師弟の理由とカナデの過去
おっと投稿にミスがあったようですね。
ここで修正します。
夜、シュウの宿泊部屋にて。
「まず、単刀直入に聞くんだけど弟子くん、いや、シュウ。君は日本、という場所を知っていますか?」
その予想外過ぎる質問に固まってしまう。
言うべきかと悩む前に師匠は、
「やっぱり心当たりがあるんだね。多分、君自身が日本という場所の住民なんだろうね。」
見抜かれていた。一瞬の動揺だけで。これはもう、流石師匠と言う他ない。
でも、なぜ日本を知ってるんだ?
「師匠、どうして日本を知っているんですか?」
「それは…昔、パーティーを組んでたカナトって言う子が居たんだ。カナトは10年前に魔物から私を庇って…死んじゃったの。
初めて会った時カナトは、ここでは珍しい黒髪黒目に変わった服装で、初めて来たみたいにキョロキョロしてた。困ってたから声を掛けたら、げーむ?とかばーちゃる?とか変な単語を沢山言ってたから興味が出ちゃって。
だからカナトとずっと話してたら一緒に魔物を討伐したり、ご飯を一緒に食べたり、とかできる関係になってた。
そしてカナトはある日、私に聞いた。『僕は元々この世界の人間じゃない、って言ったら信じるか?』って。
カナトは『日本』と言う、こことは文明の進み方が全く違う世界から来て、その日本からこの世界に転移して来たってことを聞いたの。
それからしばらくして死んじゃったけどね。その時は悲しかった。今は立ち直れたけど、カナトのことは忘れられない。
そんな時、弟子くんが、シュウが、現れたの。カナトに似た変な服、黒い髪に黒い目、広野の真ん中でキョロキョロしてたらドラゴンに追いかけられて。
そしてシュウを、カナトと重ねちゃって。で助けたら、カナトとは違って変な事は言って無かったけど、雰囲気で分かった。この子も日本から来たんだ!って。
だからシュウを弟子入りさせた。カナトには聞けなかったことを聞けるかも、と思って。少し遅くなったけど、こうして聞いてみたの。
シュウ、はカナトと同じ、日本から来た人?」
「…」
思わず黙り込んでしまった。
大切な人は自分を庇って死んだ。その罪悪感に苛まれている筈なのに明るく振る舞おうとする姿に心を揺さぶられた。
そして決めた。師匠のためにも正直に話そう、と。
「…師匠の言う通り、僕は日本から来ました。他にも一緒に何人かのクラスメイトとこの世界に来ました。僕はその中で周りに劣るので王様にフィーロの街から追い出されました。
そしてあの広野で師匠に拾われました。
日本から来ましたが、カナトという人の事は知りません。
カナトさんの居た、日本のことが知りたかったら、いつでも答えます。」
「…」
師匠は黙って聞いてくれていた。
「あと、一つ聞きたいことがあります。どうして弟子として拾ったのですか?」
師匠は震えながら答えてくれた。
「ここでは、放浪者を拾った人は奴隷として扱ってよい、というのがあるの。でも、カナトや日本を知ってるかもしれない人を奴隷して扱いたく無かった。そして、あなたはこの世界で生きていくための能力があまり無かった。
だから弟子として、知り合えば、ヒクッ、生きる能力を鍛えて、あなたをまた、死なせずに済むかも、ヒクッ、って、
思ったから…!
だから、まだ、弟子として、私と一緒に居て欲しい…。
死なないで。ずっと強くなって、私を安心させてよ。」
「…っ!」
言葉が出て来なかった。この世界で生きにくかった僕をカナトと重ねて、助けようとしてくれたんだ。
…大切な人の死が二度と繰り返さないように。
それだけ大切にされてるってことなんだ。
だったらその気持ちに答えなきゃ。一言。
「はい、もちろんです。」
「うわぁぁーーん!」
師匠が泣きついて来た。
師匠は寂しかったのかもしれない。大切な人を失って。
師匠の中でそんなに大きな存在になれたんだ。
そう思うと胸が感謝でいっぱいになった。
泣いたまま寝てしまった師匠を見て一言呟いた。
「カナデ師匠、ありがとうございます。」
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作者は狂喜乱舞します。