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「素質が皆無である」

二話目。

 バスから一歩外に出ると、そこには見渡す限り一面の荒野で、その中で目立つのは、大きな城壁に囲まれた、一つの街だった。


「すげー。あんな昔のヨーロッパみたいな街って実在するんだねぇ」


「そうね、きっとあんなのは日本には無いわよねぇ。」


「本当その通り、って鎌月さん!?」


「あぁ、ごめんね。ついつい。」


 あまりにもナチュラルに会話、いや独り言に参加して来たからビックリした。なんだそれ。


 まさかの委員長乱入に驚きつつも会話を続ける。


「鎌月さんはどう思う?ここについて。」


「私は…ここが少なくとも日本じゃなくて、最悪地球ですらないと思ってるかなぁ。あんな城壁みたいなのに囲まれた国とか無かったよね。異世界ものって最近流行ってるじゃん?それに似てるなぁって」


「まさかの異世界説浮上、か。」


 その線で考えるべきなのかな。異世界転移ってさ、でもそれこそ物語の中の話だと思ってた。神隠しもこの類であるとされているし、異世界説を少し信じてみたいと思う自分がいた。……それに、もしかしたらチートとかワンチャン期待したりしなかったり。


 てか委員長がラノベの情報を持っていたことに地味に驚いてるんだけど。


 すると、遠くから、少々の砂埃を舞わせながら、荒野を駆けるキャラバンの様な集団がこちらに向かって来ている。馬に乗っている。十人ぐらいかな?


「何か馬に乗った人たちみたいなのがこっちに来てない?」


「うん。一回戻るべきかな。」


 鎌月さんが声を掛けようとしたその時、


「全員止まれ。見慣れない服装だが、貴様らは何者だ?そしてあの金属の箱みたいなのは何だ?」


 あれ、普通に日本語じゃないか?あれ。

 異世界で定番の言語理解系かな?


「私達は今、ここに来たの。日本、というところから来たの。そしてアレはバス、っていう乗り物何だけど、それよりも一つ聞かせて。ここはどこなの?色々教えてくれないかしら。」


 流石委員長っすわ。口調まで少し変わってらっしゃる。外への対応は慣れてらっしゃるのかな。委員長、少し良い家の子って聞いたことある。


「ふむ。バスとやらは気になるが、今は良いだろう。大体、日本とか言う国は聞いたことがないな。まあいい、質問に答えよう。ここは、フィロの街の前のフィリア荒野帯だ。見たところ、武器とかの装備も何もないが大丈夫なのか?この辺りにも魔物は出るぞ?」


 『武器とかの装備』『魔物が出る』か。ここが異世界である説は、ほとんど確定みたいだなぁ。地球で普通に暮らしてたら、まず普段聴かないような言葉だし。展開もラノベっぽいし。


「いえ、全く大丈夫じゃないわ。できれば、私を含めて、みんなを安全な場所に連れて行って欲しいのだけれど。」


「31、32、ふむ。33人か。そんな武器なし装備無しで良く集団で生きてたな。」


 そんな言葉を聞くと少し怖くなるのでやめてほしい。ちょっと恐ろしい姿の魔物の想像とかしちゃったじゃん、ちょっとね。


「良いだろう。俺たちもちょうど街に戻るところだ。この距離なら問題ねぇよ。」


「ありがとうございます」


 通りすがりのこのキャラバンもといこのダンディなおじさま方には感謝ですね〜。


「まぁ、ちょっと危険が伴うかも知れないが、そこは我慢してくれよ。」


 感謝はするけど!するんだけどね!?そういうのはもう少し言うタイミングを考えて欲しかったな!




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〈フィロの街〉


 ここがフィロの街っていうのか。何とも綺麗な街だなぁ。


「綺麗な街だなあ。日本とは違って石造りだけれど」

「それに、ほとんどの建物が、白を基調としたデザインの建物ね」


 確かに周りを見渡しても、白い壁ばっかりだった。何だかずっと見てたら目が悪くなりそうだ。


「まぁここまで送り届けたからな。あとは頑張れよ。」


「あ、ありがとうございました。」


 もう少し頑張ってくれよ、キャラバンの人!もとい、おじさん!


「あ、そうだ。門の憲兵が、王様に謁見許可を取ったとさ。

なんでも、戸籍のない30人以上の集団だしな。ここの領主の決まりで、戸籍なしでここに来た人間は、一度領主様に勇者の素質を見て貰うらしいぞ。余りに悪いと追放されたりするが、良い結果だといいな、嬢ちゃん方。ちなみに、成功者は未だかつて他国に一人だけいたそうだが、名前は公表されていないらしい。


 なるほど?領主謁見?素質?これはクラスが全員勇者パターンか?なんか追放とか聞こえたけど、異世界もののテンプレなら誰か一人だけが追い出されそうだ。


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 なんやかんやあって、許可が出たらしく、僕たちは領主様に謁見をすることに。


 ちなみに待機する時に礼儀を簡単に教えられた。まぁ、膝をついて、許可が出るまで顔をあげない、それだけだけど。

 あと、ヤンキーもどきどもがうるさかった。


「ふむ、顔を上げよ。ワシは驚いた。ここに居るほとんど全員に、勇者の素質があるぞ!」


 はい、『ほとんど』出ました。落ちぶれは誰だ?


「そこのお主。貴様だけ、素質が皆無である。喧嘩を売っているレベルで素質がないではないか。一般人よりも低いステータス。魔法適性までは見えなかったが、そのステータスではそれもダメだろうな。」


 指差したところを辿り、後ろを向く。


「貴様じゃ。今後ろを向いたお前じゃ!貴様、わしに喧嘩を売っておるのか!」


 何と、僕のことだったか。って、えぇぇ!それくらいでキレる!?ただの勘違いだよ!?


「え、ぼ、僕ですか?そんなに素質がないですか?もう一度よく見て下さいよ!」


「こやつ、ワシの『鑑定」が節穴だと言うのか!腹立たしい、こやつは追放じゃ!他は残せ。」


 急展開ぃぃぃ!


「ちょっと待ってください、待ってくださいよぉぉぉ!!」


 側に控えていた騎士たちが僕の両腕を塞ぎ、運び出す。僕の足での抵抗も虚しく空を切り、程なくして僕は街を追い出された。


 僕はもうこの街で無能のレッテルを貼られてしまった。その上、一人だけ追放されることになるとか最悪じゃないか!

 別の街を目指すしかないのか?どれくらいぼ距離かも分からないのに?しかも外は魔物が怖いなぁとか思ってた矢先にいきなり追放かよ!おぉ、神よぉぉ!其方は我を見放したか!


 こんなにふざけてでもいないとやってられなかった。遂に城門の兵士に引き渡され、いよいよ追い出される時。


「すいません。大丈夫ですか?」


「え?」


 そこには一人の優しそうな男の兵士が居た。


「街を追い出されたんですよね?これをどうぞ。街の外は危ないですから。何もないよりはいいはずです。職業上、バレると拙いので。頑張って生きてくださいね!では。」


「あ、あの!」


「はい?」


「ありがとうございます!!」


 そういうと、彼はニッコリ微笑んで去っていった。


 無能を助けてくれた恩は返さなきゃな。よし、希望はまだある。一本の短剣と薬瓶、地図を手に、僕は荒野に向かって走り出した。


 そして転んだ。


「痛っつ!」


 幸先悪いスタートだなぁ。


ブックマークとかよろしくお願いします。

作者は狂喜乱舞します。

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