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猫好きの転生魔女 ~数百年後の世界に転生したら、猫がいない~  作者: 佐藤真登


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猫への想いがあふれすぎてて気が付かない


『ニーナちゃんからお手紙でもらった質問に答えますね。いろいろな魔法について、自主的に聞く。意欲にあふれたいいことだと思います! ニーナちゃん、とっても偉いですね! 私も師匠としてしっかりしようと思います!』


 ニーナの年齢を知って不信を覚えたメイドさんのおうちに一泊した翌日。ニーナが十歳と知っても頼ってしまうのは、人間、追い詰められた時には視野が狭くなるんだなぁといういい実例だった。

 それはさておき、師匠からの通信教育は、ちゃんと失せもの探しの魔法口座になっていた。

 まずは弟子のやる気を褒めたたえる導入から、具体的な魔法の方法の教授に入る。師匠さんも少しずつ教え方がうまくなっていた。


『――という感じです。必要な道具もポーチに入れておきました。まあ、正直、なくしものを探すならぺスに任せるのが一番です。ぺスの鼻なら、たいていの物は見つけ出してくれますから! ペスは賢いんです。ちょっと、最近はペスに会えなくて私も寂しい……。あ、話がそれちゃったね。ではでは、今日はこの辺で。ニーナちゃんの親愛なる師匠ツェ――』


 知りたいことは知れたので、今回も結びの部分は読み切ることなくボワッと燃やす。


「よし。これで完璧、です」


 手紙を読むだけで魔法を習得したニーナはポーチをごそごそ漁る。そこから細い鎖に透明な角錐の鉱石がつながっている振り子を取り出した。


「お? マスター、それはなんだ。魔法具のようだが」

「ペンジュラム、とかいうものらしいです」


 探したいものを願って魔力を込めると、探したいものを指し示してくれるらしい。ダウジングの一種だ。

 ニーナはメイドさんに要求して王都の地図をもらい、ペンジュラムの振り子の先を垂らす。これで、振れ幅の大きいところに探し物がいるという寸法だ。

 王女探索というどうでもいい依頼が終わったら、これを使って猫をたくさん探そう。ニーナは固く決意した。むしろなぜ先に、この魔法のことを聞かなかったのか。過去の自分を大きく悔いたが、この旅の道程でリューに会ったり、ちゃんと猫に会えたんだからよしと思い直した。

 そんなニーナに対し、メイドさんは不安げな顔だ。


「あの……魔法って、お手紙を読んだだけで、わかるものなのでしょうか?」

「大丈夫だ。マスターは天才だからな」


 ニーナが十歳と知って信用を著しく落としたメイドさんに、十歳に吹っ飛ばされて従僕契約を結んだリューは自信満々に保証する。

 実際、ニーナは天才だ。

 ニーナ自身、自分の魔法の成功を疑っていなかった。昨日、渡されてビラにあった王女様の顔写真を思い浮かべ、むむむーっと念じてペンジュラムに魔力を込める。

 ニーナの魔力に反応して、ペンジュラムがゆらりと動いた。


「ん?」


 ペンジュラムの動きに、その場の三人が一様に首を傾げた。本来なら地図の上で揺れるはずのペンジュラムの角錐系の振り子が浮き上がって、メイドさんの家の庭の方向にその先を向けたのだ。

 メイドさんの庭には行儀のよいペスが待機しており、ペスから距離を取ってまんじりともしない様子の猫がいた。自分より数倍大きな体のペスがちょっと怖いらしいが、襲い掛かることはないとは了承している。そんな距離感だった。

 

「これは……」


 ニーナは、てこてこと歩いて庭に続く窓を開ける。

 ペンジュラムの先は、猫が動くのに合わせてふゆふゆ動いた。

 つまり、ペンジュラムは猫を指し示していた。


「ふむ。探し物の魔法で、マスターの持つ道具がその『ねこ』とやらを指し示したのか」

「もしや、魔女さま――」


 ここにいる三人の気持ちは、一緒だった。

 王女様を探したはずのニーナの魔法が、猫を示した。

 いまの会話を聞いて『王女様を探した魔法が自分を示した』という状況を把握した猫のテンションが高くなった。


「にゃ! にゃにゃにゃあ!」


 ペンジュラムに示された猫が、ぴょんぴょん飛び跳ねる。

 そんな状況で、いまの現象についてメイドさんは分析。


「魔女さまのその子への気持ちが昂り過ぎているではないでしょうか? だいぶ、ご執心のようですし」

「そうだぞ、マスター。マスターがやっと見つけた『ねこ』だから嬉しいのはわかるが、対価をもらった分はきちんと働かねばならんぞ」

「う。ごめん、なさい。失敗、したです」


 冷ややかなメイドさんの視線と、道理を説いてたしなめるリューの言葉にニーナも子供らしく反省。猫への想いが強すぎて魔法を失敗させてしまったのだろうと認めた。


「にゃーん……」


 青い目をした猫が、しょぼーんとした鳴き声を上げた。

 そんな猫に何もかもわかっているかのような様子のペスが近づいて、鼻先で優しくつんつんとして慰めていた。

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