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第十話「攻略と日常」

 私は早速町を出て、ダンジョンを探すことにした。いつもと同じ風魔法だが、今回は精度を無視して広い範囲を調べた。魔物の気配は独特で分かりやすい。その魔物が多いダンジョンなら極めて分かりやすいだろう。以前魔物を見つけた森の方にあたりをつけて、風魔法を使った。

 そしてダンジョンはすぐに見つかった。思っていた通り森の中にあった。私が普段訪れる部分ではなく、もっと深い場所だ。気が逸り転移魔法で行こうかと思ったが、ダンジョンの魔物達を考えると魔力を温存した方がいいだろう。そう思った私はいつものように風魔法を使い移動した。


 私は森の入り口に着いた。森に着くまで数体の魔物を見かけたが、これからダンジョンで散々魔物の相手をするだろうと考えると狩る気にならなかった。森の中にいるだろう魔物達も無視することにして、それらを避けるため風魔法で探った。ダンジョンまでの道のりで三十体ほどの魔物を見つけた。木々の枝を飛び移れば問題なく避けられるだろうと思っていたが、どうやら今回はそうもいかないらしい。空を飛ぶ鳥の魔物が二体いた。そこで前に令嬢が鳥の魔物に襲われたという話を思い出した。確か両肩を掴まれ怪我をしたのだ。ならば武器は爪かと考え、近距離でしか攻撃できないなら問題なく魔法で倒せるだろうと思った。しかしここはファンタジー。羽でも飛ばして攻撃してくるかもしれない。私は一応警戒することにした。


 結論からいうと、特に警戒は必要なかった。遠距離から攻撃をしてこなかったからだ。今までに狩った魔物のように簡単に魔法で倒せた。今夜は焼き鳥だ。炭火で焼こう。夕食を楽しみにしながらダンジョンを見た。てっきり洞窟か何かだと思っていたのだが、私が全く予想していなかったことに塔であった。巨大な塔だ。円筒状で、直径は百メートルはあるだろうか。入り口も大きい。そしてそこは多くの魔物が行き来していた。魔物同士は争わないのだなと思いながら、そこを魔法で爆破した。


 塔の中は簡素であった。装飾もない。石像などもなかった。しかし天井は高かった。鳥の魔物が飛び交うほどだ。そこを突っ切って先へ進んだ。大勢の魔物を相手にするのは面倒だったからだ。いくらか進めば上階への階段があった。私はそれを昇った。


 それを繰り返した。代わり映えのしない景色にはもう飽きた。ダンジョンに来たのを少し後悔しながら作業のように先へ進み続けた。そして最上階だと思われる階にたどり着いた。それまでとは雰囲気が違う。そこにはうんざりするほど見ていた魔物らは全くいなかった。そして巨大で豪奢な扉があった。この先にボスでもいるのか。扉の大きさを考えると巨体なのかと考え、気を入れなおした。気が抜けていたが、ここは油断をしてはいけない。私が扉に近付くと、扉は勝手に開いていった。少しずつ見えた中に注意すると、そこには覇気のある牛がいた。二本足で立っていて、恐ろしい斧を持っている。堂々とこちらを待ち構えている。そして強い魔力を持っている。ミノタウロスだ。そう思いながら部屋の中へ入ると、牛は気合を入れるかのように吼えた。


 牛は突進してきた。私は風魔法を使い移動し、それを避けた。早速攻撃しようかと思ったが、慎重にいくことにして、まずは観察をした。数回避けた。牛は突進するばかりであった。魔法は使わないのだろうか。そう思いながらかまいたちを放った。牛は避けるそぶりを見せない。狙い通り首に命中したが、浅く傷をつけただけであった。随分と頑丈だ。そう思い爆破した。牛は後ろへ吹っ飛んだ。いくら丈夫でも衝撃は殺せないらしい。立ち上がりこちらをにらむと、また突撃してきた。私はまた爆破した。


 それを繰り返す。牛の攻撃は単調だった。私が飽きてきた頃、それは起こった。立ち上がった牛は突撃してこなかった。静かな様子だ。何をするつもりかと警戒していると、牛の魔力がおかしいことに気付いた。魔力が体の中から湧き上がっている。空中に散るかと思った魔力は、散らず体に纏われた。どうやらここからが本番らしい。そう思った瞬間、牛は今までより遥かに素早く突進してきた。それを風魔法で避けた。どうやら魔力で体を強化したようだ。意外と器用なことをする。私はそれを真似することにした。魔力に干渉し、しかし魔法は使わない。牛のように体に纏わせた。魔力が皮膚を硬くしていくのが分かる。身体能力が上がっていく。そうすると避けるのが大分楽になった。これはいいものを教えてもらった。そう思いながら今までより強く爆破した。牛は大きく吹っ飛び、塔の壁に激突した。その後床に崩れ落ちた。僅かに動いてはいるし、やる気は失せていないようだ。しかしもう起き上がれないようだった。苦しませたいわけではないと、私はかまいたちでとどめを刺した。


 牛の血が流れていくのをのんびりと眺めた。そして血が出なくなってきた頃、死体をアイテムボックスに入れた。そして斧が落ちていることに気付いた。これは売れるのだろうか。巨大で使い手を非常に選びそうだが。とりあえずアイテムボックスに入れながら、記念に家に飾ろうかと思った。


 その時後ろから強い魔力を感じた。なんだと思い振り向くと、そこには宝箱があった。この部屋の扉のように豪奢だ。そしてでかい。私はテンションが上がっていくのを感じながら、浮かれてそれに近付いた。早速開けようと触れ、罠がないかと思い調べた。どこもおかしくないように見える。鍵もついてないようだ。念のため魔力で体を強化して、いよいよ宝箱を開けた。蓋はずしりと重い。しかし問題はない。そのまま開けていくと、中にあったのは剣であった。私にはただの剣に見えた。しかし内包している魔力は非常に強い。これも記念品にすることにして、アイテムボックスに入れた。



 ダンジョンはちょっとした刺激であった。私がダンジョンを攻略したことに周りは大騒ぎをしていたが、あまり興味がなかった私はそのまま帰宅した。そして再び日常に戻った。今日もテラスでのんびりとしている。次は何をしようかと思う。しかし思いつかなかったし、考えるのが面倒になったのでやめた。ぼおっとしていると音が聞こえる。馬車の音だ。また令嬢が来たのだろう。そして子供たちの声と、子供をなだめる大人の声が聞こえた。孤児院の者たちが遊びにきたようだ。今日は賑やかになりそうだと、眠気をこらえながら思った。

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