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第四話「蜂蜜と図書館」

 さて、金を使う、何に使う? 私は悩んだ。テンプレ、ファンタジー……。奴隷? 奴隷か、いるだろうか、奴隷は。私はこの世界に来てからのことを考えた。必要ない気がした。むしろ自分以外に気を使う者がいては面倒くさいと思った。だから奴隷はなしだ。他にはなんだろうか。武器、いや魔法の杖か? しかし魔法使いは随分少なそうだが、売っているのだろうか。考えても分からないと判断した私は、武器屋を探すことにした。


 人の多い通りを歩く。私は多くの視線を浴びた。やはりエルフは珍しいようだ。そしてふと話した獣人の男を思い出した。彼は私を珍しそうに見なかったなと思う。宿に泊まっていたのだからこの町には住んでいまい。彼の住んでいる場所、あるいは故郷にはエルフが多いのだろうかと考えた。そうしているうちに武器屋を見つけた。私はそこに入った。


 剣や槍、斧やハンマーなど色々な武器があった。魔法の杖らしきものは見当たらなかった。店主らしき男が私を少し困惑した様子で見ている。私はどうしたのかと尋ねた。


「いや、あんたエルフだし、魔法使いだろ? だったら武器は使わないんじゃと思ってな」


 なるほど、魔法使いは武器を使わないのが一般的のようだ。私はここに来た用事を思い出し、魔法の杖、あるいは魔法を補助するものはないかと聞いた。


「魔法を補助……? そんなの聞いた事ないぜ」


 あれ、ないのか。ここはテンプレではないのだなと思った。私は邪魔をして悪かったと詫びて外に出た。そして私はあてが外れたなとしらけてしまった。金を無理に使うのはやめようか、では何をしようか。とりあえず冒険者ギルドにでも行くかと私は歩き出した。


 冒険者ギルドに入った。相変わらず視線が集まるが、そろそろ慣れてきた。何か良い依頼がないかと壁に貼ってある依頼書を見にいく。そして気付いた。そういえばランクというものがあったなと。私はEランクになったのだったか。ではEランク向けの依頼は何かないかなと探す。あった。蜂蜜採取と書いてある。私はこの依頼を受けることにした。


 私は外へ出た。今回の依頼のために必要な物は何があるだろう。蜂の攻撃は風魔法で防げばいいので防具はいらない。後は蜂蜜を入れる物が必要だ。つぼなら土魔法で作れそうだが、どこかで買おうか、それとも革袋のほうがいいだろうか。しかし革袋だと蜂蜜に革の匂いがつきそうな気がする。私は悩んだすえどこかで容器を買うことにして、良い店がないか探し出した。


 雑貨屋らしき店を見つけた。私はそこに入った。さまざまな日用品が置いてあるようだ。さて容器はどこだ、と見回していると店主らしき女性が話し掛けてきた。


「何をお探しですか?」


 問われ、私は蜂蜜を入れるための容器が欲しいと言った。女性は心当たりがあるようで、すぐに動き出した。


「こちらはいかがでしょうか?」


 それはガラスビンだった。持ちやすいように上の方に金属、恐らく鉄か何かの取っ手がついていた。そうかガラスか、思い浮かばなかった。私はそれを買うことにした。そこで思った。容器は一個で足りるだろうかと。……考えたが分からなかった。なので彼女に訊くことにした。


「蜂の巣から蜂蜜ですか? それなら三個はあったほうがいいかもしれません」


 私は女性が言うとおりに三個買うことにした。代金を払いアイテムボックスに入れる。そして外へ出た。


 ふと思った。私は時空魔法を使えるが、瞬間移動、テレポートはできないのだろうか。こういう時は知識に頼る。どうやらできるらしい。私は森の入り口までテレポートすることに決めた。


 森の入り口に着いた私は疲労でよろめいた。一気に魔力を消費したようだ。今までで最も多い消費であった。テレポートの魔法は大変便利であるが、消耗が激しいようだ。緊急の時以外には使わないことにしようと決めた。


 私は森へ入った。そして風魔法で周囲を探った。蜂の巣、つまり蜂が大量にいる所をどこだろうか。見つけた。そしてその近くに大きな動物の反応があった。蜂の巣の近くなら熊だろうかと思った。私は蜂の巣がある場所に移動した。


 少し離れた木の上まで来た。やはり熊だった、蜂の巣をじっと見ている。襲う好機を待っているのだろうか。私はその熊に襲い掛かった。風魔法だ。いつもどおり首にかまいたちを叩き込んだ。狙い通りに当たり血が噴き出した。解体は後回しにしてひとまずアイテムボックスに死体を入れた。次は蜂の巣だ。まず風を操り蜂を潰していく。小さくて数が多いので手間取ったが、問題なく始末し終えた。次は蜂蜜だ。水魔法で巣の中の液体を操作しようとして、ビンを忘れていたことに気付いた。私はビンをアイテムボックスから取り出した。蓋を開け、開けた蓋は収納し、ビンを手で持った。そしてようやく水魔法を使った。蜂蜜を操作してビンに入れていく。一つ目がいっぱいになる。それをアイテムボックスにいれまた他のビンを取り出した。作業を続けると三つ目のビンが半分ほど埋まった時、巣から蜂蜜がなくなった。ビンの蓋をしてアイテムボックスにしまった。ふと思う。蜂の巣も確か何かに使えたはず。ろうそくだっけ? そうだ、確か蜜蝋……だったかな? うろ覚えだ。とりあえず蜂の巣も収納しておいた。


 私は森を出て、町まで走り出した。もちろん風魔法を使って。


 町に入り冒険者ギルドを目指す。そして中に入った。依頼を終えるべく受付に向かう。前のように別の部屋に案内された。今回ビンごと買い取ってもらった。金貨三枚か、それなりの額だ。そこでアイテムボックスの中にしまっている蜂の巣を思い出し、更に猪の皮二枚を思い出した。買い取ってくれるよう頼むとすぐに頷いてくれた。金貨二枚、まあまあだ。用を終えた私はギルドを立ち去った。


 ギルドから出た私はそろそろ昼時だと思った。おいしかったからまたあの宿でもいいが、今日は違う所で食事をとることにする。あたりを見回すといくつかの屋台やレストランが見えた。さてどこにしよう。どう選ぶか、匂いで選ぼうか。そう思った私は風魔法を使いそれぞれの料理の匂いをかいだ。おや、魚の匂いだ。この辺に海はない気がする。ならば川魚か。いや湖かもしれないと思いながらその屋台へ向かう。それは鮎に似ていた。火から少し遠ざけられ、客に見えるように置かれている。串焼きだった。値段は看板に書いて合った。大銅貨五枚か、五百円、魚一匹にしては高い気がする。貴重なのだろうなと思いながら私はそれを食べるべく注文した。店主は串焼きを軽くあぶってから渡してくる。私は硬貨を店主の空いている左手に渡してから、串焼きを受け取った。

 私は少し離れた場所、誰の邪魔にもならないだろう場所へ移動する。そして食事を始めた。香ばしい匂いが口内からする。うまいと思った。そういえば鮎を食べるのは初めてだと思いながらどんどんと食べていく。感触した。串はゴミ箱に捨てようかと思ったが、なんとなくもったいなかったのでアイテムボックスにしまった。

 おいしかったがこれではとても満腹には足りない。私はまた風魔法を使い、別の料理を嗅ぎだした。ふと焼肉のたれのような匂いがした。これにしよう、そう決めて、今度は屋台ではなくとある店を目指した。


 中に入る。いい匂いが店内に充満している。これは良さそうな店だと思った。空いているカウンター席に座り、置いてあったメニューを見た。焼肉定食、こういうのがあるのかと思いながら、奥にいる店員に注文をした。あらかじめ料理していたのだろう。これも先ほどの焼き魚と同じく軽く焼いてから、すぐに料理は出てきた。焼肉以外に野菜炒め、そしてご飯があった。おおこれぞ焼肉定食、味噌汁もあったら完璧だったな、そう思った。早速箸をつける。期待通りうまかった。そしてふと思った。こういう店をやるのも楽しいかもなと。喫茶店なんていいんじゃないかとも思った。箸をすすめる。米もうまい。私が以前買っていた米は陳列されている中で一番安い米だった。それに比べるとはるかにうまいと思う。焼肉とご飯をあっという間に食べ終えると、後は野菜炒めだけが残った。私は残ったそれをのんびりと食べながら、店を出たら何をしようかと考えた。ほんとうにやっちゃうか? 喫茶店。いやでもなあ、めんどうくさいというか、もうちょっとここのことを知ってからにしようか。こことはこの町だけでなく、この国、この世界という意味だ。そうだ、図書館はないのかと思った。どこかの誰かがインストールしてくれた知識はとても有用なのだが、結構抜けがあるのだ。それを本から得た情報で埋めたいと思った。そのとき丁度食べ終えた。私は立ち上がり店員に代金を渡して、店の外に出ていった。

 私は図書館はどこかなと思った。そして店員に訊けばよかったかなとも思った。通りすがりの人に尋ねると、あちらにある大きな建物だという。冒険者ギルドほどあるだろうか。背が高いので他の建物が間にあっても問題なく見えた。私は礼を言い、そこを目指した。


 少し人が少なくなってきた。昼時だからみな料理を求めているのだと思う。急ぐこともないとのんびり図書館まで歩いた。最初見た時は案外近くにあると思ったのだが、こうして歩くとまあまあの距離があるようである。それでもあまり時間はかからず、図書館へ着いた。中へ入り何から調べようかと思った。この国のこと、そうだ、海だ。海がどこにあるか調べようと思う。私は海産物がわりと好きなのだ。この国が海に面していないなら別の国に行くことになるかなと思う。私は地理の本がある棚を探す。これも焦ることはない。なぜなら金に余裕があるからだ。余裕があると楽だなと思う。そして地図を見つけた。それを開き、まず現在地を確認する。この町はここで、海は……ここか。この町から離れているものの、この国は海に面しているらしい。気が向いたら行こうと思う。後は何を調べようか。魔法についての本はないだろうか。そう思い探し始めた。しかし見当たらなかった。他の本を探そうか、なにを知るべきだろうかと考えたが、思いつかなかった。窓の外を見れば、夕暮れであった。そういえば宿をとっていない、今日も同じ宿に泊まろうか、他の宿に泊まろうか。いっそ家とか買っちゃうかなんて考えた。多分安い家なら買える、とそこまで考えて、それなら土地を買って自分の土魔法で作ろうかと考えた。面白いかもしれない。だがそんなに急に土地というものは買えるのだろうか。私は知らなかった。暗くなってきたこの時間なら、不動産はそもそも閉まっているだろうか。そう思い、土地を探すのは明日に回し、昨日と同じ宿に泊まるべく歩き出した。

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