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私がなんのアクションもなく魔法を展開させたのでは流石になんだかわからないから、一応杖を使って幻影魔法をかける。
謁見の間の中央に天井を覆うほどに枝を伸ばした千年桜。
降り注ぐ花びらの下で舞う白拍子。
そして大トリは桜から次々に現れる百鬼夜行!
うふふ、兵士さんが腰抜かしてるわ。
ごめんなさいね、でもこんな機会じゃないと百鬼夜行なんて大掛かりでおどろおどろしいもの幻影といえども出せないじゃない?
日本が誇る妖怪の大行列は最後の合図で一気に桜の花びらに変わって消えていく。
ちょっと次の機会のために幻影に音楽や音をつける魔法がないか探してみましょう。
無音じゃちょっとつまらないわ。
消えゆく桜の中で陛下に一礼すると、杖をしまう。
陛下が立ち上がって拍手を送ってくれると、周りからも次々と拍手が送られる。
「素晴らしい才能だな、アーグレンの。先の幻影は異国のもののようだったが?」
「勿体なきお言葉。はい、倭の国を参考にしております。」
「ほぉ、珍しい物が見れた。我々だけで見るのには少々勿体なかったな。」
見事見事、と満足気に頷く陛下に、「できればこれっきりにして頂きたいですわ」という言葉は飲み込んでおほほ…と愛想笑いで返す。
「さて、本題に入る前に部屋を移ろう。場所は第一応接室で良いな。では、行こうか。」
陛下に続いてお父様と共に応接室へと向かう。
応接室には王子が先に待っていた。
おぅ、この前は少し遠かったけど近くで見るとホントに美少女…お肌すべすべ…ほっぺもちもちしてそう……。
これから私はこの子と婚約するのね…誰より近くでこの美少女を堪能できると。
なんて、役得!
なんて考えてたら席に着く前から部屋から追い出された。
これから色々と取り決めをするのに退屈だろうから二人で庭園にでも行って来なさい、という陛下のお言葉で王子と二人王宮の庭園を歩くことに。
王子の案内で花を見て回ってるのだけど、花より王子に目がいってしまって全然堪能できやしない。
見てこの花と美少女っていう素晴らしい構図。
写真に収めたい!
思わず溜息が出ちゃう美しさだわ。
「はぁ……」
「おや、退屈ですか?」
ぇ、まさかホントに溜息が…?
ちょっと、しっかりしなさい私。
「ぃ、いえ、ちょっと庭園の美しさに浸っていただけですわ。」
我ながら痛い返しになってしまったわ。
あぁほら、王子もきょとんとして…きょとんとしてる!かわいい…!
「ふふ、ここの庭園には精霊が居るんです。」
人差し指を口元に添えて「内緒ですよ」と微笑む姿はまさに天使。
精霊か…精霊?もしや例の花の精?
言われて意識して庭園を見ると、魔力が吸い寄せられるように集まっているところがあった。
私の視線の先を追った王子が小首を傾げている。
そうか、見えないから精霊が現れてくれないと何処にいるのかわからないのね。
「きっとその精霊さんはあちらに隠れていますわ殿下、行ってみましょう。」
戸惑っている王子の手をとって先を歩いて、一輪の花の前までくると二人揃ってしゃがみこんだ。
どうしたら出てくるのかしら。
そこに居るのはわかっているのよ!って悪役令嬢よろしく脅してみる?いやだわ、これじゃただのいじめっ子ね。
困った、と花を見つめ王子にお伺いを立てようと視線を向けると思いっきり目が合った。
なんというタイミング、美少女が至近距離!
顔、赤くなってないかしら…。




