蒼炎の勇者の実力
遂に20話達成です!
そんな今回、技名を幾つか考えるに当たって、作者は一時的に厨二病になりました。
その結果、頭の頭痛が痛くなりました。
リュナの素性を知った翌日の放課後。
俺たちは二人で昨日の広野に来ていた。
自分の精霊とのもう一度召喚するためだ。
「さて、この辺で良いか。早速呼んでみるか。」
「うん。分かった。」
あの青髪の少女を思い浮かべて魔力を込める。すると、俺の前に魔法陣が浮かび上がり、炎を纏ったヴァルキリーが出てきた。
「やぁ、シュウ。約束通り召喚してくれたんだね。」
「力を見たい、とか言っていたが、どうやって確認するんだ?」
「それはね。私と戦って欲しいの。それで私が直々に確かめてあげる。」
マジか。こいつと戦う?こいつの口調はおもしろがっているとはいえ、過去の英雄だぞ?
「それじゃあ早速、と言いたいけれど、シュウは剣を使えるのに持ってないね?これを使って。私の三本目の剣。過去の遺物として、凄い価値があるけど…絶対に売ったりしないでね?」
「いや、お前から貰ったものを売るわけないだろ。大切にさせてもらう。ありがとな。」
そういうと彼女は頬を赤らめて、
「私が特別にあげるんだから、絶対に大切にしてよねっ!」
「分かった。じゃあ、そろそろ始めるか?」
「うん。じゃあ行くよ!」
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シュウがヴァルキリーと会話している間に、私も召喚しちゃおう。
あの緑の体の長い龍の姿を思い浮かべ、魔力を込める。
すると前と同じ、紫の霧を漂わせてヨルが現れた。
「ふむ。約束は忘れておらんかったようだな。まず、我がこの姿ではやり辛かろう。目立つしな。」
驚いた。ヨルの姿がみるみる縮んでいく。そして最終的には私と同じくらいの幼龍の大きさになった。
何だかこの姿だと可愛げがある。
「貴様は最終的に翼竜の方へ行っているが、我はどちらかと言うと蛇に近い。伸縮自在だ。」
流石に伸縮しすぎだと思うよ、私。
「力を確かめるってどうするの?シュウ達と同じ感じでヨルと戦えばいい?」
「それでよい。では、我に貴様の力を見せてみよ!」
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俺たちは探る様に睨み合う。
纏う蒼炎も消して地に足つくヴァルキリーは普通の少女だ。今の雰囲気や目つき以外は。
このままでは埒があかないので、俺から仕掛ける。
「『フレア』」
蒼い炎弾で牽制する。するとヴァルキリーは思わぬ行動に出た。
「はっ!」
なんとヴァルキリーは炎弾を剣で切り裂いた。
「魔法を…切り裂いた?」
「そうだよ。君の魔法はそんなものじゃ無いでしょ?他の属性も使えるだろうし。」
「もちろんだ。行くぞ。」
俺は接近し、剣を横に薙ぐ。腕を狙った中段切りは受け流され、カウンターをもらいそうになったが、思い切り跳んで躱した。
「『アストラルフレア』」
ヴァルキリーの放った炎系上級魔法だ。
蒼炎が螺旋を描きながら襲いかかってくる。
「『アクアストリーム』」
俺は渦を巻く水流で対抗する。魔法は相殺し、発生した水蒸気の奥から二本の剣を構えたヴァルキリーが突っ込んでくる。
「『アースウォール』」
ギリギリだが、右手は剣で、左手は魔法で防ぐ。
疾い!疾過ぎる!もし本気で来られたら目で追うことすら出来ないだろう。
だが、一撃を当てて見せる!
師匠の言葉を思い出す。
“自分より速い敵なら、誘導しろ。速さで勝てなければ
頭を使え。誘導して先で、最高の一撃を入れてやれ!”
「『フレアミリオン』」
かつてあの貴族に使った魔法だ。今度は飛ばして使う。
無数の炎弾を順に放つ。向かって右側に誘導するように。
遮蔽物の無い平らな地形なので、誘導がしやすい。
ヴァルキリーは右から回り込んで俺に迫ってくる。
「落ち着け。あいつに、一撃入れるっ!」
感覚を研ぎ澄まし、剣を構える。あの技しかない。
俺の魔法は、ただ放つだけじゃない。剣技と組み合わせることで、より高い威力を発揮する!
「凍テヨ氷ノ剣」
刀身にそって手をかざす。
すると剣は氷を纏い、周囲に霜を下ろした。
「桜花流、剣魔複合術」
「『氷華』」
一閃。
氷の華を咲かせ、横一文字に切る。氷を纏った一撃は、ヴァルキリーにダメージを与えた、 …筈だった。
「まだまだだね。最後の一撃はイイ線行ってたよ。」
俺の攻撃は受け流された上、振り抜いたところに背中を強く叩かれて地面に倒れた。
流石は蒼炎の勇者ってとこだな。だが悔しい。
「悔しいな。お前に勝つにはどうすれば良いんだ。」
「ふふふ。これから私が特訓してあげよう。目標は私に一撃入れる事!頑張ってもらうよ〜。」
すると、急に周囲の天気が変わり出した。
雨が降り、雷が鳴り、風が吹き荒れている。
「何だ?急に天気が変わったぞ。」
「魔力の出どころを見なよ。あの子だ。」
「リュナ!?」
リュナがヨルに向けて魔法を放とうとしているのが見えた。
「あいつ、何をする気だ…?」
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戦闘を始めたシュウ達に続き、私もヨルとの戦闘を始めた。
私は久しぶりに竜化の力を解放する。
ハーフであるため、まだ完全竜化は出来ないが、翼や爪、尻尾を出せば、身体能力をかなり上げられる。
「凍てつかせよ!『フローズンアロー』」
私が放った複数の氷の矢は、全てヨルの尻尾に砕かれた。
「どうした?その程度の威力では、傷一つ付かんぞ。」
「くっ、」
鱗は硬い。どうにかして顔や腹に当てられないか。
「翼竜族なら、風や雷が得意では無いのか?本気を出して来い。」
なら、本気を出すしか無い。一度も使った事のないあの魔法を。
「降れよ雷、荒れ狂え嵐よ、かの敵を打ち滅ぼさん!
『テンペストボルテックス』!」
詠唱を始めると、周囲の天候が変化し始めた。
魔法名を行った途端、大きすぎる雷鳴が聞こえ、視界は白く塗り潰された。
目を開けると、ヨルが黒い旋風に鱗を削られていた。
恐らく、落雷で耐久性が低下して、旋風によるダメージが通っているらしい。
「すまんが、魔法を止めてくれるか。これ以上は我の鱗はが削り取られる。」
私は本気の魔法を打った代償に倒れたまま動けなかったが、魔法の解除ぐらいは出来た。
「貴様、小さくなっているとは言え、我の鱗を大幅にに削るとは。やるではないか。これから特訓をしようと思っておったが、その様子じゃ無理そうだな。また体調が回復してからまた我を呼びだせ。」
そう言ってヨルは消えた。
この状態の私を放置って信じられないんだけど!
遠のく意識の中、シュウの焦った様な足音が聞こえた。
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以前と同じような感触を感じ、起き上がる。
そこは医務室だった。
「あれ?私、何をしてー」
「起きたか。お前、魔法を撃った後倒れて目を覚まさないから心配したからな。次は気をつけろよ。」
そうだった。私、ヨルに魔法を撃って倒れたんだった。
と言うかまたシュウに運ばれたと思うと恥ずかしかった。
気持ちを自覚してしまったから、余計に。
「まぁ、あまり気にすんな。明日頑張れいいんだからな。」
「シュウ、自分の特訓を置いて連れてきてくれたでしょ?ごめんね、迷惑かけて。」
「いい。リュナを助けるのは当然の事だからな。」
…どうしてそう私を恥ずかしくさせるかな?
「リュナは今魔力が枯渇気味だから、ゆっくり休めよ。」
「うん、そうする。色々ありがとね。」
今日は医務室に泊まることになったけど、シュウに心配して貰えて嬉しかった。
だから安心して眠りにつけた。
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翌日の放課後。またリュナと一緒に広野に来ていた。
ヴァルキリーを呼び、特訓内容を聞く。
「私が言った技を再現して欲しいの。大丈夫、君の桜花流を邪魔しない様に、私の我流だから。」
なるほど。出来るだけ流派が被らないように、か。
蒼炎の勇者の我流、楽しみだ。
「まず一つ目は…」
その後俺は幾つもの技を体得した。
一つ目は燕返し。カウンター技だ。剣の反った部分を使い、威力を下に流す技だ。これは戦闘中にヴァルキリーが使っているのを見ている。
二つ目は五月雨斬り。純粋に、無数の斬撃を敵に浴びせる技で、極めれば、抜き身の瞬間すら分からないらしい。
ヴァルキリーの五月雨斬りの瞬間は見えなかった。
三つ目は火月。空中から火を纏った剣を振り下ろす。その時の剣の軌跡が弧を描くので、三日月みたいになる。
ヴァルキリーの火月はあまりにも綺麗だった。
四つ目は不知火。地面を燃え上がらせ、その陽炎に隠れて
斬りつける。完全に見えなくなるが、魔力などは消せないので、魔力の操作性を向上させる事で真価を発揮する。
ヴァルキリーはしばらく見つからなかった。
五つ目は爛れ輪廻。最大まで剣に魔力を纏わせ、それを全て爆発させ、その威力そのままに周囲を円状に斬りつける。斬った場所は爛れ焼け落ちる。また、自分の腕なども焼き爛れると言ったデメリットがある。
ヴァルキリーは火傷程度だったが。
今言った五つの技をある程度使える様になった。実戦で使えるかはまだ怪しいところだが、練習あるのみだ。
何故短時間でここまで出来るか。恐らく俺が勇者として召喚されたからだろう。
自分で言うのもアレだが、能力は無いが、伸び代が大きかった、と言う事なんだろう。
そんな事を思っていたら、ピンポイントでヴァルキリーからの質問があった。
「シュウは異世界人だからこんな才能があるのかな?」
「何でその事を知っている。」
「そう警戒しないで。君の魔力がこの世界の物と違ったからね。」
「さらに言うなら、俺は勇者として召喚されたから、そのせいかもな。」
「なるほど。同じ勇者同士、仲良くして欲しいから、私の事はヴァルって呼んでよ。」
「分かった。ヴァル、これからもよろしくな。」
「ねぇ、あの子の特訓、見に行かない?」
ヴァルが指差した方を見ると、リュナ姿が竜に近くなっていた。
翼や角、尻尾を生やし、ヨルに向けて魔法を使っている。
「何かあっちはあっちで凄いことになってんな。」
突然、リュナに向けて雷が落ちた。
少しでもおもしろいと感じて頂けたら、
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作者が狂喜乱舞します。