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悪役令嬢は可愛がりたい  作者: 朝霧
専属執事と外出許可
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「この買い物が終わったら、次は貴方のことを教えてちょうだいね。」



結い上げた髪に丁寧に簪を差し込むネモにこの後の行き先を考えておくように、と言えば困った様に眉尻を下げた。

それを尻目にずずっと御抹茶を飲み干す。



「お嬢様。」


「やぁね、マナーがなってないんじゃなくてこれも作法よ。」



仮にも公爵令嬢が意味もなくこんな初歩的なミスする訳ないじゃない。


私より残してるネモの方が失礼だわ。



「飲めないなら私にお寄越しなさい。」


「な……!いけません!!」



いけなくないわよ、回し飲みは普通なんだから。

まぁ、この国では考えられないでしょうけどね。



「あぁぁぁ……!」



半ば強引に奪って口をつけると、ネモは両手で顔を覆って伏せた。


なんて大袈裟な。


そろそろ店員が戻ってくるかもしれないのでさっさと飲み干すとネモの方に茶碗を返す。

正面から恨めしそうな視線を感じたけれど、それ、主人に向けていいものじゃないわよ。


少しは打ち解けられたのかしら、なんてね。



「お待たせしました!こちらが黒備前焼の茶碗と茶筅、茶匙、棗です。他のものは必要でしたらお取り寄せになりますが、如何しますか?」


「いえ、取り敢えずはそれだけで十分よ。」


「ではお包みして参りますね。ぁ、お茶いかがでしたか?」


「結構なお点前で。」



にっこりと笑って答えれば、少女はそれは嬉しそうに顔を綻ばせて踵を返した。


このお茶は彼女が入れたのだろうか。



今のところ他の店員も見ていないが、流石に1人でこの大きな店を切り盛りしているとは思えない。


会計をネモに任せて席を立つ。



「入口までお送りしますね。」



店先で紙袋を受け取る。

そういえば聞き忘れていたわね。



「貴女、お名前は?」


「千歳といいます!」



本当に日本人みたいな名前。

きっと千歳は倭の国出身なのね。

随分この国の言葉がお上手だけど、いつから居るのかしら。


それもまた、ここに来ればいつか聞けるかもしれないわ。



「そう、また来るわ。」


「お待ちしてます。ありがとうございました!」



元気な声に見送られて店を後にすると、ネモを振り返った。



「さ、次はどこに行くか決まったかしら?」



悪戯っぽく笑いかけると、本当に困らせてしまったみたい。

趣味とか無いのかしら、好きなものとか。


なかなか決らない行き先に、ひとつ提案してみる。



「貴方のなりたがっていたハンターの仕事を覗きに行ってみるのはどうかしら。」



ギルド登録は10歳からなので、私たちにはまだできない。

けれど、ギルドの酒場を覗きに行くくらいなら問題もなさそうじゃない?


と言えば焦ったように引き止められた。



「貴女が行っていいところではありません。」


「貴方のしたいことに、私も興味があるのよ。」


「危険です。」


「そうかしら。」



流石にご令嬢は少ないと思うけど、お忍びでハンター業に手を出す貴族子息は結構いるわよ。


それに、見るだけ。

問題ないわ。


なにより、私に危険だというのなら



「何故あの時、貴方はハンターになりたいと言ったの?」



危険なのは貴方も一緒でしょう。



「それは……。」



言い淀むネモの手を引いてギルドへ向かう。

主人が従者の手を引いて歩くなど有り得ない事だが、この際気にしない。


なんせお忍び、今の私達はその辺の子供と一緒だもの。

傍目にはね。



「やっぱりダメです。」



ギルドの目の前まで来て、再びネモに止められた。

往生際が悪いわ、ここまで来たなら腹を括りなさいよ。



「我儘を言わないでください、危険ですから戻りましょう。」


「では理由を話してくれるわね?」


「………………。」



押し問答である。

別に私だって無理に聞こうと思ってるわけでも、押し付けたいわけでもない。


ただ、未練があるなら少しでも思うようにさせてあげたいし、それを可能にするのは私の我儘だけなの。

きっとネモは自分からしたいことを言えない。

それは、私のところに来てしまったせい。

彼の可能性を奪ったも同然なのよ。



「ね、見るだけだから……いいでしょう?」



たぶん、私の考えてることもネモは分かっているのね。

だからあまり強く私を止められないのでしょう?



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