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今日は待ちに待ったお父様の休日。
そう、着物を仕立てに行く日ですわ。
「楽しみですわね、殿下。」
「なんで僕まで?」
「ふふ、殿下にも私の好きなものを知って頂こうと思いまして。」
昨日お城に行った際に半ば強引に約束を取り付け、殿下も連れてまいりましたのよ。
私の家族に囲まれてのお出掛けで申し訳ないですけれど、殿下と初めての外出ですし私も楽しみにしていましたの。
流石にデビュタント前の私たちは二人きりでデートなんて出来ませんし、親同伴で漸くお出掛けも可能になるのですわ。
そしてこんな滅多にない機会を逃す手はありませんわよね!
もちろん家族水入らず、も魅力的でしたけどちょっと羨ましそうな殿下の表情に思わず誘ってしまったのですもの。
勝手に殿下を誘ってしまったけれど、お父様もお母様も快く殿下の同行を許してくれたわ。
きっとなかなか外に出ることの出来ない殿下のことを気遣って下さったのよ。
流石、私のお父様とお母様よね。
「ネモ、そろそろかしら?」
「はい、もう着きます。」
外の様子を伺っていたネモに声を掛ける。
そろそろ着く頃かと思ったのよ。
今、この馬車に乗っているのは私と殿下、ネモと殿下の護衛…確か、ロイと言ったかしら。
私たちの前の馬車にお父様とお母様、ジュリアンとレーラ、それからダレンが乗っている。
大人数だから馬車も2台になってしまったのよね。
「ルーナ、今日は弟君も一緒なんだよね?」
「えぇ、そういえば初顔合わせですわね。ジュリアンはまだ礼儀作法を学び始めたばかりですの、何かあっても大目に見てやってくださいましね。」
ジュリアンは私の弟なばかりに攻略対象になってしまった憐れなショタ。
攻略対象の中で唯一年下、見た目は完全にショタ。
ゲームのジュリアンは不憫可愛い天使だったわ。
私の弟は本当に天使だけどね。
「僕、そんなに心が狭そうに見える?」
「ふふ、まさか、殿下は優しすぎるくらいですもの。」
「それは流石に言い過ぎかな。」
そんなことはないと思うわ。
私のワガママにも笑って付き合ってくれるのは殿下くらいでしてよ。
アロイヴなんか、私が殿下に何か提案する度にすごい目で見てくるんだから。
「お嬢様、着きましたよ。」
「えぇ。」
ネモとロイが扉を開けて先に降りると、殿下が私をエスコートしてくれる。
これからたくさんこんな場面があるのだろうけど、王子様が馬車を降りる時に手を貸してくれるなんて…ちょっとときめくわね。
乙女の憧れではない?
ハニカミながら殿下の手をとって馬車から降りる。
と、ジュリアンが駆けてきて私の空いてる方の手をとった。
「ねーたま、いっしょにいきましょ?」
あらやだ、天使と天使に挟まれてるわ。
顔にやけてたりしないかしら、隠したいけど両手が塞がっている。
きゅ、と口を引き結んで堪える。
「ねーたま?」
「えぇ、もちろんよジュリアン。姉様と一緒に行きましょうね。」
小首を傾げて覗き込んでくる天使に、なんとか応えて殿下を見るとわたしと繋いでいない方の手で口元を押さえてプルプルしている。
「アスタ殿下?」
「ん、大丈夫。」
お顔が赤いですわよ。
今、息止めてませんでした?
もしかして笑われてしまったのかしら、私そんなに酷い顔をしていたの?
「ジュリアン、殿下にご挨拶できるわね?」
「はい、ねーたま。ジュリアン·プリムラ·アーグレンともうしまつ、よろしくおねがいしましゅ。」
噛んじゃったのね…ジュリアンまでプルプルしてるわ。
ジュリアンはさ行が苦手なのよ。
プルプルが収まった殿下が微笑ましそうにジュリアンを見る。
「カリステファスだよ、ステファと呼んでね。」
「………しゅてふぁでんか。」
「「……………。」」
3人でプルプルする羽目になってしまった。
可愛いけど、とても言いにくそうだわ。




