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悪役令嬢は可愛がりたい  作者: 朝霧
専属執事と外出許可
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結局、ネモの口からハンターになりたい理由は聞けなかったけれど、口から出任せで言った訳では無いことは分かった。


因みに私がハンターになると言ったのも口から出任せではない。



私がハンターになるのは、知識をつけるためであり、経験を積むためであり、身も心も強くなるためである。


この世界で生き、まして王妃を目指すのであれば命のやり取りを経験するべきだと考えた。

命を狙われやすい立場になる。


身を守る手段を学び、守れるだけの強さと導くための力が欲しい。



突然突きつけられる死では、きっと私は受け入れられず立ち直れない。

心が壊れてしまうかもしれない、特に身近な人のそれであればあるほど。

だから自分から飛び込む。


将来何があってもいいように経験を積むのよ。



そんなことはさて置き。



「お父様!お父様がハンターだったって本当ですの!!?」



帰宅するなりお父様の書斎に飛び込んだ。

淑女のすることじゃない?

おほほ、わかってますわよ。


でもこの驚きをお父様に伝えるためにはこのくらいしませんと。



「ん?どこでそれを聞いたのかな、アティ?」


「あらあら、お行儀が悪いわよ。落ち着いて、こちらにお座りなさいな。」



書斎に飛び込むと、お父様だけでなくお母様もいらっしゃって応接用のソファーに腰掛け、優雅に紅茶を飲んでいた。


んん、窘められてしまったわ。



「アティリシアただいま戻りましたわ、お父様、お母様。」



名誉挽回のためお父様とお母様にカーテシーを披露する。



「あぁ、おかえりアティ。」


「おかえりなさい、今日は楽しかったかしら?」


「えぇ、お母様。今日はとても楽しかったですわ。お土産もございますのよ。」



後に控えていたネモに目配せをすると、お土産のお箸が入った包を二人に渡してくれる。


気に入ってくださるかしら。


お母様の隣に座って話をする。



「倭の国の物を取り扱っているお店に行って参りましたの。それはお箸というもので、食事の際に使うのですわ。」


「まぁ、可愛らしい。素敵なお土産をありがとう、アティ。」


「アティは随分倭の国の文化が気に入ったようだね。」



お母様は随分気に入ってくださったみたい。

頻りに眺めては嬉しそうに笑っていらっしゃる。


そうだわ、お父様にお着物のおねだりをしなくては。



「えぇ、とても。お父様、こちらのお箸を置いていたお店に着物という倭の国の伝統装束もございましたの、私ぜひあれを着てみたいですわ!」



実は人生初のお父様へのおねだり。


ある程度のお小遣いは貰ってるのでいままで必要がなかったから使ったことがなかっただけなのだが、ここで断られると今後の私の人生設計に大いに関わるので意地でも頷かせる所存ですわ。



「まぁ!私も"着物"というものは気になっておりましたの。あなた、次の休日に皆でお出かけしましょう?ふふ、母がアティに似合うものを見繕ってあげましょうね。」


「お母様とお出掛け、久しぶりで嬉しいですわ。楽しみです!」



お母様の援護射撃で予定が決まってしまった。

なんにせよ、わたしのおねだりはおねだりらしい役割を果たすことなく叶うことになった。


まさに願ったり叶ったり。



「まぁ、いいだろう。ジュリアンにとっては初めての外出になるからね、しっかりと準備を頼むよ。」


「もちろんですわ。レーラ、お願いね。」


「承りました。」



さて、話が随分とそれてしまったけどハンター時代のお父様のお話を聞き出すためにここに来たのよ。



「それでお父様、今日は私ギルドにも行って参りましたのよ。そこでお会いしたグラン·ジル·ジェロード様からお父様のお話も少しお聞きいたしましたの。私としてはお父様のお口から詳しくお聞きしたいですわ。」


「あぁ、グランから聞いたのか……アイツはまだギルドに出入りしてるんだな。」



やれやれ、と言った具合に首を振るもお父様の表情は楽しげだ。


昔を懐かしんでいるのかもしれない。



「娘の期待に添えないのは残念だが、あまり自慢できる話はないぞ。」


「陛下と旅をなさったのでしょう?ドラゴンを倒した話も聞きましてよ。」



そこまで聞いているのなら話すこともないと、話を打ち切ろうとするお父様に食い下がる。



「ふふ、お父様はねこう見えて恥ずかしがり屋なのよ。あまり自分の話をするのは得意でないから今度ゆっくり母がお話してあげましょうね。」


「お父様が……?」



恥ずかしがり屋?シャイなんですの?

思わずそのお顔をじっと見つめると、ふいと逸らされた。

心做しかお耳が赤いですわ、お父様。



「………では、お母様からお聞きしますわ。」


「お父様は剣も魔法もとってもお強いのよ。お父様の武勇伝、楽しみにしていてね。」



かくして私は、後日お母様の口から惚気と共にお父様の武勇伝を聞くこととなった。




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