第七話「買出しと令嬢と花壇」
すると私は、途端になまけたくなった。妙にだるくなったのだ。寝室に行き寝ようと思った。しかしすぐに土が敷かれていることを思い出し、いやな気分になった。マットと布団を買いに行こう、そう思うと不思議と少しやる気がでてきた。私は戸締りをして、寝具を買いに出掛けた。
店の多い場所を目指ししばらく歩いた。そして思う、寝具はどこで買えるのかと。昨日雑貨屋に行ったな、あの雑貨屋にはあっただろうかと考え、なかった気がした。マットのことを考えた。布を使っているなら服屋とか? 適当にあたりをつけ私は店を探し始めた。
そしてとある店を見つけた。服屋、というか布や生地全般を扱っている店だろうか。私はその店に入った。店員らしき女性が私に礼をした。そして言ってくる。
「なにをお求めでしょうか?」
私はマットと布団が欲しいと答えた。
「寝具でしたらこちらにございます」
彼女は私を売り場まで案内してくれた。さてどれにしようかと思ったが、多少大きさに違いがある程度で、デザインはいっしょだった。無地だった。私は適当なものを選び値段を尋ねた。問題ない額だった。私は代金を支払い、マットと布団をアイテムボックスに入れた。あとはなにか買う物はあるだろうかと思った。この店ではもうない気がした私は、店員に礼を言って店を出た。
なにを買おうか悩み、私はまわりの店をのぞきながらぶらぶらと歩いた。そして思い出した。保存食を買おうと思っていたのだ。しかし今、アイテムボックスの中では時間が経過しないので、保存食である必要はないなと思った。屋台の持ち帰りの料理でも適当に入れるかと考えた私は、屋台が並んでいる通りへ向かった。
屋台が見える位置まで来た私は昼食をとろうか迷った。迷ったのは昼にはまだ早いからだ。少し悩んでまた屋台のものを家で食べようかと考えた。持ち帰れる物はどれだけあるだろうかと私は屋台達を見た。串焼きや何かの巨大な葉に包んだ持ち帰れる料理は、半数ほどの屋台で売っているように見えた。私はそれらの屋台をまわることにした。面倒だと思ったが、今は昼時に比べてはるかに客が少ないので、まだ楽だと思った。
予定通り屋台をまわり終えた。次は何をしようかと考えた。もう家に帰ろうか、しかし何か外で見たい気がした。しかしなんだか眠くなってきた私は、やはり家に帰ることにした。帰ったら昼寝をしようと思いながら。
私は家に着いて、中に入った。早速寝室を目指した。そして土が敷かれているベッドを見た。まず土を片付けなければとアイテムボックスに入れた。そして少しある汚れを光魔法で浄化した。きれいになった。その上にマットを敷いて寝転び、布団を被って眠りについた。
起きるとまだ昼であった。太陽の位置を見ると二時間ぐらい寝たのだと思う。私はのびをした、気持ちよかった。そして少しの空腹感を覚えた。ベッドからどけ起き上がり、ダイニングに向かった。
ダイニングに着いた私は早速食事をしようと思ったが、朝のようにテラスで食べようと思い外へ出た。
イスを引き座った。そして買った料理のどれを食べようかと悩んだ。今まで食べたのは肉が多かった気がした私は、肉以外のものはあったかと考えた。そして一つの物を思い出しそれをアイテムボックスから出した。ブリトーのようなものだ、それともタコスのようなものだろうか。私はよく知らなかった。なんにせよ生地で色々な具材をくるんだ料理だ。肉も入っているがさまざまな種類の野菜が入っている。それはとても美味しそうに見えた。私はそれをかじった。思った通りうまかった。私の口に妙にあったのか、どんどん食べ進めた。そして残りが三分の一ほどになったころ喉がかわいた。私は魔法で水を出そうかと思ったが、コップがないことに気付き、先にコップを作ることにした。土魔法だ。コップはガラス製にした。手早く作ったそれに水魔法で水をそそいだ。終わるとのどのかわきを先ほどより強く感じ、急いで水を飲んだ。うまかった。そして一息ついた私は残りのブリトー(とりあえずこう呼ぶことにした)を食べ進めた。
ブリトーを食べ終えた私は水をたまに飲みながらのんびりとしていた。日差しが心地よかった。そしてまた少し眠くなってきた。ここでこのまま寝ようか、いや寝室で寝ようかと悩んだが、今寝ると夜眠れなくなりそうなので寝ないことにした。私の気分は眠気に多少侵され少し良くなかった。そして次は何をしようかと考えた。思いつかないままいくらか時間が過ぎた。そして思い出した。プールのことだ。私は日差しを見て考えた。温度のことだ。プールに入るにはまだ少し暑さが足りない気がした。私は残念に思い、今プールに入ることを諦めた。じゃあ何をしようと考えた。だが思いつかなかった。どうしようか考えていると、近付いてくる馬車に気付いた。
「まあ! ほんとうに一日で家を建てたのですね!」
令嬢だった。情報は役所から渡ったのだろうと思う。二人男女の使用人が後ろについていた。私は何か用かと尋ねた。
「あなたの家がとても気になったのです」
彼女は照れくさそうに言った。私は好奇心が強いなと思った。私はイスを作り歓待することにした。土魔法を見て彼女は目を丸くした。初めて見たのだろうと思った。私はそんな彼女に席につくよう促した。彼女は笑顔で席についた。そして茶と菓子でも出そうとして、そんなものはないことに気付いた。私はきまずくなってしまった。彼女は不思議そうにどうかしたのかと私に尋ねてきたので、正直に答えた。彼女は構わないと笑って言った。
しばし世間話をした後、彼女はまた来ると言って帰っていった。そして空を見ると夕方だと私は気付いた。この時間なら本でも読もうかと思ったが、そういえば本も持っていなかった。図書館に貸し出しサービスはあるのだろうか、ない気がした。今度本屋を見かけたら入ろうと決めた。そんなことを考え、ぼんやりしているうちに夜になってきた。私は大して腹が減っていなかったが、なんとなく夕食をとることにした。肉の串焼きが食べたくなったので、それをアイテムボックスから出した。そして食べた。まあまあの味だと思った。食べ終わりまたぼんやりした。そして眠気を感じ始めた頃、寝ようと思い寝室へ向かった。ベッドに寝転ぶと思ったより私の体は眠かったのかすぐに意識がなくなった。
目が覚めた。窓の外を見ると夜中であった。また変な時間に起きてしまったと生活の不規則さを少し反省したが、特にとがめてくる相手はいないなと安心した。だが親しい相手がいないようでさびしくもあった。
いつもどおり何をするか考えた。そして喫茶店をしようと思っていたことを思い出した。昨日令嬢に出す菓子がなかったことも理由だ。どこかで買えるのかもしれないと思ったが、暇つぶしにもなるので菓子を試作することにした。そしてレシピを考えた。すると知識が教えてくれた。どうやら与えてくれた知識はかゆいところに手が届くらしいと感激した。
私はキッチンへ移動した。私はキッチンのことはよく知らない。ただレシピに合わせ土魔法で作ればいいかと思った。多分対応できると思った。まあ急ぎでないならどこかの店、雑貨屋などで買ってくればいい。私は菓子を作ることにした。さて何を作ろうかと考え、まず基本的な物が作りたいと考えた。そしてクッキーを思いついた。レシピは知識だよりだ。大いに期待した。そして私は材料がないことに今更気付いた。少し愕然とした。そして日がのぼったら買ってこようと思った。
さて何をしようかとまた考えた。今持っている物で何ができるのか考えることにした。私が持っている物、マット、布団、家、串焼き、なにかの葉っぱでくるんだ料理……。あとはなにがあったろう。何かあったろうか。……ない気がする。マットや布団ですることは思い浮かばない。少なくとも今は眠くない。お腹もすいていないので料理にも用はない。では家か。家の整備をまたしようかと考えた。さてどうしよう。庭でも作ろうかと考えた。自分の感性に自信はない。いや、自分の感性ではなく作り方というべきか。私は美術はまるで分からない。義務教育の間でわずかに何かをしたくらいであった。その僅かな内容もいまいち思い出せないくらいであった。確か中学生の時にカラフルな魚を書いた気がする。テストで波のある広告を書いた気もした。まあ今はいい。今は庭だ。そしてどういう庭を作ろうか考えた。花畑でも作ろうかと考えた。しかし虫が多くなりそうだと考えた。喫茶店には問題だろうと思った。だが魔法でなんとかなるだろうとも思った。結局花畑を作ることにした。(ただし家から少し離れた場所に)
花の種など持っていない。だから枠だけ作ろうと思った。花壇の枠だ。さてどこにつくろう、少し離れた場所とは決めたが、具体的な場所は決めていなかった。家は真ん中にある、そして家の裏手にプールがあり、玄関の左手にテラスがある。テラスから見える位置がいいだろうと思った。私はテラスの前方に花壇を作ることにした。さっと適当な枠を土魔法で作った。造詣にこだわりたいが造詣というものがよく分からなかった。おしゃれとは一体どうすればいいのだろうか。プロに任せたいと思った。がしかし花壇のプロなどいるのかと考えた。もしいるとして、いやそうだ、領主様に頼んでみるかと思った。庭師がいるのではないかと、しかし庭師の仕事の範疇なのかとも思った。花ならともかく花壇の枠だし。とにかく今、枠は適当でいいことにした。さて枠は作った。花の種はない。次は……土? 魔力に干渉し柔らかく栄養のある土をと念じた。枠の中を土でうめていく。この土がほんとうに良い物かは分からないが、どうせ素人の私が考えても分からないと思い、考えを放棄した。