表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

第九話「異変」

 私は結局その後、喫茶店を開かず、森に狩りにも行かず、のんびりと過ごしていた。だるかったからだ。好きなようにごろごろとする生活は実に楽だった。しかししばらく続けていると暇を感じてきた。ある日刺激が欲しいと思い、何をするか考えたものの考えるのが面倒になり、結局安易に森に狩りに行くことにした。


 町の門番は私のことを珍しそうに見ていた。私を見るのが久しぶりだったからだろう。転移魔法は使わず魔力を節約して、風魔法を使い移動した。移動しながら何を狩ろうかと思い、冒険者ギルドの依頼を何も受けていないことに気付いた。相変わらず自分は迂闊だと思いながら、適当に狩ればいいか、依頼があればそれを受けて獲物を提出すればいいと思った。なければアイテムボックスに入れておけばいいだけだ。アイテムボックスは実に便利である。


 森に着いた。探知の魔法を使った。おや、動物がほとんどいない。前はもっといた気がするがと思いながら、探知を続けると、複数の魔物が引っかかった。これらに動物達は怯え逃げたのだろう。そしてそれらを今日の獲物と決めた。再び風魔法を使う。まず木の枝に飛び乗り、枝から枝へと跳躍していった。


 少しするとすぐに魔物達は見えた。五匹の魔物が鹿らしき死体を貪っている。逃げ遅れたのだろう。冥福を祈り、魔物達を殺そうと意気込んだ。いつもどおりかまいたちを放とうかと思ったが、今回は数が多い、五匹だ。少し悩み使った事のない魔法を試すことにした。爆発だ。正確には水蒸気爆発だ。水属性と火属性の複合魔法となる。これまでより難しい魔力の操作になるだろうと覚悟した。そして集中する。まずは水、そして一気に火で爆発させる。そのイメージどおりやってみた。すると魔物達の中心で爆発が起こり彼らは吹き飛んだ。狙い通りであった。魔物達は何が起こったか分からないようで混乱しているも、仲間といたほうが安全だと思ったのか、再び集まった。私はそこにもう一発爆発魔法を撃った。この魔法の魔力操作の感覚がいくらか分かったので、少し強めに撃った。それを受け魔物達は大きく吹っ飛んだ。彼らは散らばり、どれもこれも虫の息になった。私はかまいたちでとどめを刺していくと決めた。爆発魔法は少し魔力の消費が多いのだ。やはりかまいたちは便利だと魔物達を殺しながら思った。


 そして無事に終わった。魔物達から血が出ない頃になると、死骸らをアイテムボックスに入れた。帰ろうかと思ったが、動物の一匹でも狩っていきたいと思い探知の魔法を使った。動物はまた一匹もいなかった。残念であった。動物がいないならもう森に用はない。私はいつもどおり風魔法を使った。


 町へ帰ると以前のように騒がしい。また令嬢が魔物に襲われでもしたのかと思った。するとこちらを見た門番が慌てて、あんたは大丈夫だったかと聞いてきた。はてなんのことだと思うと、魔物だよと門番は言った。ああそういえば今日は魔物が多かったと思ったが、特に問題はなかったので、門番にそう言った。彼は少し落ち着いたようであったが、まだいくらか興奮していた。先ほどの彼の台詞を思い出し、ひょっとして魔物に誰か襲われたのかと問うと、彼は頷き言った。


「他の冒険者とか、商人も襲われちまったんだよ」


 彼の様子を見るにどうやら非常事態らしいと、私はようやく気付いた。私が魔物を狩ってきてやろうかと思ったが、まずアイテムボックス内の魔物らを捌くことにして、冒険者ギルドに向かった。


 冒険者ギルドに着き中に入った。中は慌しい様子であった。そんな様子を見ながら魔物は本当に珍しいのだなと思った。受付へ歩いていく。その中の彼女はこちらを見てはっとした後言った。


「緊急事態です!」


 彼女によればそうらしい。私はあまり興味がなかった。私の使う魔法に比べ、魔物達が弱いからだ。私は魔物達を売りたいというと、彼女は目をむいた。そして言った。


「大丈夫だったんですか!?」


 私は頷いた。早くいつもの死体を出す部屋まで案内して欲しいと思っていると、彼女はそれに気付いたようで「こちらにお願いします」と先導してくれた。


 部屋に着くと私は死体らを出した。受付の彼女だけでなく、部屋にいた男も驚いている。


「五匹も……。こんなに魔物が出るなんて」


 彼女らは死体の数にも、魔物の出現数自体にも驚いているようだ。そんなに魔物は珍しいのかと聞いた。


「珍しいというか、異常ですよ。普通魔物は偶にしか出ません」


 話す彼女は深刻そうだ。しかし魔物らが大して強いとは思わなかった。問題はないのではないかと言うと、彼女はかぶりを振った。


「いいえ。魔物が弱いと思うのは、あなたが凄腕の魔法使いだからですよ」


 続ける彼女によれば魔物は非常に丈夫で、魔法がなければ倒すのは大変らしい。なるほどそれでか。彼らが慌てて私が慌てていないのは魔法の差か。納得した。


「恐らくダンジョンが出現したのでしょう。斥候が調査に行く予定になっています」


 聞くと、ダンジョンが現れると、ダンジョンから魔物らが出てくるらしい。魔物にさして興味はないが、ダンジョンに興味はある。宝箱でもないだろうか。一度ダンジョンに行ってみよう、そう思った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ