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お父様の元へ向かうお母様について行くと、殿下が気づいて微笑んでくれる。
お父様の陰に隠れて見えなかったけれど、殿下も試着をなさっていたみたい。
濃い色のお着物も似合いそうだと思ったけれど、殿下の着ている白の着物もとても素敵だわ。
なんというか、神秘的な美しさ…殿下の纏う凛とした空気も相俟って神々しさすら感じてしまう。
「やぁ、ルーナ。その装いも素敵だね、似合ってるよ。」
「まぁ、嬉しいですわ。お母様に見繕って頂きましたの。アスタも……あら?」
大変似合ってますわ、と言おうと思ったところで着物の柄に目が留まる。
裾と袖に流れるように描かれた藤の花。
「君の髪飾りに似ているな、と思ってね。」
はにかんだように笑ながら教えてくれる。
さっき見ていたのは、この着物だったのね。
なんだか嬉しいような、恥ずかしいような…擽ったい気持ちになって私も思わず笑んでしまう。
「正解ですわ、この髪飾りは藤の花を模しておりますのよ。」
よくお分かりになりましたわね、と続ければ花の綻ぶような笑みを返された。
ぁ、可愛すぎる。
「お揃いだね。では、これを頂こうかな。」
なんだか私に併せてくれたみたいでこそばゆい。
大人用の着物は私たちには少しばかり大きいので詰めてもらうことにした。
もちろん、糸を解けばいつまでも着られるようにね。
私は結局最初に見た紫の矢絣とお母様に見立てて貰ったもの両方買ってもらった。
普段着とお茶会用。
実は私、まだお茶会というものに参加したことがないのだけれど、私のお披露目のお茶会に母娘揃って着物を着るだなんてことになったら社交界で話のネタにされること間違いなしね。
悪目立ちにならなければいいけれど。
まぁでも、早い段階で私の倭国好きの噂が広まってくれるのはありがたい。
これは保険でしかないけれど、ヒロインが仮に転生者だった時のため。
私が転生者かもしれないと思って接触してきてくれればいいな、という単純な考えからきているもの。
もちろん、私が転生者であることを相手に知られるというのがメリットばかりではないことも分かってはいるけど、私としては穏便に済ませたいしできることなら話し合いで解決したい。
何せ相手はあのゲームのヒロインだもの、可愛いに決まってる。
私が死ぬのは嫌だけど、ヒロインには幸せになって欲しい。
中身が可愛くなかったら……?
そうね、その時に考えるわ。
ヒロインが転生者でなかった場合は全力で可愛がりに行くつもりなの。
ふふ、今から楽しみで仕方ないわ。




