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家に着くなりお父様はお母様に事の次第を伝えに行ってしまい、私はお部屋でティータイム。
疲れただろうからってレーラが気を使って両親から離してくれたのね。
しかしあの王子恐ろしく可愛いわね、あれが将来はゲームのようなイケメンになるのかと思うともったいな…いえ、まぁ、納得だわ。
ちょっと仲良くなってドレスとか着せたいわね。
いっそちょっとずつ女装に馴れさせて学園にも女の子として通っていただくっていうのはどうかしら?
ダメね、初等部のうちはいいかもしれないけど丁度ヒロインが出てくる頃の王子では女装は難し…ちょっと背の高いお姉様で通じないかしら。
まぁいいわ、なんにせよ先ずは王子と仲良くならなくては。
4歳児らしい振る舞いで王子を振り回してあげるわ…!
まだ友達もいない私の、初お友達兼幼馴染に王子はなるのだろうし。
私が私らしく、王子が王子らしくいられる関係になれるよう頑張るわ。
そしてあわよくばドレスを着せるのよ!
なんて考えながらカップの紅茶を見つめふふ、と笑っているとレーラが心配そうに見つめてきたので、誤魔化すようにお茶菓子のクッキーを頬張った。
それにしてもゲームのアティはあの王子のどこに惚れたのかしら。
設定には一目惚れって書いてあったけど、かっこいい!なんて女の子が一目惚れする感じではないわよね。
私はもうあの可愛さにきゅんきゅんしてるわけだけど、アティくらいの美少女だったら寧ろ男のくせに…!って対抗心燃やしたり嫉妬するくらいの美少女ぶりだもの。
それとも本当は王子の婚約者という立場にだけ執着してたのかしら。
わからないわ。
「ふぅ。」
さ、一息ついたことだしちょっと魔法を使ってみたいわよね。
レーラにお願いして教えてもらいましょ。
「レーラ、私魔法が使えるようになったことだしちょっとだけ扱いかたを教えて欲しいの。」
おねがーい!っと4歳児らしく駄々をこねて催促してみる。
ちょっとだけ!ちょっとだけでいいのよ!
「そうですねぇ…魔力を操るところから始めないと魔法らしい魔法は使えませんわ、お嬢様。魔法の先生が来るまで我慢してくださいね。」
そう言われてしまっては仕方ない。
残念だけど我慢するしかないわね。
魔力を操るか…この大気中のキラキラを操れればいいのよね、うーん…どうやって干渉するんだろう。
例えば私の中の魔力が指先から出ていくイメージとか?
じっと自分の指先を見つめてみる。
出てこい出てこい出てこい…。
すると淡い緑のキラキラが指先から滲み出てくる、もしやこれが私の魔力…。
だんだんと空気中のキラキラを侵食して行く緑のキラキラに風をイメージする。
途端に緑のキラキラが意思を持ったかのようにうねり、部屋に強い風が吹いた。
「お嬢様…!!?」
突然の風にレーラが驚きの声を上げ、唖然とする私を愕然と見ていた。
「今の風は、お嬢様が…?」
「ぇ、えぇ、そうみたい。」
恐る恐るといった体で問いかけてくるレーラは、怒るでもなく「これは…」と呟くなり急ぎ部屋を出ていってしまった。
また何かやらかしたようだ。
まさか上手くいくとは思ってもいなかったので、こればかりは私もびっくりである。