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練習の日々と合格祝い

今回は他者視点です。

ソフィア視点でお送り致します。

 私、ソフィアと言います。


 まだみんなには話していませんが、公爵家の出身です。本名をソフィア=フランドールと言います。


 公爵家の貴族と言うものは、金髪碧眼の持ち主がほとんどです。だから、この白髪のせいで、色々な軋轢がありました。今の貴族には、見た目で人を決めつける人もいます。そういった人たちが、お前は貴族に相応しく無い、などと言われます。私の父や兄弟も、私を馬鹿にしました。


 でも、母は違いました。周りと違う、こんな私を受け入れてくれました。母だけは、私を大事にしてくれました。

 そして、このラノア魔法学院に推薦して、貴族たちと関わりにくくしてくれました。


 私は、初めてシュウ君と出会った時、変わった人だ、と思いました。珍しい黒い髪に、ルビーの様に綺麗な赤い目。貴族社会で暮らしていた私は、相手の目を見れば、大体のその人の考えていることがわかりました。


 商売人なら金に眩んだ目。貴族なら見下すような目、蔑むような目、子供なら純粋な目。などと言った様に。


 でも、シュウ君の目はまるで、戦いなどとは無縁な人の様に優しい目で、私にも優しく接してくれました。

 そんな綺麗過ぎる目なのに、魔法や戦闘では強く、飲み込みが良いことも知りました。


 実地試験でそれらを目の当たりにしました。オーガ三人を一人で凌ぎぎったり、たまたま知っていた魚の取り方を一度説明するだけで完璧にこなすなどと言った風に。


 彼の凄さを上げるとすると、キリがないです。でも、一番印象的なのは、あの炎。


 ルビーの様な目とは正反対の、美しい青色の炎。色のコントラストに、私は見惚れていました。


 レベス先生との模擬戦でも、騎士(ナイト)の精霊とのチームワークは完璧だったし、何より強かった。


 魔法に加えて剣も使えるし、流派も珍しいあの桜花流。

 あの一撃、あの美しさに私は心奪われました。


 その日、彼に師事を請うた。彼の指示通りに練習すると、無詠唱も少し出来るようになりました。


 そしていつからか彼の横に並び立ちたいと、そう思う様になっていた。だから私は努力を重ねる。彼の元で魔法の練習をする。


 夏休み前の魔法剣術大会(フェンジック)では、彼にも勝る好成績を残すのを今の目標としました。


 そして、今も尚練習を重ねています。


「『氷弾(アイスバレット)』!『氷弾(アイスバレット)』!氷弾(アイスバレット)』! はぁ、はぁ、出来ましたよ!氷弾(アイスバレット)の三連射、出来ましたよ!やったぁ!」


 練習を重ねる内、氷弾(アイスバレット)の無詠唱は、完璧に扱えるようになっていました。


「よし、良い調子じゃないか。じゃあ次は中級の氷槍(アイシクルランス)だな。また連射出来る様になれ!」

「はい、頑張ります!」



 この時から、私は毎日、毎日、練習を重ねました。


 よく失敗もしましたけれど、シュウ君のアドバイスもあって、無詠唱を上達させていきました。


 そんな今日、シュウ君がこんなことを言いました。


「さて、今までよく練習を頑張った。今日は、試験だ。その内容は、俺との模擬戦だ。俺が合格と判断するまで続ける。それだけだ。」


 シュウ君と模擬戦をする事になりました。彼と模擬戦だなんて、勝てる気がしませんよ。

 でも、合格と判断される事、が目標なので、出せる力を出し切って、合格を貰いたいと思います!


「出せる限りを出して、合格を取って見せます!」

「あぁ、その意気だ。練習の成果、見せてくれ。」


「じゃあ、始めるぞ。魔法、撃って来い。」

氷弾(アイスバレット)!」

炎壁(ファイアウォール)


 私の放った氷弾は、彼の青い炎の壁に当たって消えた。


炎の城砦(ファイアフォートレス)


 彼は、自身を覆う炎の城を建てた。


 恐らく、これを突破することで合格なのでしょう。ですが、私使える無詠唱魔法は上級まで。上級でも十秒ほど掛ければ使えます。


「でも、あの炎の城を貫通するほど、私の魔法に威力は無いです…どうしましょう…」


 考えて、ソフィア。どうやったらアレを突破出来る?


 氷の温度を下げる?でもどうすれば…

 氷を増やす?でもそれじゃあ全て溶かされてしまいます…

 氷の速度を上げる?溶けきる前に。ですは、入った途端に溶けてしまいそうです。

 一体どうすれば…


「悩んでいるみたいだな、ソフィア。一つだけヒントをやろう。お前が使える魔法は、氷魔法だけなのか?」


 炎の中から、彼の声が聞こえました。私は思考が狭くなっていたようです。彼の言う通り、私が使えるのは、氷魔法だけじゃない!


 なら、土を被せ、水魔法で炎を弱めて、そこに風に乗せて速度を上げた氷槍(アイシクルランス)を撃てれば出来るかもしれません。


 私はイメージを固めていきます。先程、具体的な想像が出来たので、それを再現します。


「『土砂落下(ダートブロウ)』」

 土砂を被せる。

「『雨乞(レイン)』、『水球(ウォーターボール)』」

 小規模ながら雨を降らせ、水球を待機させる。

「『氷槍・冷(コールドアイスランス)』」

 私の出来る極限まで温度を下げた氷槍。それを…

「『突風・追風(ブラストインパルス)』!!」

 風で加速し、水球と共に放つ!


「お願いっ!」


 どうか氷よ、彼まで届いて!


 土砂や水魔法たちによって弱まった炎の城砦に、加速を受けた最高速の氷の槍が飛ぶ。

 水球が思いの外周囲の炎を弱めてくれていた。


 そして遂に、氷槍が炎の壁を突破したと同時、氷槍は溶けきって消えた。

 穴の空いた炎の壁から、彼の顔が見えた。


「試験、合格だ!」


 彼はそう叫び、炎城砦(ファイアフォートレス)を一瞬にして消した。


「やったぁ!私、合格出来ました!」


 合格、それはつまり、彼、シュウ君に認められたと言う事で。


「あぁ、ソフィアはもう十分、一人前の魔法使いだ!」


 その言葉が嬉しくて嬉しくて、前回の事も忘れて、また彼に抱きついてしまった。


 でも、今日は彼も分かってくれたのか、笑って受け入れてくれた。それがまた嬉しくて。

 しばらくの間、彼と喜びを分かち合った。



---------


 さて、落ち着いたところで。


「これから、どうしましょうか。」

「合格祝いに、街に何か買いに行かないか?」

「良いですね!行きましょう!」


 合格祝い!何だか心躍るものがあります!


 私はウキウキしながら街へ向かった。


---------


 私は街に着いて、ふと思いました。


 これって、デートでは!?彼にその気は無いかもしれませんが、側から見ると、完全にデートなのでは!?

 こういうのは、一度意識してしまうと、ずっと苛まれてしまうものだ。


 うぅ、一回意識しちゃったら、シュウ君の顔見れないよ…

 

「どうしたソフィア、顔が赤いぞ?流石に疲れたか?だったらまた今度買いに来るが…」

「い、いや、だだ大丈夫ですっ!」

「そうか?噛み噛みだし、顔赤いし、体調が悪いなら、早めに言えよ?」

「わ、分かりました。」


 あー、心配してくれる嬉しさよりも羞恥心が勝っちゃう、恥ずかしいよぉーー!


 私は一人で悶えながら、お店の前に来た。


「ここだ。」

「武器屋、ですか?」

「あぁそうだ。だけど買うのは武器というより…」

「もしかして、杖、ですか?」

「分かったか。そう、杖だ。俺が教える機会は減るし、自分で魔法を使うなら、杖があった方が良いだろ?」


 杖、ですか。杖には詳しく無いので、大人しくシュウ君に着いていきましょう。


「さて、どの杖にするかな。」

「私は杖に詳しく無いので、シュウ君が選んで下さい。」

「ん、良いのか?デザインとか選ばなくて。」

「はい、シュウ君に選んで欲しいです。」

「じゃあ、どれにするかな。」


 ん〜、と彼が珍しく考え込んでいます。彼が悩んでるところって、あまり見たことないなぁ。


「ん!これがいいな。」


 彼が手に取った杖は、青い宝石の埋まった杖でした。

 その美しい青色には、不思議と心惹かれるものがありました。


「気に入ってくれたか?この宝石は、水や氷属性の補助をする効果がある。それに、お前の目と同じ、青色だろ?」


 そう言って彼は笑う。素直に凄く嬉しい。理由が‘お前の目と同じ色だから’だなんて、カッコよ過ぎません?

 これが合格祝いという前提が無かったらヤバかったです。


「じゃあ、買ってくる。」


 彼はカウンターで購入手続きをする。途中で店員さんが私の方を見て、それに彼が首を振っているのが見えた。何の話をしてるんだろう?


 購入を終えた彼と一緒に店を出る。


「と、いう事で合格祝いだ。ソフィア、おめでとう。」


 彼はその杖を差し出す。私はその杖を受け取り、見つめた。

 これがシュウ君からの合格祝い…!


「シュウ君、ありがとうございます!」

「その杖、大事にしてくれよ?」

「はい!もちろんです!」


 周りに人がいるので、何とか抱きつくのを堪えられた。

 彼のところにいると、何だかフッと安心感を覚えるような感覚になる。彼の目を見ると、いつもみたいに優しさに満ち溢れた目で私を見ていた。そこには一点の曇りもなく、綺麗な目だった。何だか気恥ずかしくなって、彼から目を離し、今貰ったばかりの杖を見る。


 青い宝石を見て、さっきの彼の言葉を思い出す。‘お前の目と同じ、青色だろ?’

 カァーーーと顔が暑くなるのを感じる。ここは一度帰るのがいいかも知れない。


「シュウ君、今日はありがとうございました。またいつか、魔法を教えて下さいね!」

「分かった。いつでも言ってくれよ。じゃあな。」



 私は寮へと逃げ帰った。


 帰った先で、顔を赤くして帰ってきた私を、同室の子が質問攻めにし、私は余計に羞恥に苛まれました。


 …う〜、恥ずかしいよ〜!

少しでもおもしろいと感じて頂けたら、

ブックマークや評価をよろしくお願いします。

作者は狂喜乱舞します。

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