学院への入学
15話目。なかなかがんばった。
そしてお知らせ。クラスメイト視点はしばらく出しません。恐らくこれからはしばらくシュウ視点が続きます。
ご容赦ください。
翌朝、宿で朝食をとった後、合格発表が学院で貼り出されるらしいので向かう。
学院に着くと、校門の前でリュナと会った。
「あ、シュウくん。合格の自信はある?」
「まぁそれなりに。やり過ぎじゃないといいが…」
「何があったの?」
「試験で的の周りも少し壊しちゃってだな」
「何やってんの!?」
試験結果は第一実技棟前に貼り出されるらしいので雑談を交えつつそちらへ向かう。
「流石に人が多いな。」
「うん。しかも推薦組は真ん中じゃん。」
リュナが嫌そうな顔をしている。人混みが苦手らしい。
まぁ、得意な人なんてそうそういないと思うが。
人混みをかき分けかき分け、ようやく前に出れた。
大きな模造紙にはあの場にいた全員と同じ数の名前と番号があった。
念の為確認するが、「3141:シュウ」としっかりあった。
ちなみにリュナとは連番で、「3142:リュナ」とあった。
「よしっ!二人とも合格だな。」
「うん!入学してからもよろしくね、シュウくん」
その笑顔に不覚にもドキッとしてしまった。
ここしばらく師匠以外の女性をあまり見てなかったから、
耐性が弱くなってるのかもしれない。
「ああ、よろしくな。リュナ。」
そう言った声には少し照れが出ていたかもしれない。
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驚いた事に合格発表の後、そのまま入学式を行うそうだ。
だが、確かに合理的だ。
会場に入場した順に席へ座っていく。
そして全員が着席したところで入学式が始まった。
日本とは違い、校歌みたいな物もなく、実にスムーズな進行だった。
「では、生徒会長からのお話があります。会長、お願いします。」
生徒会長は女生徒で、美人さんでした。周りを見た時に思ったけど、この学校の顔面偏差値が高い。
俺は大丈夫だろうか。
「ご紹介に預かりました、生徒会長のレナ=マーガレットと申します。新入生のみなさん、今年は皆素質が良い、と聞きました。この学院にて努力を重ね、また友人たちと切磋琢磨しましょう。この国への大きな貢献者になれるように、一緒に頑張っていきましょう。これからよろしくお願い致します。生徒会長、レナ=マーガレット」
盛大な拍手が巻き起こる。短めではあったが、素晴らしい挨拶だったと思う。
ちなみに、新入生挨拶はとある貴族の子がする予定だったが、その子が断固として拒否したので無いそうだ。
そして入学式を終え、順に自分のクラスへ向かって行く。
クラスは入試の成績順に振り分けられ、そのクラスはアルファベットでA〜Fのクラスがある。
俺達推薦組は全員合格でAクラスなのでリュナやアッシュとは同じクラスだ。
「確かここで良いんだよな。」
「うん。地図でもここになってるよ。」
「じゃ行くか。」
教室の扉を開けて中に入る。
中には10数人いた。中にはあの時のネチネチ貴族もいた。
すでに知り合いと話している人も居れば、一人の奴もいる。
俺達はそこで顔見知りを見つけた。
「アッシュ。やっぱり合格してたんだな。」
彼は教室の隅で一人読書していた。
「シュウとリュナか。君たちも合格おめでとう。」
「あの貴族と一緒なのは少々嫌だけれどね。」
「いや、ここでアイツを負かしてやればいいんだよ。」
「確かに」」
声が重なってしまって、顔を見合わせて笑った。
すると唐突に教室のドアが開けられた。
「お前ら、少しばかりはしゃぎ過ぎだぞ」
あ、あの人は…!
「私がここの学院長だ。そしてこのAクラスの担任を務める
クレア=シェーンだ。以後よろしく頼む。」
そう、あの人がラノア魔法学術学院の学院長であり、俺を推薦してくれた人だ。
「さて、席だが、自由に座ってくれて構わない。だが、授業
にはしっかり集中してくれよ。」
俺達は真っ先に左後ろの席を取った。
俺が一番左後ろ、その右にリュナ、俺の前にアッシュだ。
「取り敢えず、今日はこれから学校案内と寮の説明だ。」
そう。俺達はこれから寮暮らしとなる。二人一部屋らしいが、どうなることやら…。
「では案内する。ついて来い。」
全員で教室を出てついて行く。
「まずは研究棟だ。ここでは卒業生や勤めている教師らが、
自分の好きな分野を研究している場所だ。魔道具作成や
魔術の向上、薬学の研究などをしている。
今回はこれだけだが、専門的な事で質問がある人はここに来るといい。」
研究棟は渡り廊下で繋がっている右側の建物だ。そして左側は俺達が学ぶ学術棟だ。四階まであって、階ごとに違う学年がいる。
「そしてここが第一実技棟だ。あっちの似たようなのが第二実技棟だ。明日からの魔術測定や、授業で使う時がある。
また、ここから出てすぐそこのグラウンドは、明日のとある魔術の授業で使う。楽しみにしていてくれ。」
明日からということは今日は授業とかは無さそうだ。ゆっくりできそうで良かった。
「では最後に寮の紹介だ。ここから右に行くと男子寮、左が女子寮だ、では各寮の管理人がいるから、そこで部屋割りを聞いてくれ。
では私はここで戻る。良い学院生活を送れるようにな。」
そういってクレア学院長は戻っていった。
俺はアッシュと寮へ向かう。
「寮の部屋割りどうなるんだろう?」
「もう決まってるかもしれないな。もしあの貴族と一緒だったら嫌だな」
「一緒の部屋だったらよろしくね、シュウ。」
そんな会話をしていたが、現実はそんな甘く無いようで、アッシュとは別室だった。
「君は、アッシュ君だね。では403に。シュウ君は401だね。」
寮の管理人は人柄の良さそうな爺さんだった。いわゆる好好爺ってやつだ。そんな彼の名前はガンツさんだ。
「401、ここか。さぁ、同室なのは誰かな」
ちなみに寮は学術棟と同じ四階建てで、四階から順に学年が上がっていく。上級生の方が楽な構造だ。
ノックをした後、自室の扉を開け、中に入る。すると…
「よぉ。お前が俺と同室の奴か。俺はエリクだ。まぁ、よろしくな。」
「俺はシュウだ。エリクみたいな人が同室で良かったよ。」
明るい奴でよかった。あの貴族みたいな奴だったら退学届をだしていたかもしれない。
「なぁ、一つ聞きたいんだけどいいか?」
「どうした?」
「シュウ、お前は料理が出来るか?」
「まぁ、人並みには出来るぞ。」
「良かったぁ。俺は料理が出来ないから、完成品を買うしかなくて、金に困ってたんだ。料理の材料とかは俺が買ってくるから、料理、頼めるか?」
「いいぞ。もし口に合わなかった時は言ってくれ。」
まだ料理は作ってないけどな。
「おいエリク、ベッドは上と下どっちがいい?」
「俺は寝相が悪いから下で。落ちてきたら痛いし。」
「何だか体験したことがあるみたいな言い方だな。」
「あぁ。子供ん頃に二段ベッドの上で寝ている時に落っこちたことがあってな。いやーあの時は本当に痛かった。」
…こいつも大変だったんだな。
すでに部屋にあった自分の荷物を荷解きしていく。
「ふぅー、荷解き終わったぞ。シュウは終わったか?」
「あぁ。俺も今終わったところだ。」
「じゃあさ、食材買いに行かねーか?取り敢えず最初だからシュウもついてきて欲しいんだ。」
「了解だ。じゃあ行くか。」
部屋をでて、市場へと向かう。
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「おー、そこの奥さん、今ならこいつが安いぜ?」
「じゃこれ、貰っちゃおうかしら。」
「70ゴルドだ。毎度ありぃ!」
この場所を形容するなら、「活気溢れる」だな。
「エリク。お前の好きな料理と苦手な料理は何だ」
「えーと、好きななはカレーとかのスパイシーなので、苦手なのは酸っぱいトマト料理とかだな。」
「なるほど。了解だ。」
ちなみに料理名や野菜名は日本とほとんど変わらない。
…これは非常に都合がいい。
「じゃ取り敢えず今日はカレーでいくか。」
「おー!カレーも出来るのか!期待してるぞ、シュウ。」
「あぁ、任せてくれ。」
では買うものは…
「じゃ二手に分かれて買いに行こう。エリクはニンジンとジャガイモを頼む。」
「分かった、じゃ行ってくるぜ!」
「さて、俺も行くか。」
俺は牛肉と香辛料、そして米だ。いやぁ、異世界は米がないところがあったりするが、ここはあるらしい。
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「シュウ、すまん。八百屋でおばちゃんに絡まれちゃって時間かかった。」
「いい。別に大した時間じゃない。もう夕方になりつつあるし、戻るか。」
俺たちは帰路に付く。
そういえば俺が異世界人なのは師匠とあの場にいた奴しか知らないんだよな。「シュウくーん」
いや、この事はいつか話す時が来るんだろうか。「シュウくん、ってば」そんな事をふと思った。
「シュウくん!!聞こえてるでしょ!」
人の回想シーンが台無しじゃないか。
「何でリュナが?お前も食材とか買いに来てたのか?」
「そうよ。て言うか何で無視したの?」
「いや、ちょっと回想シーンをだな」
「ちょっと何を言ってるか分からないわ」
そうだ、アニメや映画がないからシーンという概念がないんだ。そういうの、作ってみたいな。
「誰?シュウの彼女?」
「いや、違うけど。ただの知り合いだ。」
「え?友達じゃなかったの?」
「訂正しよう。友達だ。」
「入学初日から彼女出来てんのかと思ったじゃねえか。」
「それはリュナに失礼だろ」
というか買い物に来たのは分かるが何故一人何だ?
その事を聞くと、リュナは
「えーと、同室の子がね、『私は、もうダメ。』って言って倒れちゃって。受験勉強を徹夜でしてたんだって。」
なるほどな。同室の子が寝ちゃったから一人で来たと。
「ねぇ、シュウは明日からの授業、どんなだと思う?私は応用や上級を使ってみたい!」
「いや、最初の授業だから実力測定、ってとこだろ。より詳細な自分の魔法の性能を知れると思うぞ。」
「いやぁ、楽しみだね。」
寮の分かれ道まで来た。
「バイバーイ、また明日ね!」
「じゃあな。また明日。」
リュナとの分かれを済ませて寮へ向かう。
部屋に入ると、急にエリクが
「あの、リュナって子、可愛いな。今度改めて紹介してくれよ。」
「どうした急に。まぁ、機会があったらな。」
「絶対だからな!」
…やれやれ。じゃあ、パパッと料理でもしますか。
…元一人暮らしの俺の本気のカレー、見せてやる。
少しでも良いと感じてくれたら、
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作者は狂喜乱舞します。