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「本日からお嬢様の護衛兼専属執事となります、フィライズ家次男ネモでございます。」
そうレーラに紹介された少年は如何にもやんちゃそうで、傍目から見ても機嫌が悪かった。
フィライズ家というのは代々我が家に仕えている優秀な使用人を排出している家柄で、様子からしてこの少年はレーラの息子だろうと想定される。
「ほら、お嬢様にご挨拶をなさい。」
「嫌だ。」
まさか、最初の挨拶を拒否られるとは思ってもいなかったわ。
すぐさまレーラから拳骨を貰っていたネモだったが、負けじと文句をぶつけている。
この部屋に来た時も半ば引き摺られていたことだし、かなり嫌々連れてこられたのだろうということは想定されていた。
「俺は!ハンターになるんだ!!!こんなお嬢様のお守りなんかやってらんねぇ!!!」
この調子ではお守りをするのはこちらになりそうである。
そもそも、主の前で親子喧嘩をしている事自体問題なのだが、我が家によく仕えてくれているフィライズ家だからこその許容だった。
何より相手が私だからまだ許されている。
どうやら私になかなか専属執事が付かなかったのは彼が原因であるらしかった。
レーラの言うことには、学園でも護れるように私と同じ歳のネモが選ばれたらしい。
執事としての教育は既に終わっているものの、この有様なのでなかなか引き合わせられなかったのだとか。
「でもレーラ、私彼では少し不安だわ…。」
「申し訳ありません、お嬢様。これでも腕は確かですので…。」
「そう…。」
目の前で交わされる会話に、ネモの不機嫌さが増す。
でも、先に私が不安になるようなこと言ったのはネモなのだから甘んじて受けとって欲しいわよね。
これから私の身の回りの事を全て任せ、常に一緒に行動することになるのだから、少しでも信頼出来る相手がいいと思うのは当然だわ。
「今日から、ということはレーラはお母様のところに戻るのね。」
「はい、そのようになります。」
「今までありがとう、レーラ。」
いつも側にいてくれたレーラが離れてしまうのは少し淋しいけれど、お屋敷には居るのだからいつでも会えるものね。
きっと、ネモとも良い関係が築けるように私頑張るわ。
私に優しく微笑んで部屋から出ていくレーラを見送り、改めてネモと向き合う。
「アティリシア·ルーナ·アーグレンよ。これからしっかりと私に仕えてね、ネモ。」
「………ふん。」
先行きが不安だわ。




