りを取りに行くのだが、一番後ろの席だった事が災難し、一番最後に残ったのを取らざるを得なかった。残っていたのは、一本の紐に、沢山の三角形の布を垂らした、いわゆる三角旗、って奴だ。
(作者補足:三角旗のイメージ)
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\/ \/ \/ \/ \/ ←こんなの
…にしても数が多いな。周りが持っていった飾りは、小さなリースの様なものや、宣伝のポスターや地図、などの、設置が簡単なのだった。出遅れた事を後悔する。
「すまん、三角旗しか取れなかった…」
「いや、別に良いわよ。協力すれば大丈夫よ。」
リュナの言葉が胸に染みる。そうだ、別に俺はボッチじゃない!
「それぞれ行ってくれ。飾り付けをする場所は、飾りと一緒にある紙に書いてある。また、午後まで作業は続くだろうから、昼食は各自自由にとってくれて構わない。食堂を利用しても良し、外で食べても良し、だ。では、解散!」
その後の生徒達の行動は主に二つに分かれた。教室を出て早速飾り付けに向かう者と、教室に残って一度話し合いをする者に分かれた。俺たちは教室に残る側だ。
「さて、この三角旗なんだが、大通りや東西の通りの左右の建物の屋上同士をロープで繋いで設置するらしい。だから、大通りの北側と南側の二手に分かれたいと思う。俺は南側に行く。アッシュ達はどうする?」
「僕はどっちでも良いよ。余りで。」
「じゃあ私がシュウと南に行くわ。」
「むっ、じゃあ私はアッシュさんと北側ですね。」
「じゃあ俺とリュナが南側、アッシュとソフィアが北側だな。アッシュ、半分受け取ってくれ。」
「分かった。じゃ行こう。」
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俺たちは大通りに出て、南側を目指す。ちなみに、魔法学院は大通りの北東にあるので、南側のが遠い。あいつらにわざわざ大変な方を押し付ける訳にはいかない。
「シュウ、ずっと思ってたんだけど、ソフィアと放課後何をしてたの?何だか新しい杖も持っていたようだけれど。」
答えにはすぐに思い当たった。ソフィアの魔法の練習のことだな。杖も合格祝いだ。確かにリュナやアッシュ達には話し忘れていたな。
「ソフィアの魔法の練習に付き合ってたんだ。ほら、レベス先生との模擬戦の時に言ってただろ?そしてあの杖は、ソフィアが俺の出したテストに合格したから、祝いに俺がプレゼントしたものだ。」
「あぁー、確かに言ってたわね。」
あれ、何だかリュナの表情が暗い。俺、何か気に障ることを言っただろうか。「プレゼントした」ってとこに強く反応そていた気がする。
「おい、リュナどうした?表情が暗いが、気に障ることを言ってたか?ならすまない。」
「いや、別に大丈夫よ。あ、そうだ!シュウ、私にも魔法を教えてくれない?ヨルは竜化に関することばかりで、魔法を余り教えてくれなかったから、シュウが教えてくれない?」
何だ、そういう事だったか。リュナだったらあの炎の城砦を突破できるまで強くなれるだろう。その時はまた何か贈ってあげたいな。
「もちろんいいぞ。精霊祭の次の日の放課後辺りから始めるか。その時はよろしくな。」
「ありがとう!これで魔法も上達させれるわ。 …それにシュウと二人っきりになれるし…。」
何だか最後の方に小声で何か言っているようだったが、俺には聞こえなかった。わざわざ聞くのは止めておこうかな。
その後もしばらく雑談に興じていたら、いつの間にか南側まで来ていた。楽しい時というものはすぐに過ぎて行く、と感じた。雑談だけでこんなに楽しいと感じるなんて久しぶりだ。本当に良い仲間を持ったなぁ、としみじみと思った。
(作者からの一言。この時の彼らはどう見てもカップルだったようで、後にリュナはクラスの女子にいじられます。)
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「さて、もう南まで来たな。じゃあ飾り付け、始めるか。」
「そうね。ぱっぱと始めちゃいましょ。」
建物の主にしっかり許可を取り、建物の屋上へ。向かいにいるリュナとそれぞれでロープを固定する。ただ結ぶだけじゃなく、魔法も使って固定する。凍らせるのだ。
この作業を何度も繰り返し、ちょうど大通りの中心付近まで飾り付けが出来た。北側を見ると、ちょうどアッシュ達が作業を終えて一旦休憩しているところだった。
「お、シュウ。そっちは順調そうだね。」
「そっち側もな。昼食を挟んだら、東西もいくぞ。」
「私たちで西通りをするわ。ソフィア達は東側をお願い。」
「む〜、分かりました。」
取り敢えず、昼食は屋台でいい匂いを出していた串肉をみんなで食べた。タレと肉の絡み具合が絶妙で、すごく美味しかった。ちなみに、リュナと俺は二本目も買って食べた。
二本目は塩ダレでいただきました。
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昼食を取った俺たちは、今度は西側に来ていた。
「こっち側には剣術学院はあるわよね。」
「そうだな。生徒には会いたくないな…」
そう。ここの西側には、剣術学院がある。
剣術学院生と魔法学院生は、基本的に仲が悪い。あったら面倒な因縁つけて来そうだ。
「そうね。だから急いで終わらせましょ。」
全くだよな。俺たちは少し慣れた手付きで作業を進めていく。飾り付けを進め、西通りの半ばほどまで作業が終わったある時。
「ん?あれってもしかして魔法学院の奴らじゃねえか?」
「本当じゃねえか、おい、お前は魔法学院の生徒だよな?」
面倒なのが来てしまった。西側にいたらそりゃ誰かいるよね。剣術学院の生徒が。とはいっても、こいつら、俺をからかう為だけに屋上まで来たのか。馬鹿だろ。
流石剣術学院の生徒、二人ともガタイが良い。だが、凄く脇が甘い。余りにも隙だらけだ。取り敢えずファーストコンタクト。
「そうだ。お前らは剣術学院の生徒だよな?」
「その通りだ。ところでお前は何をやっている?」
「ん?精霊祭の飾り付けだが。」
「なるほど。僕達の勝利を彩ってくれている訳か。強者を彩るのも弱者の務めだよなぁ。」
そう言って奴らは高笑いする。
何故そういう思考に行くのかは分からないが、弱者、という部分に反応してしまった。僕達の勝利、ということは恐らくこいつらは二年生辺りだろうか。弱そうだし。こういう奴には、実力差で分からせるしかない。
「でもな、こっち側でもやし風情がうろちょろされるのも困るんだよ。だから帰れ。」
「そうか。そんな下らない理由なら、従う理由は無いな。」
「こいつっ!言わせておけば!」
よし。これで向こうから襲い掛かって来たことになるな。もし見られていても、正当防衛みたいに扱われるだろ。
と、いう訳で速攻で脇腹と首元に手刀を入れて気絶させて終わり。脇腹にも手刀を入れたのは、少し懲らしめようかと思って、再発防止の意味も兼ねた手刀だ。
「よし終わった。リュナすまん!結ぶから待っててくれ!」
俺は作業を再開する。
俺は、先程の剣術学院の生徒とのやり取りを建物の陰で見ていた姿が一つあった事に気がつかなかった。
「何、あの体捌き!?一瞬で内の三年生を気絶させたんですけど!魔法学院の生徒なのにカッコいい!精霊祭でまた会えたら良いなぁ。」
…実はこいつ、後から非常に面倒な事になるのだが、この時の俺には知る由も無かった。
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俺たちは作業を続け、遂に東西南北の通りの飾り付けを終えた。みんな疲れた様子でベンチにもたれかかっている。ちなみに、俺は師匠に死ぬほど素振りをさせられていたおかげで、体力はあるので、みんな程じゃない。
ちなみに、アッシュとソフィアは口を開く事すらせず、ベンチに倒れ込むみたいになっていた。
「シュウだけどうしてそんなに余裕なのよ…」
「まぁ、前に師匠に色々させられてたから、体力には自信があるんだ。それより、今日はみんな疲れたろ?特にアッシュとソフィア。だからもう帰っていいぞ。先生への報告がいるらしいが、俺だけで行ってくる。お前らは寮で休め。
『回復術』ほれ、これで歩けそうか?」
取り敢えず回復術を与えて帰れる位の体力を回復させる。
「ありがとうございます。ではもう失礼します…」
「ありがとう、僕も帰らせて貰うよ…」
二人は凄くぐったりとした様子で帰って行った。
「リュナは帰らなくていいのか?」
「回復術で私は回復したから、シュウについて行くわ。心配しなくて良いわ。私、これでも竜人なのよ?」
大丈夫だろうか。本人がそう言ってるなら信用しよう。
リュナと一緒に学院へ戻り、教室へ。そこには、書類片手に机に突っ伏した学院長がいた。
「おぉ、君たちか。いやー、疲れた。書類仕事をずっとしてたら筋肉痛になってしまってな。イタタタ…」
「それは大変ですね。医務室に行っては?」
「いや、この仕事が終わるまで動けないんだよ。」
「じゃあ、回復魔法を自分に掛けてみてはどうでしょう。」
「その手があったな!『回復術』ふぅ、これで少しは楽になった。じゃあ、報告を受けようか。」
「あ、はい。三角旗の飾り付けを終えました。大通りと、後は西と東の通りにも設置しました。」
「分かった。では君たちはもう休んでいいぞ。」
「はい。ありがとうございました。」
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報告を済ませて、寮へと戻る途中。
「きゃあっ!」
リュナが石に躓いて盛大に転んだ。
「大丈夫か?何か考え事でもしてたか。」
手を差し出すと、顔を真っ赤にして、小声で
「ありがとう…」
と言って、素直に手を取ってくれた。その顔に、不覚にもドキッとしてしまった。剣術学院の奴を懲らしめて、リュナの可愛いところが見れて。今日はラッキーだったな。
少しでもおもしろいと感じて頂けたら、
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本作品を読んで頂いている読者の皆様、本当にありがとうございます。
作者も以後精進して参ります!