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「さ、お待ちかねの魔力測定だ。今年は有望なのが多くてな、私は将来が大変楽しみだよ。」
陛下の言葉に宮仕えの1人が、水晶を手に私の前に跪く。
私の頭程の大きさのそれは、見た目にはただの水晶玉だった。
「どうぞお嬢様、お手を。」
促されて両手を魔水晶に添える。
待つこと3秒程で、水晶から腕を通して私の中心胃の少し上あたりに何かが流れ込んでくる。
それがだんだんと広がって私を包むほどになると、今度は逆に私から水晶へ魔力らしきものが流れ始める。
私から魔力が流れるにつれて水晶が輝きを増し、目も開けていられないほどだった。
やがて光が収まると、陛下以下控えていた者達から感嘆の声が上がった。
そして私の目にも変化が。
視界がキラキラしてる。
もしかすると魔力が視覚化して見えているのかもしれない。
「これは凄い、アーグレン。何百年に1度の逸材かもしれんぞ。」
はて、アティの設定にそんなすごい魔力の持ち主なんてものはあっただろうか。
具体的な数字の結果は後ほど家に書状で届くらしいから、今すぐにはわからないけれどまぁいい。
なんにせよ、今日から私は魔法が使えるのだ。
明日にはお父様にお願いして魔法の先生を付けてもらおう。
ふふっ、楽しみ!
なんて考えてたら周りがザワザワしてることに気づいた。
そんなに大変な自体なのだろうか。
「誰か、カリステファスをここに!」
陛下の呼びかけに応じるように数人が謁見の間から退室していく。
もしや、カリステファスとは王子の名前では……。
まさか婚約が早まるのかしら?そうなのお父様?
と目線でお父様に訴えるも、放心していらっしゃって私を見てくれない。
その間に陛下の隣には王子らしき男の子が到着していた。
「お呼びでしょうか、父上。」
「うむ、お前の婚約をここで決める。」
きょとんとしている王子に視線で私を見るように促す陛下。
そして私へと向きを変えた王子はなんと…美少女!すごい美少女!!!
美少年っていうより美少女の方が合っていると思わせる美少女ぶりだ。
遠目に見てもわかるまつげの長さ、零れそうに大きな目は陛下と同じ澄んだ青空。
プラチナブルージュの髪は王子の動きに合わせてサラサラと揺れ、小さくて形のいい鼻に薄い唇はほんのり色付いている。
これを美少女と言わずになんと言うのか。
「カリステファス、アーグレン公爵家のアティリシア嬢だ。」
陛下に紹介されて、礼をとる。
お父様は、まだ動かない。
「カリステファス·アスタ·レアンドル·ド·アルストロメリアです、アティリシア嬢どうぞよろしく。」
「アティリシア·ルーナ·アーグレンにございます、殿下。こちらこそ、よろしくお願い致します。」
花が開くような笑顔に生気を抜かれそうだ。
私は本当にこんな美少女と婚約するのだろうか、死にそう。
「先ずは顔合わせまで、アティリシア譲また後日参るように。良いなアーグレン。」
「陛下、お言葉ですがアティリシアは4歳で…婚約はまだ早いかと。」
「カリステファスも4歳だぞアーグレン。」
陛下の言葉にハッと我に返るお父様。
大丈夫ですか?失言ですよ、お父様。
「大変失礼致しました。」
「うむ、では詳しくは後程。下がって良いぞ。」
「はっ、失礼致します。」
お父様に合わせて礼をして踵を返す。
凄く怖い顔をなさっているわ、お父様。
大丈夫、いずれはこうなると私知ってましたもの。