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あの日、あの場所に残してきた約束を ずっと 信じてる

大好きな幼馴染みと離れ離れになってから、何かと気にかけてそばにいてくれる親友の優しさに気付かされた本当の気持ち…… でもそれは届くあてのない想い。

それでも信じていたい!

小さな約束が2人を繋いでいると信じて……

第2章


「あー疲れた!」


2限目の授業が終わり美咲は大きく伸びをして言った。


「最近 バイトに明け暮れてない? 勉強

大丈夫?」


この頃 バイトにかまけてあまり相手にして貰えない私は、ちょっと皮肉を込めて言った。


「何 心配してくれてるの? それとも遊んで欲しい?」


美咲には私の気持ち読まれてる……


私たちは大学3年の夏を迎えようとしていた。就活にはまだ時間があり、何となく宙ぶらりんな日々を過ごしていた。


「観たい映画があるんだけどな」


私はずっと観たかった 少女漫画の実写映画の話を切り出した。


「優衣菜のベスト2には入ってるよねあの漫画! 高2の頃、休み時間に読んで収拾つかないくらい泣いてたね……」


漫画を読んで泣いて

妄想にキュンキュンして 夢見て

そんな扱いにくい私に 懲りずに

美咲は付き合ってくれる。



2人で観た映画は予想以上にキュンキュンして、泣きっぱなしだった。


「あー 妄想を裏切らないカッコ良さ❣️

ずっと この余韻に浸っていたい……」


映画の感想を話しながらウキウキ気分で私は歩いていた。


「余韻に浸るのもいいけど、そろそろ現実見る気ない?」


急に美咲が厳しく言い放つので思わず立ち止まった。


「優衣菜 まだあの場所に時々行ってない?」


美咲の言いたいことはすぐに分かった。

私と奏多のことをいちばん近くで

ずっと 見てきたから……


「うん…… あそこから見る空 本当に綺麗

なんだ…… それに普段は感じないのにあの場所にいると、風の匂いも感じられて

季節が変わっていくのがよく分かるの」


そう言いながら 私は 少し遠い目をして

あの頃を思い出していた。


「空だけ? 優衣菜 まだ奏多くんのこと好きなんじゃない?」


まっすぐに私を見つめる美咲は、まるで心の中を読むかのように言葉を並べた。


「まだって…… 私は奏多の夢を応援してるだけ。 ずっと そう 思ってたから……」


唇を伝う言葉は嘘ではなかったけど

もう ずっとずっと 前から

本当は気付いていた。


泣いていた私に 飛行機のストラップ(宝物)をくれたあの時から 私は

奏多に恋をしていたこと……


でも また会える

その約束が2人を繋いでいるから


いつか 青空の下で もう一度

私は信じて ずっと あの場所で待ってる……


「片想い いつまで続けるの? 近くにいない人 見つめることもできない! 言葉も交わせない! 約束なんて何の保証もないんだよ!」


美咲は珍しく声を震わせながら 怒り泣きしていた。美咲の心配は痛い程分かった。


だから私は……


「大丈夫! いつか きっと 会えるから」


何の根拠もない言葉を返した。


「何それ? いつかっていつ?

ずっと会えなかったら? 心配だよ……

優衣菜がこのまま他の誰も何も見ようとしないで、ただ傷ついていくの見てるなんて……」


「大丈夫だって! 私だって見極める力くらいあるから! だから…… もう少しだけ見てて」


美咲の気持ちは充分分かっていたし、私の言葉にリアル感がないことも よく分かっていた。


それでも失くせないものを

あの場所に残してきたから……


「もう 何で 私が泣かなきゃいけないの!」


そう言いながら美咲は細い指で涙を拭っていた。 美咲がこんな風に感情を剥き出しにして泣いたのはこれが2度目になる。


1度目は卒業式の日、私と奏多が離れ離れになった時、何度も何度も 信じられないとまるで自分のことのように泣きじゃくっていた……


「美咲 有難う! ごめんね……」


私はそう言って美咲を抱きしめた。




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